もう一度、やり直せるなら

青サバ

1章 変わる日常

1-1 全ての始まり

** あの日の告白が、俺たちの運命を大きく狂わせるなんて——

 この時の俺は、まだ何も知らなかった。**


「早川さん。…俺と、付き合ってください」


 放課後の上野高校2年4組の教室。静まり返った空間に浅村駿の震える声だけが落ちていた。


 告白された早川果奈は一瞬驚いたように目を見開き、茶髪のポニーテールを揺らして俯き黙り込むが、だがその手は、机の端をぎゅっと掴んで震えている。


 秒針の針の音がやけに大きい。心臓は痛いほどに脈打っていた。

 ——俺は緊張すると余計なことまで考えるタイプだ。でも、この瞬間だけは逃げたら一生後悔する。


「・・・・入学式の日、道に迷っていたところを早川さんが案内してくれて、あの日から、ずっと早川さんのことを意識していて…気付いたら、好きになってました」

 

 息が詰まるような沈黙が落ちる。

 

「・・・・付き合っても、良いよ」


 早川さんの小さな声が夕方の教室にそっと落ちた。

 顔を上げた彼女の頬は赤く染まり、どこか恥ずかしそうで——でも、その瞳はまっすぐだった。


「実は…私も浅村君のこと、前から気になってたんだよね」

「本当に!?ありがとう!よろしくお願いします!」

「私こそ、よろしくね、駿」


 胸の奥がじんわり熱くなるが、でも、世界が少し明るくなった気がする。


 こうして、早川さんとの恋が始まった。


——だが、この瞬間は知らない。


“この恋が、幸せの始まりでもあり、後悔の始まりでもある”ことを。


 夕陽が差し込む教室で、静かに、物語が動き出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る