Limited Exceptional, Unrequited Hope.
Limited Exceptional, Unrequited Hope. Ⅰ
月が照らす寒空の下、目の前で煌々と紅く揺らめく炎をただ佇んで眺めていた。
火の手はあっという間に廊下を走り抜け、部屋という部屋の窓からは炎が噴き出している。館全体が火に覆い隠されるのも時間の問題だろう。
あちこちでバチバチと炎が爆ぜ、時々ガラスの割れる音や建物が崩れる音も混じる。
装飾を凝らしたステンドグラス。色が剥げるたびに塗り直された真っ白な壁。オレンジやピンクの花々で彩られていたベランダ。とんがり頭の屋根は濃い藍色で覆われて、その頂上には凛々しい金の鷹が飾られていた。
そんな壮麗だった館も、今はその大半をたった一つの赤色で染め上げている。
膨大な知識を詰め込んだ本の数々。高価な額縁で飾られた背丈よりも大きな絵画。着慣れた服の押し込められたタンス。温かく柔らかなベッド。
日々の生活を共にしてきた道具や部屋たちも、黒や灰の塊へとあっという間に変性し、見る影もなくなるのだろう。
裸足で駆け出してきた足が痛む。
燃え盛る炎の熱が地面を伝わり、足の裏をジリジリと焦がす。
それでも、動くことなくただただ立ち尽くし、静かに崩れゆく館をぼんやりと眺めていた。
自分の居場所が、積み重ねた時間や思い出が形を失っていく様をただ静かに眺めていた。
ふいに、一際大きな音が響き渡り、館が大きく傾く。その自身の重みに耐えかねて、屋根が大きく沈み込む。そこらじゅうの壁に大きな亀裂が走り、割れた窓からは押し出されるように炎が吹き出す。
崩れる館の熱風が火の粉をまとって目の前に迫った。
乾いた空気と焦げた匂いと身を焼くほどの熱に覆われて……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます