猫耳少年侍が無敵すぎて困る

モンブラン博士

第1話 VS100体以上のゴブリン

全身に棘を生やした筋肉質のゴブリンが棍棒を手に人々を襲っていた。

緑色の皮膚に獰猛な黄色い瞳、鋭い牙の並んだ口からは緑の唾をまき散らしている。

本能のままに暴れ回る化け物を退治しようと警官隊が派遣されたがゴブリンの頑丈な皮膚には銃弾さえも通らない。

頼みの警官たちも棍棒で殴り殺され女性の悲鳴が木霊した。


「お主ら。罪のない人々を襲うのは止めるでござるよ」


地獄を再現したかのような惨状にひとつの声がした。

目の前に現れたひとりの少年にゴブリンたちは小首を傾げた。


長い黒髪をポニーテールにして、小柄で華奢な体躯に黒い袴。足は足袋と草鞋。

腰には日本刃を携帯しており、黒い鞘に納められている。

頭頂部に生えた白い猫耳がピクピクと動き、大きな瞳がゴブリンたちを見据えている。

腰から生えた白い尻尾は風にゆらゆらと揺れていた。猫耳と尾を持つ美少女に近い容貌の少年を前に涎を垂らしたゴブリンたちは一斉に襲いかかる。


「拙者は川村猫衛門(かわむらねこえもん)。お主らを斬る者の名でござる」


嘆息しながら一応の名乗りを上げた刹那、ゴブリンたちの首が切断された。

瞬きをする間にゴブリンたちが全滅していたのである。

そこから導き出される答えはひとつ。

川村猫衛門は警官隊でさえ手も足もでなかったゴブリンを一瞬で仕留めたのだ。

けれどゴブリンはわらわらと瓦礫や建物から出てくる。その数は百を超えていた。

川村はゆっくりと抜刀した。

刃は太陽に照らされ白銀に輝いている。

川村はその切っ先を敵に向けて睨む。


「お主らがその気ならば……拙者も容赦せぬ」


眉間に軽く皺を寄せたかと思うと、次の瞬間には川村の姿は消え、ゴブリンたちの首が宙を舞い、胴が転がり、四肢が散らばっていた。

チャキンと刃を収めると同時にゴブリンたちは塵となって消え、被害にあった人たちは蘇生した。

人々が抱き合い喜んでいる光景を見て頬を緩めた川村はどこかへと去ってしまった。


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