TS義体化した底辺配信者はバズりたい ~可憐で最強な少女になったので、ダンジョン配信でバズりまくります~
熟々アオイ
1章 東京編
TS転生(諸説アリ)
『それじゃ、今日の配信はここまで。おつハル~……』
2022年10月20日。俺こと
目の前には巨大な黒色の肌を持つオークの死体があり、全身には無数の切り傷が付いている。
「今日の同接は三人、か。来年には30だし、もう潮時だな。ただのボスゴブリンを相手しただけでこんなに疲れる位だし。地元に帰って、大人しく家の農作業を手伝うか」
塵になって消えていく死体など見向きもせず、ダンジョンのボス部屋の天井を見ながらそう呟く。
――ダンジョンとは、魔物が沢山生息する洞窟で、50年前から世界各地の地下に出現するようになった空間のことを指す。
ダンジョンの魔物が人にもたらした物は多く、天然資源や未知の素材はもちろん、
それらを使って人類は文明力を高めると同時に、特殊な儀式を経て身体能力をグンと高めた『冒険者』を使い、ダンジョンを効率よく
冒険者は今や人気の職業だ。湧き出すダンジョンの数が年々増加しているように、「AIに食われない職業」と言われる冒険者を心ざす人も増えまくっていた。
しかし冒険者が人気なのはそれだけが理由じゃなく、ダンジョン配信者になりたいという理由も、最近出始めたのだ。
7年前に初めてのダンジョン配信者が登場すると、その数は徐々に増加。インフルエンサーになる事を夢見た数々の冒険者が、過酷ながらエンタメ性に溢れたダンジョン配信を日々行っている。
かく言う俺も、その流れに乗って5年前に配信を開始。大学を卒業してすぐ、定職に就かずダンジョン配信に打ち込んでいたが……まるで駄目だった。
5年間ほぼ無休で配信を続けてなお登録者は100人、配信の平均視聴者数は1~3人という始末だ。
それもそのはず、俺の配信にはとにかく華がない。万年D級のモブ顔冒険者が、雑魚モンスター相手に繰り広げる地味で泥臭い戦いなんて、誰も見たくないはずだ。
でも俺には、配信を盛り上げる為の武器が一つもない。派手な魔法や便利な魔道具、それに特殊なスキルだって俺は持っていない。
「帰ったら、活動休止する事をファンに伝えよう。引退って言わなきゃ、少ないながらも居る視聴者達と希望のある別れが出来るし……」
俺はボロボロになった錆びた短剣を鞘に仕舞い、電源の切れたドローンをジッと見つめたあと――
背中を壁に付けたまま右に倒れ、咳と共に口から血を吐き出す。
「……ああ、忘れてた。もう俺、どこにも帰れないんだっけ」
そんな俺の胸と腹には大きい穴が一つずつ開いており、穴からはじんわりと血が流れていた。
「じゃあ、せめて、感謝を……」
最後の力を振り絞って懐からスマホを取り出し、俺は血まみれの手で『みんなありがとう』の八文字を打ち、SNSに投稿する。
そしてついに力尽きた俺は、走馬灯を見ながらこう呟く。
「……みんなみたいに、みんなのために、一度くらいバズりたかったな――」
こうして俺の人生は、妙に強かったボスゴブリンとの相討ちで終了……したはずだった。
――しかし俺の物語は、予想外の形で再び動き出す事となる。
◇ ◇ ◇
「んん……」
ゆっくりと目を開け、布団をで体を起こして大きく伸びをする俺。そして少しの間ボーッとした後、ベッドを降りようとするも――
「あ、あれ?」
うなじに引っ付いた何かに引っ張られ、動きを阻まれてしまう。試しにうなじに手を回してみると、太いコードの様な物がうなじに繋がっている事に気づく。
(な、なんだこれ。というか俺、死んだはずだよな。つーかここどこ? 霊安室にしてはやけに機械が多い気が……)
正気を取り戻した俺は、ここでようやく辺りを見渡す。部屋は薄暗いものの、部屋の各所に置かれた五つのモニターの光によって床や壁が見える様になっていた。
床には大量の配線がグチャグチャに散乱しており、その散乱具合といったら、目を凝らして見える範囲には足の踏み場が見つからない程だった。
そして、五つあるモニターの中には俺に向けて光を放っている物もあった。引き続き床の配線を観察していた俺はふと、視界の端に光に照らされた肌色の丸い膨らみを捉える。
――付いていた。俺の胸に、大きくて美しい形をした二つの乳が。
「……は?」
試しに触ってみる。温度と感触、そして『触っている』という感覚がちゃんと返って来るのを見るに、これは間違い無く本物だ。
そして次に、布団の下に手を潜らせて股間を触る。案の定、こちらには何も付いていない。
次に声。あーあーと喉を鳴らして出てきた声は、僅かに低い透き通るような女声だった。これらの情報が意味すること、それはすなわち――
――俺が、女になったという事だ。
「う、嘘だろ? おいおい……!!」
羨ましいと思ったか? だが実際こう言う状況に置かれたら、興奮したとか役得だとか、そんな事を思う余裕も無くなるんだ。
あまりの情報量にもう、脳はパンク寸前だ。だがそれも無理もない、そうなって当たり前だ。目が覚めるたら知らない場所にいて、うなじから謎のコードが伸びていて動けない上、性別も変わっているのだから。
異世界転生かとも思ったが、部屋にあるあのコードやモニター、配線の数々がソレを否定する。ならばこの状況をどう説明する? 疑問が疑問を呼び、脳の血管がはち切れそうになった所で……
部屋の左側から、ドアが開く音と共にガッと光が差し込んで来る。眩しさに目を細める間もなく、勢い良く部屋に入ってきて俺の胸に飛び込んできたのは――
白衣を身に纏った、白髪碧眼のポニーテール少女だった。
「やっと……やっと起きたんだね! 会いたかったよハル!」
――間違い無い。コイツが、俺をTSさせた犯人だ。
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