ラブコメ(?)ショートショート集

鈴菜清白雨

背骨に降り積もる雪

 公園の寂れた花壇にある頼りない柵の横木にもひとしく雪が積もっていた。こんなにたくさんの雪が積もるのは十年ぶりかもしれない。横木に乗った雪を指先で払い、雪のあった場所を触ると水を含んでいるのがわかった。力を入れると横木は折れそうだった。でも雪が積もるくらいでは折れていない。雪は自重はあるが、降り積もるときは軽く優しいイメージがある。これはきっとイメージ通りそうなのだろう。

 ふと雪を触った右手が温かいものに包まれた。

「ちょっとしか触ってないのに、もうこんなに冷たい。先輩って雪とか触ってみたくなるような性格でしたか?」

 後輩は右手をコートのポケットに入れたまま、反対の手で僕の手を奪って掲げながら言った。

「雪の優しさが知りたかった。今にも折れそうな柵に積もっていたから、どれほど軽いのかって」

「軽いのって優しいと同じ?」

 後輩は雪に足を取られながら僕の腕にぶら下がるように抱きついてきた。

「お前の体重は軽いよ、とでも言って欲しい?」

「ふふ、性格は重いかもしれませんけどね」

「でもお前は優しいよ。そう……ゆっくりだからね。たぶん重くても、均等に、ゆっくりと降りていけばびっくりしない」

 そう言うと後輩はかがみ込み、ひとつかみの雪を手に持った。背伸びをし、僕に後ろを向けというジェスチャーをするので、嫌な未来が待っていることがわかった。

「ゆっくり、ゆっくり入れるので、許してください」

 後輩の指が後襟にかかり、手の熱で若干溶けかけた不愉快な雪が、はらりはらりと侵入してきて、背骨に針金を入れたような刺激が走った。

「優しくない……」

「先輩は物事を簡単に理解しようとしすぎ。もっと複雑なんだから。とくに私の心は」

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