四章 集う者たち

 拾われた真の理由を問うチェスターたちと、そんなもの無いコーディア。


まるで何か隠しているのが前提という空気に、コーディアは困惑を隠せない。


(いやいや、コレは何かに期待しておる顔じゃ。

好きだから拾ったと言ったところで納得してくれんじゃろうな。

えぇ……どうしよ…………)


愛し子たちの眼差しに追い詰められるコーディア。


「あぁ……それはのぉ……えっとぉ……」


目を泳がせながらそれっぽい答えを考えるコーディアの視界に、窓際で吊るしたペンデュラムが入る。


ゆらりとひと回りしたそれを見て、コーディアは嬉々として話題を逸らした。


「おっとぉ!客のようじゃ!」

「……来客の予定なんてありましたっけ?」

「いや、予定は無かった。じゃが、10分後に誰かが来るのをコイツが教えてくれるんじゃよ」


指差されたペンデュラムの下にはコーディアの隠れ家周辺の地図がある。


その地域に人が足を踏み入れると、ペンデュラムが反応して揺れる仕組みになっていた。


「ははあ、ダウジングにそんな使い方があるとは」

「占いも所詮はモノじゃよ、使い方はいくらでもある。さて、いったい何者かのぉ」


 食器を片付けて、待ち伏せるように扉の前に並び立つ3人。


コーディアとチェスターになんとなく合わせて並んだロウジィは、途中で何故並んでいるのか疑問を抱いた。


「あの、どうしてロウジィたちは玄関前で待ち伏せてるんですか?」

「獲って食うためじゃよ」

「とっ……!?」


ギョッとしたロウジィの肩にチェスターが手を置いて落ち着かせる。


その様子をコーディアはケラケラと笑って眺めた。


「これからの来客に対して主導権を握るためですよ。

あちらは接近に気づかれていることを知りませんから、面食らうでしょうね」


 占い専門の魔女へ会いに来る者は、基本的に占いを依頼しにやってくる。


つまり客である可能性が高い。


そこで、相手の到着と同時に玄関扉を開けて到来を予知してみせるのがコーディアのやり口だった。


そうすることで占いの精度を見せつけると同時に会話の主導権を握り、依頼金額を釣り上げるのである。


「さて、二人とも。誰が来ても驚いてはならぬよ」

「は、はい、コーディア様……!」


緊張を追い払うように頬をペチペチと叩くロウジィを、このやり口に慣れたコーディアとチェスターは温かい目で見守る。


「10秒前じゃ。玄関の前に来た瞬間に開けるぞよ」


二人が頷いたのを確認して、コーディアは扉に手をかける。


4、3、2、1――



刹那、扉を開けてニタリと嗤う。


「待っておったぞ」


 扉の前で手を伸ばそうとしていた男は、突如開いた扉に一瞬驚きつつも、ひと呼吸置いて静かに会釈した。


「……、見事な精度でござるな。大魔女コーディア」

「……クスクスクス。しばらくぶりじゃのう、アルクス。お主こそ、相変わらずデカいのぉ」


アルクスと呼ばれた大男は、コーディアの両脇に目を配る。


チェスターの姿を見て、懐かしい顔に口角を緩ませて握手の手を伸ばす。


「おぉ、其方は確か……そう、コーディアの護衛を任されていた、名前は、えっと、アレでござる……」


握手のために伸ばしていた手を、記憶を辿るように泳がせながら必死に思い出そうとするアルクス。


チェスターは苦笑しながら泳ぐ手を掴んで握手した。


「……チェスターです。とはいえ、出身も所属も違ったのですから無理もありません」

「かたじけない……」


一方のロウジィは、チェスターと同じ部隊ということを聞いて表情が強張る。


ただでさえ足音のデカい大男が、しかも自身を捨てた部隊に身を置いていたとなれば恐怖も倍増するというものだ。


そうして怯えきったロウジィに気づいて、アルクスはすかさず跪いて頭を垂れた。


「して、其方は我らが非礼を働いた占い師であるな。

ソレガシの詫びで足りることはないだろうが、我が隊の其方への処遇はなんとも礼を欠くものであった。どうか、詫びさせてほしい」

「あ、あう……」


真っ直ぐ飛んでくる謝罪の言葉に、ロウジィは戸惑う。


心を読むには至らずとも、声色からある程度の真贋を聞き取れるロウジィには、それが心からの言葉であることは容易に把握できた。


革命軍をなんとなくと認識していたロウジィにとって、アルクスの言動は意外そのものだったのだ。


アルクス個人を受け入れるべきか偏見に頼るべきか、判断のつかないロウジィはチェスターの背に隠れた。


「む……唐突が過ぎたか。仕方があるまい」

「それで、アルクスよ。ただ挨拶に来たわけではなかろう」


 ロウジィに助け舟を出すように、本題に話を逸らす。


アルクスはそうだったと膝をうって、その巨体を起こした。


「占いを依頼しに馳せ参じた、大魔女コーディア。


――レイラ姫の居場所を占ってほしい」

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