第4話 商店街の影

シャッターの降りた通りに、春木が持ち込んだのは、派手な計画ではなく「手描きの地図」だった。


古びた商店街のアーチの下を、風が抜けた。

「空き店舗、また増えたな……」

坂本がつぶやく。


「ここでやってみませんか。」

春木の声は静かだが、真っすぐだった。


理事会の会議室。

重たい空気。理事長の河原が腕を組む。

「アプリだのシステムだの、年寄りには分からん」


春木はカバンから1枚の紙を取り出した。

それは通りの地図。手描きの矢印と、店の名前が並ぶ。


「観光客よりも、“暮らしている人”のために作りたいんです。

 朝に注文して、夕方に受け取る。お年寄りが荷物を持たなくて済むように。」


河原は黙ったまま、地図を見つめている。

「……派手さはないが、筋は通ってる。」


奥から声がした。

「私は、試してもいいと思うよ。」


喫茶・川嶋の店主、川嶋千代だった。

「うちでやってみなさい。ただし、すぐにやめるかもしれないけどね。」


春木は頭を下げた。

「ありがとうございます。絶対に無駄にはしません。」


通りの空気が、少しだけ動いた。

その夜、春木の胸には確かに“希望の灯”がともっていた。


【作者より】

商店街という小さな社会に足を踏み入れた春木。

ここから、本当の挑戦が始まります。

▶ 第5話「老舗のカウンター」につづく


※異常な投稿があったので、更新します。内容は変えてません。

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