奥義!親にチクる!
「白川未来月さんのお母様で間違いないでしょうか?」
「はい……えっと、どちら様で?」
「私は国防省の上原純平と申します」
「国防省!?……国の偉い人がなんで家に」
「その事について詳しく話をしたいので……誠に申し訳ありませんが時間を頂けないでしょうか?娘さんにも深く関わっている大事な事でして」
「未来月が?……未来月がなにかしたんですか!?」
「した、と言うよりは巻き込まれていたのが正しいですね……お父様とはスマホでリモート通話は可能でしょうか?」
「は、はい」
「でしたら、話にお立ち会いください」
オカルト課に配属されて初の仕事が来た。
異世界からの使者が子供に代理で戦ってもらうというニチアサキッズタイムみたいな状況をどうにかしなければならない仕事だ。
偽名を使い非常勤講師として雇われていた水堂輪駆と言う男を魔法少女勧誘罪と言う聞いたことがない罪状で逮捕をし、そのまま白川未来月の家に向かい未来月の母親に国防省の人間だと名刺を渡した後に未来月になにが!?と驚いている。
先ずは話し合いにお立ち会いください、そう言い車に乗ってもらい……神社にやって来た。
「お母さん!!」
「未来月……なにがあったの!?」
「それは……その……」
「外して!!この重りを外してよ!!」
未来月のお母さんと再会をすれば未来月は嬉しそうな顔をしていた。
しかし国防省の人間が現れるなんてどんな事件に巻き込まれているの!?と最もらしい疑問をぶつければ答えるのを躊躇った。そんな中で黒原カジツが奴隷とかが付けてそうな鉄球の重りを幾つか装備し手錠をつけて連行されてきた。
「僕達はなにも悪いことをしてないよ!!」
「そうよ!悪いのはアル大臣よ!」
「……………そういう問題ではない……」
「カジツ!!…………娘になにをしているんですか!!」
「マ、ママ!?」
黒原カジツだけでなく人間の姿になっている水堂輪駆も連行されてきた。
輪駆も手錠を付けられその上で幾つもの重りをつけられている。自分達は悪いことをしていないと言い切るのだが、そんな中で黒原カジツのお母さんがやって来た。なんでここに居るの?と言いたかったがカジツの姿に対して怒りを顕にする。
オレは気にせずに蝋燭を灯す。ギリシャのアテネから貰った聖火の炎で灯しており4本灯し四方に分け結界を貼る。
「水堂輪駆を魔法少女勧誘罪で逮捕し……黒原カジツは既に魔法少女勧誘から魔法少女に、白川未来月は危うく魔法少女にされそうになりました」
「「……はい?」」
「ち、違う!魔法少女じゃなくて伝説のミックスジュース作るのに必要な伝説の乙女で」
「そういう存在である事は認める、それでいいんだな?」
水堂輪駆を魔法少女勧誘罪で逮捕した。
なんだそれは?と白川未来月と黒原カジツの母親は頭に?を浮かび上げており、水堂輪駆は魔法少女と言う者でなく伝説のミックスジュースを作るのに必要な伝説の乙女と訂正を要求する。そういう事を言うという事はそういう不思議な存在である事を認める、そういう事で良いのだなと聞いてみれば黙った。どうやらあまり人に知られたくないのだろう。
「結論から言いますと、この男は異世界の住人です。こちらの世界の人間に助けを求めに来ました」
「…………助けを求めたのなら助けてあげたらいいんじゃないかしら?」
「ええ、その通りでしょう……ただし、それが代理戦争であるのならば話はまた別です」
異世界住人、と言われても言葉を飲み込む事が出来ないカジツのお母さん。
助けを求められたのならば助ける、それぐらいの事は普通のことだと認識をしている。それ自体は立派な事だが、問題はそこからだ。
コレがなにかしらの条件を満たすことで終わりでなく明確に見える敵が居る。子供でも分かりやすい悪が居る。代理戦争と言えば目を見開くカジツのお母さん。スマホを取り出して【もういいですよ】とメッセージアプリでやり取りを送れば五芒星が出現し、転移魔法でリンゴの様な見た目をしているがカジツ達以上に重りを付けられているヴァドスと龍一課長が現れた。
「い、今のは……」
「凄く分かりやすく言えば魔法だね……ああ、どうもどうも。オカルト課課長の龍一です」
何処からともなく魔法陣の様な物が出現し魔法が発動して瞬間移動をした。その光景を見てオレ以外は驚いているので龍一課長が魔法と答えた後に軽く自己紹介をした。オカルト課?と各々が疑問を抱いているので俺は答える。
「一言で言えば幽霊等のオカルトに関するあれやこれやを対応する部署です……今回、水堂輪駆、いえ、リンクと言う男が異世界から現れて伝説のミックスジュースを作る伝説の乙女達を集める為に学校に非常勤講師として潜入していました。どういう経緯かは知りませんが既に黒原カジツは勧誘済みで、黒原カジツと共に白川未来月を勧誘していました」
「そ、そんな子供向けアニメみたいな展開があるの!?」
「……自分もつい最近この部署に配属されたのですが、結構見られるらしいです」
白川未来月のお母さんが子供向けなアニメみたいな展開が!?と驚いているが、コレは割とあるケースだ。
実際にオレが遭遇したのは初めてだからなんとも言えないが、過去に何人かは魔法少女勧誘罪逮捕されている。
「私達の何処が悪いって言うのよ!!」
「はぁ……未来月、お前はどうするつもりだった?」
「……え?」
「2対1でカジツが不利な状況だった、人ではない見た目で聞かされている情報だけなら明確に見える子供でも分かる悪……そんな悪を倒すことが出来る力を自分は会得することが出来る……どうするつもりだった?」
「……あの時は、力を手に入れようと思いました……黒原さんを助けないとって……………悪い、ことなのですか?」
手錠を付けられ、更には逃げられないように重りをつけているカジツが自分達の何処が悪いのかを聞いた。
それを聞いて呆れるしかないが、先ずは確認をしておこうと思い未来月があの時にどうするつもりなのかを聞いた。あの時に力を手に入れようとした、カジツを助けないといけないと思った……それが悪いことなのか?と聞いた。
「善悪で決めて良いのならば悪いことではない……ただし、良いことでもない」
「…………え!?」
「善でもあり悪でもある……善と悪の2つは裏と表、言い方を変えれば1枚のカードだ。表であろうが1枚のカードだ。裏を向いていようが1枚のカードだ……コレは善悪で決めて良いことではない」
「…………どっちなんですか?」
「う〜ん……オカルト課基準じゃ悪だよ。もう、それこそクソめんどくさい悪だよ」
正義か悪かで聞いてくるが正義でもなければ悪でもない、答えるのは難しい。
どちらなのかを未来月に深く聞かれれば龍一課長がオカルト課基準じゃ悪だと言う事をハッキリと言った。
「悪って、そんな!僕はソフト王国を助ける」
「黙ってろ、お前……自分がニチアサキッズタイムみたいな状況に発生しているから感覚麻痺してるかもしんねえけどさ……コレさぁ、戦争だよ?ソフト王国とか言う聞いたことがない国の人間がやって来て争いの火種を撒いてるどころか、子供達に戦ってくれって頼んでる代理戦争だよ?」
「…………」
「龍一課長、もう少し段階を踏みましょう……例えばその伝説のミックスジュースを作る乙女とやらになったとしよう、文字通りミックスジュースを作るだけが仕事ならば我々もいきなりの逮捕なんてしたくない。しかしそのソフト王国と言う所にいるアル大臣からコールと言われる刺客を放たれている……そこに居るリンゴを彷彿とさせる化物と戦わないといけない……勿論、戦える力はある。だが、それとこれとは話は別だ。国がなんにも知らず個人で亡命を受け、なんの訓練もしていないが力は持っている子供達に代理で戦ってもらう……あのままこちらが介入しなかった場合、おそらく白川未来月は変身していた。そしてこのリンゴを彷彿とさせる化物を殺していた」
「っ!!」
「……黒原カジツが馴れた感じで敵の存在が居る事を言っていたことや相手が手口を変えてきた事から、今まで何度かコールと呼ばれるアル大臣からの刺客を殺していただろう?」
殺していた、その事実を言えば未来月は顔色を変えた。
自分は怪人を倒す、そういう風に認識をしていたのだろうが……怪人の命をしっかりと奪っている。明らかに使い捨ての1回限りの怪人だが、それでも命を奪おうとしている。そしてあの状況から察するに黒原カジツは何体か怪人を殺している。
「っ、カジツ!!」
「そ、それは……倒して……」
「倒すなんて曖昧な言葉を使うな、捕まえるか殺すかのどちらかでしょ?」
既に何体かを殺っている事に関して指摘をすれば黒原カジツの母親が叫んだ。
ホントなの!と言う意味合いでカジツを見つめるがカジツは視線を合わそうとしない。倒していると認めようとするのだが、倒すという言葉を龍一課長が認めなかった。捕まえるか殺すかのどちらかで倒すという曖昧な言葉で片付けるのは認められない。
「なんでそんなことをしてるの!!なんで今の今まで黙ってたの!!」
「落ち着いてください、黒原カジツもある意味被害者です」
「ある意味っつーかマジの被害者じゃね?……う〜ん……ブレイク!」
ホントに戦闘以外ではあまり役立たないな龍一課長は。
ある意味被害者でありマジの被害者ではない……ニチアサキッズタイム的な展開を親に通報すると言う結結構酷い展開だが。
「だ、だって……だって」
「別に黒原カジツの行いに対してああだこうだ文句は言いたくないです……ただ認識をしっかりとしてもらわないと困ります……異世界の住人がクーデターを起こした奴を殺したいからこちらの世界で戦力を揃える、それが水堂輪駆がやっていることです」
「悪意ある言い方をやめてくれないか!!僕はアル大臣を倒してソフト王国を取り戻すだけで」
「…………倒すってなんだよ?」
俺の言い方が悪意ある言い方だと叫ぶ水堂輪駆。
敵であるアル大臣を倒してソフト王国を取り戻すと言っているのだがここで龍一課長が倒す、と言う言葉に対して問いかけたと思えば闘気と呪力を発揮してお札を取り出した。お札をリンゴを彷彿とさせる怪人の上に置けばボン!と音が鳴った。
何事か!?と俺以外が驚いていると黒い髪のクールな容姿のイケメンにリンゴを彷彿とさせる怪人は変身をした……
「龍一課長」
なにをしたいかわかるがやりすぎでは?
「キッチリとするところはキッチリとしとかないとダメでしょうに……さぁ、未来月。選ばれし君には力がある!コイツは異世界からの侵略者だから倒そう!」
「ぁ……ぁ……あ……」
「え、で、でも……」
「……なにを躊躇ってるんだ?ホントについさっきまでは伝説のミックスジュースを作れる伝説の乙女として戦う覚悟は出来ていたんでしょ?だったらキッチリと倒さないと!……………それとも、見た目がイケメンな人間や綺麗な女性だったからボコボコに出来ない?」
ニチアサキッズタイムの敵は基本的には人間っぽくない。
龍一課長は変化の術を使いリンゴを彷彿とさせる怪人、ヴァドスをイケメンな見た目に変えた……見た目は違っているだけで中身はつい先ほどまでに倒そうと考えていた相手だ。それなのに見た目がイケメンな男に変えたので未来月は躊躇った。ヴァドスが今にでも死にそうな声を上げているのならば尚更だろう。
「ある程度の容姿が整った奴がある程度の正論を言えばそれが正しいとか思っちゃう。逆に醜い容姿ならば人間じゃないならば疑ってしまう……容姿による差別は俺は別に否定しない。アイドルと言う職業はそれを売り文句にしているから。でも、その逆になって躊躇うならば………………安い正義だな」
「…………」
「……龍一課長……エグいですね」
「これぐらい言わないと現実に戻らないでしょうに」
未来月やカジツには思ったよりも精神的に来ている。
容姿による差別については思うことはあるが、言っていることは間違いではない。綺麗な空想でなく汚い現実を龍一課長は突き付けた。拳銃を取り出した。
「さぁ、殺るんだ」
「っ、待ってください!!娘に、娘に人殺しなんて」
「……それは貴女の本音ですか?」
「当たり前です…………よくも……よくも娘を!未来月に戦争に加担させようとしたわね!!」
「……カジツ!貴女も貴女よ!なんでそんな真似をしてるのを黙っていたの!!」
殺せと拳銃を渡せば娘に人殺しをさせたくないのだと白川未来月のお母さんが言った。
俺が本音かどうかを聞けば本音だと頷き、拳銃を手に取らない様にする。そして水堂輪駆を睨んだ。その状況を見て現実を理解したのかカジツのお母さんもなんでそんなことをしてるの!と…………まぁ、なんというか当然の結果だろう。
「僕は……僕は、そんなつもりじゃ……ソフト王国を……このままじゃ、このままじゃ」
「自分が被害者面するのやめてくれないか……言っておくが魔法少女勧誘罪と言う罪状になっているが、ちゃんとした法律の1つ、外患誘致罪と言う罪に近い状態だからな」
「ソフト王国だけじゃなくてこの世界も危ないんだよ!このままじゃアル大臣がこの世界まで!」
龍一課長が外患誘致罪について言えばこの世界も危ないと主張する水堂輪駆。
「ま、それもそうだね……でもね……お前は今後こちらの世界にガッツリ干渉するって約束出来るの?」
「え?」
「俺は戦闘にばかり能力が偏っているがそれでもドイツとかスペインとかのメジャーな国ならば知っている。だが、ソフト王国なんて国は生まれてから1度も聞いたことがない。ググっても出てこない……文字通りの異世界だろう。貿易らしい貿易を一切せず、ある日突然現れて好き勝手な事をしまくりそして何事も無かったかの様に帰る……………そんなことを許すと思ってんの?」
「…………」
「お前みたいな奴は意外と居る。そして、事件が終わった後に日本と貿易をしよう!なんてせずに勝手に帰る。自分の立ち位置が王族で王家を救ったのになんのお礼も無い……交渉の1つも来ない、勝手に代理戦争をしていた事についての謝罪文の1つもない……黙ってるってことは終われば帰って何もなかったで終わらせるつもりだったんでしょ?」
龍一課長の言葉に対して最初はなにかを言おうとしていた水堂輪駆だったがなにも言えなくなった。
龍一課長が言っている通りの展開になる……文字通りのニチアサキッズタイムみたいな環境……言葉にすればクソだな。
「龍一課長、鳴ってますよ」
「あ、ごめ」
重たい空気が流れている中で龍一課長の仕事用のスマホが鳴った。
空気が壊れるのにはいいタイミング……だが、逃げ出すことは出来ない。神秘的な力を持っているから神秘や異能を無効化する手錠を付けている。その神秘や異能を無効化する手錠でも無効化する事が出来ない可能性があるから数十キロの鉄球を複数付けているので上手く逃げられない。
「はい、もしもし、
「……龍一課長、なにかありました?」
「はぁ…………今回の一件のパターンは…………黒だ」
「っ!!」
電話の向こうの相手は十勇士の1人、
マッドサイエンティストなところがあるらしいが仕事の方はしっかりとしている……俺達が捕獲したコールのヴァッティングを五鹿さんの研究所送りにしたのだが……パターンが黒だと判明した。
「パターン、黒?……何なんですかそれは?」
「……オカルト課は幾つかの状況を想定している。それを色で分けている……ホント、なのですか?」
「残念ながら黒だ……いや、グレーに近い黒なのか……あ〜俺は使い物にならん。どうしよ、どうしよう。ホントにどうしよう」
「黒ってなにか悪いことでもあるんです?」
「パターン黒は……異世界の住人から力を異世界の力を授かった者でしか戦えないまたはこちらの世界に存在する力では相手を殺しにくい、だ……」
未来月がパターン黒について聞いてくるので答えた。
よりにもよって、パターン黒……一番最悪なケースだな。
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