第3話 ハードテスト
話がまとまり、カレンはすぐにゼネラルマネジャーに連絡を取った。
連絡用ブレスで呼び出すと、立体映像のマネジャーが投影された。
「マネジャー、逸材を発見しました。アランさんの弟さんのトムさんです」
「ほう、私はゼネラルマネジャーのランだ、よろしく!」
「え、こんな小さい女の子がゼネラルマネジャー?」
「ばか、この方は若く見えても、元コスモリーガーで、年齢も私と同じ22歳よ、失礼なこと言わないで!」
「カレン、まあ、そんなことはいいから」
ランは怒っていないようだ。
するとクラムがランに向かって話し始めた。
「まさかと思うが、全部、君の手の内かな?氷のラン!」
「それは秘密」
「え、氷のラン?先輩知ってます?」
「もちろん、ランさんが現役時代に、あまりにも無表情な感じで冷静にプレーするから付いた二つ名よ!」
「ところで、カレンとミレイ!」
「はい、なんでしょう、ラン、マネジャー!」
「明日の午後12時に開戦すると、西プトロマイストから通達があり、どうやらコスモリーグの試合前に内戦が始まってしまう」
「ええ、そんな!」
「そこで、私は交渉のため本体より先に、すでに小型艇でそちらに向かっている」
「到着予定は明日の12時15分。15分ほど間に合わないので、それまでの間、内戦が始まるのを阻止するよにうに」
「作戦概要を送る。ではよろしく!」
それだけ言うと、通信は切れた。
「うそ、何かの冗談よね、そんなの私達にできるわけないじゃない」
すると、ミレイが立ち上がった。
「先輩、これは本気だと思います。そのために私がいると思います」
「もしかして、カレンさんは、コスモリーグの裏の顔を知らないんじゃないか?」
クラムさんが問いかけた。
「え、裏の顔って?」
「今回、先輩にも作戦依頼してきた以上、話してもいいかと思いますので話します」
ミレイが話してくれた。
コスモリーグは、ただサッカーをするだけでなく、この銀河系の平和を影で支える組織なのだと。
元々は違ったが、あまりにも人気で、彼らには、どんな星でも自由に行動できる権限が与えられた。それに銀河連邦の首脳部が目をつけたのだという。
さらに選手は瞬発力や、持久力に優れ、咄嗟の判断も優秀とくれば、工作員として申し分ないのだ。
その代償として、コスモリーガーには、他に変えられないほどの栄誉を受けられるのだ。
もちろん、選手をバックアップする戦闘もできるスタッフが充実していて、ミレイはその1人である。
「ミレイ! そういえば思い出した、薔薇色のバーサーカー、ミレイ?」
クラムさんが問いかけた。
「そんな、薔薇のように美しい女戦士だなんて、恥ずかしいわ」
いや、誰もそんな事言ってないけど
「真っ赤な薔薇のように赤い髪で、背の高い女、特長もピッタリだ」
「正直言って、思い出したくない過去です、ごく普通の先輩が羨ましいです!」
どうやら本人も認めているから、間違いないようだ。
「まあ、とにかく、作戦概要を読みましょう」
カレンは、そのまま作戦概要を投影した。
「ちょっと待って、これは受け入れられないわ、トムくんにそんな事やらせるなんて!」
あまりにも危険な作戦に、カレンは発狂しそうになった。
「いや、凄い作戦だ、こんな作戦を瞬時にたてるなんて、天才だな!」
クラムさんが呟いた。
「トム、できそうか?」
まさかの親は許可?
「父さん、ランさんは、僕の実力を知ってるね、上手くやったら入団という事かな?」
カレンは、そこまで思いつかなかった。
「ああ、そうだろう、やるか?」
「もちろん」
「ところで、ミレイさんもたいへんだけど、行ける?」
「もちもち、の、ろんろんです」
こうして、決行することが決まった。
不覚にも即席のパーティーができ、明日に備えて早く寝ることにした。
朝起きると、すでに朝食ができていた。
「さあ、しっかり食べないと持たないぞ!」
クラムさんの激がとんだ。
朝食が済み、支度が終ると、いよいよ出発だ。
目的地は比較的近く、トムの家がある山を越えて行けばすぐだ、ちょうど開戦予定地の真横に出られるらしい。
「ねえ、この作戦概要、おかしくない?」
「え、どうしてですか先輩?」
「だって、そもそも私達がここにいなければ、成り立たないわ」
「それって、つまり、ランさんはすべて予測してたってことですか?」
「ええ、そうよ! 確証は無いけど」
「可能性は高いと思います。コスモリーグの頭脳と言われてますからね!」
2時間ほどで山頂に着き、そこから下る途中で、トムが真剣な表情に変わった。
「そろそろ作戦開始地域に入るよ」
トムがボソッとしゃべった。
そう、この辺りは、東西プトロマイストの斥候がうろついている地区だ。
「頼むよ、ミレイ!」
ミレイはすでに戦闘モードに入っており、返事は無く、周囲の気配を捉えることに集中していた。
ミレイが動き、草むらに突入した。
わずか数秒の間に、相手を倒し戻ってきた。
凄い手際の良さだ。武器も持たずに、素手で倒してきたようだ。なおも警戒を緩めない。
やがて、目的地が近づいてきた。
「では、ここでお別れですね!」
「トム、本当にやるの?」
「やるよ!」
「どうして?」
「だって兄貴だったらやるだろ!」
目が輝いてる。決意が固いようだ。もう何も言う事はあるまい、メンタルも強いようだ。
カレンとミレイは東プトロマイスト軍の後方に周り、騒ぎを起こした。
兵士に向かって、
「西側に行きたいんだけど、いいかな?」
「はあ? 駄目に決まってるだろ!見てわからないのか?もうすぐ開戦だぞ!」
「いや、どうしても向こうに用があるのよ!」
「駄目なものは駄目だ」
そう言ってカレンを突き飛ばした。
「キャー、どこ触ってんのよ、変態!」
「な、なんだと、ふざけてるのか!」
「先に手をだしたのは、あんただからね!」
バシッ、カレンは平手打ちをした。
「くそ〜 調子に乗りやがって」
兵士は殴りかかってきた、その瞬時ミレイが兵士の手をにぎった。
「暴力はいけませんよ、暴力は」
そう言いながら、兵士を他の兵士に投げた。
数名が倒れた、彼らの怒りは度をこえた。
「もう許さね〜」
数名の兵士がミレイに向かって行ったが、瞬時に倒された。
「なんだ、この女、強いぞ、大勢でかかれ」
今度は数十名でかかるも、いい勝負だ。
「ワーワー !ガヤガヤ!」
辺りは騒然として、皆の注目を集めている。これはもちろん陽動作戦、今のところ狙い通りの展開だ。
しばらくして、隊長とおぼしき兵士の1人が冷静に叫んだ。
「お前ら、いいかげんにしろ、もうすぐ始まる。戦闘に集中しろ!」
そう言い放ち、皆、我にかえった。
そして、敵軍を見据えると、皆、目を疑って、二度見した。
「な、なんだあれ?」
敵軍との中央に、1人の少年がいるのだ。
指揮官の1人が兵士に聞いた。
「あんなところで、何を?」
「リフティングをしているようですね〜」
辺りは、ざわめきだした。
「おいおい、なんなんだ!」
「わけわからん?」
両陣営とも、疑心暗鬼に、ざわついている。
「しかし、上手いな」
「本当だ。この風の中でよくやる」
トムのテクニックに、皆が息を飲む。
「凄い、まったく落とさない」
そこへ砂塵がトム襲ってきた。皆が目を伏せたが、トムはボールを落とさない。
「お〜 凄い!」
「頑張れ〜!」
「なんて奴だ!」
声援まで飛び始めた。誰も気づかないが、この時、開戦予告の12時を過ぎた。
その頃 大気圏に突入していたラン達。
「出ました。通信回復します」
「12時15分、予定通りだな」
ここから、両陣営の代表の元まで、数分で着くだろう位置にいる。
本来なら危険な空域だが、コスモリーグの船だけは、撃ち落とされることはない。
「開戦場所の映像は出るか?」
「はい、出ます」
現地の映像が出て、トムの姿が写し出された。戦闘は始まっていないことが確認された。
「よし、上出来だ」
「計画通り、私は東へ説得に、ロペス、君は西へ」
「了解しまし」
「あっ!」
「どうした?」
「戦闘が始まりました」
「トムは?」
「はい、まだリフティングを続けているようです」
この時、兵士の1人が銃を落とし、それが暴発してしまったのだ。これをきっかけに戦闘が始まってしまったのだ。
「まずいわね、予定を変更する。東の説得はラムド、あなたが行って、私は戦地へ向う」
「はい、了解いたしました!」
ランは、背中に特殊装置を付けた。
「準備はできた。出る!」
ランの背中の装置から透明の羽が出て、高速ブースターが唸りを上げ発進した。
「くっ、流石にレーザーガンの嵐の中でリフティングは想定してなかったな〜」
トムは何度もよろけながら、リフティングを続けている。
それを見て、兵士達は一応避けてくれているが、何しろど真ん中にいるのだ、時折ビームがかすめていく。
そして戦闘が激しくなってきた。
「まいったな、もういつ撃ち抜かれてもおかしくない」
もう、駄目だ、そう思った瞬間、ランが降り立った。
ランはトムの東側に、ひとつだけ持つ透明の特殊盾を置き、西側には、自分を置いた。
「よく頑張ったわね、もう少しの辛抱よ」
トムは頷くのが精一杯で、リフティングを続けた。
それから、どれくらい経っただろう、しばらく耐え続けた。時計の針は、もう12時45分を指していた。
激化する戦闘の中で、盾になっていたランの腕を銃が撃ち抜いた。
「ランさん、大丈夫?」
「大丈夫、私の腕は義手だから」
「ウッ」
今度は足が撃ち抜かれた。
「ランさん、もういいです」
ランは片足で立ちながら、
「大丈夫、私はあなたを守ってみせる」
絶対絶命の状況にも関わらず、ランは顔色ひとつ変えない。
ランが盾代わりに使っていた、両翼も、すでにボロボロだ。
ここまで自分を守ってくれるランをトムは不思議に思いはじめた。
「なぜ?」
もう駄目だろうな、そう思った時、レーザーガンが弱まり始めた。
ランとトムを見て、
「おい、あいつまだやってるぜ!」
「ばかな?」
「女の子がかばってるぞ」
「ど、どうする?」
「おい、撃つのやめよう!」
「ああ!」
トムとランの近くの兵士は戦闘をやめ始めた。その輪は徐々に広がっていった。
やがて戦闘が小康状態になった瞬間、サイレンが鳴った。
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