9


 後先を考えず衝動的に少年を買い取ったスヴェイズは、今更なんて軽率なことをしたのだろう思う。


「……きみ、名前は? どこから来たの?」


 忌み子が手をつけた少年を街へ戻すのは危険なので論外。となれば、故郷に戻してやるのが一番だ。幸いスヴェイズには時間だけは沢山ある。


「……どっちもわからない」


 少年は手を止めて項垂れ、体をふるわせ目に涙を溜める。

 スヴェイズはまた早口に捲し立てる。


「そ、それなら名前をつけてあげるよ。そうだなぁ…………"エイル"はどう? い、嫌なら拒否してくれて構わない! その、おれってセンスないから、」


 また勢いだけで大切なことを決めてしまいそうになっていたスヴェイズであったが……。


「とてもすてきななまえだ。ありがとう、おにいちゃん。おにいちゃんのなまえはなんていうの?」


 少年が涙を拭って笑ってくれたので、スヴェイズは今度は自分が泣き出しそうになりながら名前を告げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る