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 スヴェイズが少年の手を引いてその場を去ろうとすると、行商人が怒りの声を上げる。


「おい、なんだこれは! 本当にこんなものに金貨10枚以上の値打ちがあるのか?!」


 行商人の手のひらには茶色の丸薬が3粒ほど乗っている。


「……えっと、それは、おれが調合した薬で、どんな病気も治ります、」


「どんな病気も? そんな話、眉唾が過ぎるっていうもんだ! あんた、何者だ!」


「その、ええと、……、……、」


 行商人に詰められて、スヴェイズは何も言い返せなくなる。何者だ、なんてそんな正体を明かさなければならない問いかけにはどうしても答えたくはない。

 黙っていると、一陣の強い風が広場を吹き抜ける。風は無情にもスヴェイズのフードを脱がせてしまう。

 白日の下に晒されたスヴェイズの素顔に人々が悲鳴を上げる。


「こいつ、だっ!!」

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