第39話 異界人排除連盟



 リナたちがゲームセンターから出てくると突然全身黒服の10人程の男たちに囲まれた。



「なんだ? お前たち?」



 ニースが男たちを睨みつけるが男たちは怯まない。



「お前たちは『異界人』だな」



 黒服の男の一人がニースに言う。

 帝国人を『異界人』と呼ぶ連中がいることはリナも知っている。


 彼らは50年前に異世界から出現した帝国人たちを異界人として排除しようとした集団の思想を受け継ぐ者たちだ。

 帝国人がこの世界の人間より発達した運動能力を持っていたことから帝国人を化け物扱いしていまだに『異界人』と呼んで差別する。

 そして彼らはこのままでは異界人によって地球人が滅ぼされると本気で信じていて帝国人を殺そうとしているのだ。



「お前たちは『異界人排除連盟』の者たちか?」



 シヴァが厳しい視線を男たちに送る。

 異界人排除連盟の人間は全身黒服で活動することが多い。



「その通りだ。ここは我々日本人の土地だ。異界人は死んでしまえ!」



 男が突然シヴァに殴りかかったがシヴァは余裕で男のパンチを左手でキャッチして右手で男の顔面を思い切り殴った。



「ぐほ!」



 男は派手に鼻血を出して気を失った。



「やっちまえ!」



 それを合図に異界人排除連盟の男たちと六武衆は乱闘になった。



「この野郎!」



 殴りかかってきた男をカインはヒラリと避けながら男の腹に一発強烈なパンチを入れる。

 男は声もなく気を失う。



「たく!せっかくリナとデートしてるのに邪魔すんじゃねえ!」



 ニースはナイフを片手に切りかかってきた男のナイフを蹴って弾き飛ばすとそのまま関節技を極める。



「いててて!!」



 男は悲鳴を上げる。そこを顔を殴りつけてやると地面に倒れ込む。

 アンディもロベルトもルイも次々と男たちを投げ飛ばす。

 時間にして僅か数分の出来事だったが10人の異界人排除連盟の男たちは皆地面に倒れていた。



「まったく仕方のない連中ですね。いつまでも自分たちが選ばれた人間だと思っているのは馬鹿と同じです」



 カインは息も乱さず男たちを眺める。



「警察が来ると厄介だ。さっさと行こうぜ」



 ロベルトはそう言って歩き出す。

 リナたちもロベルトについて現場を離れる。



「私、本物の異界人排除連盟の人間を初めて見ました。本当に危ない人たちですね」



 リナはそう呟いた。


 帝国人が異世界から来たのは事実だがこの50年の間に第二日本帝国として世界に貢献してきたのも事実だ。

 それなのに異世界から来たというだけで差別しさらに殺そうとするなど許せない行為だ。


 リナは自分が帝国人と日本人の両方の血を受け継いでいるから特にそう思う。

 父のコレットは帝国人だが自分の父親であり愛情を注いで育ててくれた。


 そこに異世界人だとか日本人とかの差はない。

 なぜそのことが分からないのか。


 リナも幼少期に「異界人の子供」と悪口を言われたことはある。

 でも父を恨む気持ちは起きなかった。


 それどころか父の十六夜時代の話を聞いては喜んでいた。

 父が皇帝に認められた立派な人間だと思ったからだ。

 そして今は自分が十六夜になり皇帝から信頼される立場になって父がいかに大変な仕事をしていたかが分かる。



「ここまで来れば大丈夫でしょう。この建物に入りましょうか?」



 リナは六武衆のメンバーを馴染みのお店に連れて行く。

 ここはアニメや小説が売ってる本屋とアニメグッズが置いてある店だ。



「リナの好きなアニメはどれ?」



 ルイが興味津々に訊いてくる。



「これです。このアニメの主人公が好きなんです」


「ふ~ん。武人が出てくる話か。リナは武人が本当に好きなんだね」



 ルイが本の裏に書いてあるあらすじを読んでいる。



「昔から父に憧れていたんで幼稚園の頃は将来の夢は武人のお嫁さんになることだったんですよ」



 リナは照れながら話す。



「へえ、いいこと聞いたな。リナ、本物の武人と出会って誰と恋をしたい?」



 ニースが甘い声でリナの耳元で囁く。



「ちょっと、ニース、やめてください。驚くじゃないですか」



 リナは慌てて振り向いてニースに抗議する。



「それでリナは十六夜の誰と付き合いたいの?」



 ニースは意地悪そうな顔で尋ねる。



「私は皆をかけがえのない仲間だと思っています。一人の人を選ぶとか出来ません」



 リナは正直に答える。



「ニース。からかうのもその辺にしとけ」



 シヴァがリナを庇ってくれた。



「まあ、リナは十六夜のアイドルだからね。リナは皆のものさ」



 ニースがそう言って笑った。



「そのとおりですよ。ニースだけのものじゃないですからね」



 ルイもニースに釘を刺す。



「分かってるって」


「ニースは都合の悪いことはすぐ忘れるからな」



 ロベルトはそう言ってニースを睨む。



「みんなして俺をいじめるなよ」



 ニースは少し拗ねたように口を尖らせる。



「私は皆のことが好きですよ。もちろんニースのことも。だから機嫌直してください」


「ありがとう。リナ」



 ニースはリナに微笑んだ。





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