偽りの王国

sorayukito

偽りの王国

第1話 プロローグ




私は一人彷徨っていた――…。






見渡す限り砂漠の中を、私は一人彷徨っていた。


昼と夜とでは50度もある寒暖差。


昼は大地を炙る陽光が降り注ぎ、夜は凍てつく闇に覆われる。


容赦ない自然の洗礼を、私はただ受け入れるしかなかった。


私の名はサイラス。


サイラス・リューシタ。


ブリミナス王国の聖騎士団に所属する騎士だ。


今から約一ヶ月前、王命により王国の遥か南方にあるという伝説の王国エルドラドに、友好の使者として遣わされた。


聖騎士団副団長肩書を持つ私と共に、6名の騎士が旅立つことになった。


この南方の砂漠地帯には得体のしれない魔物が棲んでいるという噂を耳にしていたが、実際に目にした者はいなかった。


王国の者でこの広大な砂漠に足を踏み入れた者がいなかったからに他ならないのだが…。


王国を出発してから1週間。


始めは岩や石がゴロゴロと転がる乾いた大地が続き、砂漠に自生する植物が見受けられたが、時が経つにつれ、さらさらとした砂床に変わっていった。


2週間が経った頃、私達は小規模なオアシスに辿り着いた。


そこには砂漠を横断する商人の一団が先に留まっており、私達を歓迎してくれた。


久々の人との交流に私達は喜んだ。そして伝説の王国について情報を求めたが得られなかった。


私達は彼等と夜に焚き火を囲んで小さな宴をし、テントで休んだ。


しかし、その夜。

寝静まった頃を見計らってか、盗賊の襲撃を受けた。


盗賊は商人の商品を奪い、女を求めているようだった。

商人達から離れた場所にテントを張っていた私達は手に剣を持ち、息を潜め盗賊の隙を伺っていた。


「サイラス様はここに留まっていて下さい。我々が奴等を引き付けているうちに逃げるのです!」

「何を馬鹿なっ!ここに留まっていても何れ見つかる。頭目を一気に片付けるのだ。お前達は私を援護しろ!」


テントの閉じていた出入り口の隙間から外を伺い、機を見定めていた私の前に、焚き火に照らされた大きなライオンの影が伸びた。


「ギャアアア!!」


人々の叫び声と共にライオンの咆哮が辺りに響き渡った。


嫌な汗が背中を伝った。


体が硬直して思考回路が停止する。


ライオンがこの砂漠に生息していることを知ってはいたが、実物を目の当たりにした私達はその場から1歩も動けず、惨劇が収まることをただ待つことしか出来なかった。


夜が明けて見たものは刃物で殺された商人5名の遺体と、獣に襲われた数名の盗賊の骸だった。


盗賊に荒らされた商品はオアシスの至る所に散乱し、生き延びた商人2名は倒れたテントの下で震えていた。


私達は彼等を介抱し、恐るべき事を聞いた。


この砂漠にはライオンが生息しているが、その中に魔物をも喰い殺す悪魔のライオンがいると。


王国に帰るよう忠告を受けたが、その選択肢は私達に用意されていなかった。


商人と別れ伝説の王国エルドラドを探す旅を続けていた私達は、その後、砂床に潜む魔物に2名が喰い殺された。


そして、その魔物に執拗に付きまとわれた私達は、一人ずつ順に命を落としていった。


そして私は1人になった。













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