第17話 臨床試験
「遂に長年の夢ノーベル賞をこの手にすることが出来た。ばんざーい!」
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ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の各分野で「人類に最大の貢献をもたらした人々」に授与される賞。 ノーベル賞は、スウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づき創設された。
2025年遂に恭介はノーベル賞候補に選出された。ノーベル賞の候補者は、世界中の限られた推薦者から推薦される。推薦者は過去の受賞者や選ばれた大学教授など、ごく一部の人に限られている。推薦された候補者は、各賞約300人ほどだが、最終的に受賞できるのは最大でも3人と、非常に狭き門だ。候補者は段階的に絞り込まれ、最終選考は授賞日当日に行われることが通例となっている。
ノーベル賞は、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済学の6分野で人類に最も貢献した人物に贈られる、世界で最も権威ある賞だ。受賞者の選考には、丸1年をかける厳正なプロセスが待っている。
まず、ノーベル賞受賞者や選ばれた大学教授など、限られた人たちが推薦者となり候補者を挙げる。候補者は各賞約300人程度。集められた候補者は、4月頃までに約20人に絞り込まれる。 さらに5月には各賞5人程度まで絞り込まれる。最終的に10月上旬に授与委員会で投票が行われ、受賞者が決定・発表される。
2025年のノーベル賞発表は10月某日の生理学・医学賞からスタートするので、その前日の夜はとうとう一睡もできなかった。大体決まりだと言っても落ちる可能性だってある訳だ。そしてその瞬間はやって来た。
ドキドキ ドキドキ ドキドキ胸の鼓動を抑えることが出来ない。
いよいよ泣いても笑っても発表の時間が刻一刻と近づいて来た。
「ノーベル生理学・医学賞は、『〇〇に関する発見』により、東都大学脳神経外科教授神宮寺恭介氏に授与されます」
「わあー遂に決まった。ばんざーい!」
そして…妻美琴と来るはずだったノーベル賞の授賞式は、物理学、化学、生理学・医学、文学、経済学の5部門がスウェーデンのストックホルムにあるコンサートホールで、平和賞はノルウェーのオスロ市庁舎で毎年12月10日に行われる。
ノーベル賞の授与式は、毎年12月10日に開催されるのだが、この日はノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたる。ノーベル賞の受賞者には、賞金、賞状、メダルが授与される。
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父聡はたった1人の可愛い娘を失い失意のどん底にいる。だが、マグロを食べてふぐ毒で死んだなど想像もつかない話だ。マグロが捕食の為にフグを食べたという考えも出来るが、その日の食事会で誰一人そのような症状は出ていないので、誰を恨もうにも現実を受け止めるしかなく無念の日々を送っている。まさか娘婿である恭介が、娘美琴を殺害するなど到底考えられない。
美琴の検視結果胃の残留物から、僅かばかりのフグ毒であるテトロドトキシンという非常に強力な毒素が確認された。
テトロドトキシンは、神経細胞にあるナトリウムチャネルをブロックし、脳から筋肉への信号伝達を遮断する。これにより、呼吸や運動ができなくなる。一方で、痛みを感じる神経の働きも抑える可能性があるため、鎮痛剤としての研究が進められている。
研究段階の鎮痛剤を教授たる恭介が持ち出すことは容易に可能である。微量だけ家に持ち帰り、邪魔者排除の為美琴に恭介が盛ったとしたらすべての謎は解ける。
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恭介は妻美琴が亡くなった事で、自由を謳歌している。それでも…あんな妻でも亡くなってしまえば少しは寂しいものだ。一方で大切な娘江梨香にとっては余り喜ばしい存在ではなかったので、そういう面では一安心である。
それにしても義父聡も腹黒い男だ。恭介を追い詰め神宮寺家に縛り付け、さも自分が育て上げたことによって、ノーベル賞を勝ち取ることが出来たと言わんばかりに、威張りくさっているが、それは少し違う気がする。ノーベル賞を取ることが出来たのは、研究成果を自分の指導あっての事に、すり替えようとしている。
「君研究成果は上出来だったが、それまでに多くの施設の子供たちを犠牲にしたことで研究成果が出たことを、娘の美琴から聞いている。女に狂い美琴を捨てようなど浅はかな真似は止めたまえ。そんなことをしたら自分の首を自分で絞めるようなものだ。分かっているね!君がこの家から出て行けばどういう事になるかという事を……美琴から事実を聞かされた時は心臓が止まるかと思った。仮にも人を救う医師たるものが何という非人道的なことが出来たものだな。到底許されぬ行為!💢💢💢もし事実を表沙汰にしたらノーベル賞など夢のまた夢。一生刑務所暮らしだ。わーっはっはっは!だが、仮にも娘婿となったのだから、黙っておいてやる代わりに、娘を絶対捨てるようなことはしないでおくれ。そうすれば君は多分ノーベル賞を受け取ることが出来るだろう。5月で各賞5人に絞り込まれ、その中の1人が君だからなあ。もし表沙汰にされたくなかったら、江梨香の母と縁を切って美琴を大切にしてくれ。分かったね!」
現在NMNとして研究や製品化されているのは主にβ-NMNである。生体内NAD+という物質に変換され、若々しさや健康維持に役立つと考えられている。
マウス実験からの進展 NMNの研究は、マウス実験において顕著な抗老化作用が示されていたが、ヒトへの臨床試験は最近始まったばかりだが、特に、2016年には日本のK大学と米国某大学が共同でヒトへのNMNの安全性確認のための臨床研究を開始し、安全に投与できることが確認されたのは大きな一歩とされている。
2016年からK大学と米国某大学の研究グループは、NMNがヒトに安全に投与できるかを調べる臨床研究を行った。この研究では、40歳から60歳の健康な男性10名を対象に、100mg、250mg、500mgと異なる量のNMNを経口で単回投与し、その影響を評価した。
だが、ここまで辿り着くプロセスには、恭介のたゆまぬ臨床成果があっての事なのだ。臨床研究を開始し、安全に投与できることが確認された背景には恭介が密かに進めた研究成果が実を結んだ結果だった。
α-NMNが多く混入していると、期待される効果が得られない。
α-NMNの生体内での作用や安全性に関する研究はまだ十分ではない。そのため、α-NMNを摂取した場合に、予期せぬ副作用や健康への影響が生じる可能性が考えられる。
この様な臨床研究を愛人である静香の育った施設の子供を利用して、NMN臨床試験を行った結果1名の人命が奪われる事態が発生していた。
マウス実験ではある程度の成果は出ていたが、ことヒトを使っての臨床試験は熾烈を極めた。
(確かに俺が子供たちに薬剤を飲むよう指示して分量配合も俺独自で行ったが、そのように追い込んだのは誰あろう当時教授だった。聡がひっきりなしに急かせた結果なのだ。現実的に一介の医師が勝手に薬品を持ち出すことなど到底出来ない。教授に全権は握られている。あの時『その薬品を自由に使って研究したまえ!何もマウスにこだわる事は無い。本来ならば人間を使うのが最も正確なデータ―を知り得ることが出来る。君は勇気のない男だからねえ。ふっふっふっふ!』と言ってキーを渡してくれたのはあの時の教授だった義父聡の差し金だった。自分の医局で世界的発明を成功させれば、その功績は当然研究者本人である俺もだが、育てた訳ではないが、指揮を執ったのは誰あろう教授聡なのだ。その功績は計り知れない。名誉職に異様に執着し固執する教授ならではの戦法だった。汚い研究に手を染めたのは確かにこの俺だが、そのように仕向けたのは義父だ。義父聡が死ぬまで、飼い殺しの憂き目に甘んじなければならない。そう思って腐りきっていたが、こうして晴れて俺は、ノーベル賞を授与された。もう義父の聡など怖くない)
児童養護施設の中には、子どもたちが「刑務所のようだ」と感じるような厳しい規律、私語禁止、外出禁止、店員オーバーの環境など、人権侵害に当たる状況があることが指摘されている。たとえば、暴力や暴言、わいせつ行為、不適切な向精神薬の投与といった問題も報告されている。
一時保護所に収容された子どもは、通学や友人との面会が制限され、これまで通っていた学校にも行けず、友達にも会えないことで孤立感を深めることがある。このような環境が、子どもたちが逃げ出したいと考える要因の一つとなっている。
全部が全部ではないが、一部にはこの様な劣悪な環境から、児童養護施設や一時保護所から逃げ出す子どもたちがいるのも事実だ。
優しい静香は同じ児童養護施設の、毎年クリスマス時期に顔を合わせるなじみの子が、1人また1人と消えることに強い憤りを感じていた。
恭介は静香から思いもよらない相談を受けた。それは静香の切実な訴えだった。
「施設の子供たちが虐待被害を受けて私に泣きながら訴えて来たの」
その事実を知った恭介はこれは使えると考えた。
「俺が子供たちを預かって話を聞いてやる。俺に任せな!」
こう言って研究所の地下室にある部屋で、子供たちを監禁したと言えば語弊があるが、暫く預かった。子供たちにすれば養護施設に居た頃よりは遥かに住み心地は良い。その中でも一番の魅力は食事が以前に比べて格段に良いという事だ。
更には勉強も見てもらえるし、テレビも自由に見れる。
こうして子供たちに研究中の薬を半月から1月程度服用させた。小さな子は逃げ出しても施設職員に捕まるが、15~18歳ぐらいの子は逃げ通すことが出来た。この様な年齢の子ばかりだったので臨床試験の後施設に帰したが、逃げ出して行方不明になった子供もいた。
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ある日のことだ。別荘で生活していた江梨香の姉亜里沙が亡くなった。
なんの日の目も見れずひっそりとこの世から去った。享年20歳だった。
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