冬の蝶

あのね!

第1話 静香

 

 神宮寺江梨香は裕福な家庭のお嬢様だが、どういう訳か想像だにしない悪夢にうなされる。


 どうしてこのような悪夢にうなされなければいけないのか?


「あなたのせいで私は人生を棒に振ったのさ。夢も希望もお前のせいで台無しだよ。全くーっ!お前なんか……お前なんか……死んでくれた方がマシだ!💢💢💢」


「何で?何で?そんな酷い事を言うの。江梨香はお利口さんしてるのに……わ~~~ん😭わ~~~ん😭わ~~~ん😭」


 そして…その悪夢の中には想像だにしない真実が隠されていた。子供たちが、場所はハッキリ分からないが、深夜こっそり集団で連れ出され2度と戻ってこないという恐ろしい夢なのだ。


 あの場所は一体どこだったのか?


 そこにはどんな真実が隠されているのか、皆目見当がつかない


 🥼💉👩‍⚕️


 東都大学付属病院脳神経外科の藤岡恭介はある深夜研究室で、時の経つのも忘れ研究に勤しんでいた。恭介は旅館を経営する両親の元に誕生したが、バブル崩壊後旅館は倒産。父は苦労が祟りすでに亡くなっている。このような理由から母を守りぬかなくてはと思う使命感から、どんなことをしても医者になるという目標を掲げ血のにじむ思いで頑張った。その結果成績優秀だった恭介は奨学金制度を利用して、日本最高峰東都大学医学部を優秀な成績で卒業できた。


 それと言うのも苦労続きの母を少しでも楽をさせてやりたくて、寝る間を惜しんで頑張ったので無事合格できたのだ。


 医者となった恭介は医学のことしか頭にない研究バカだったが、この時期にある女と出会う。


 苦労して医学部を卒業して大学病院脳神経外科の医局に勤務していた時だったが、深夜遅くまで研究室に缶詰め状態だった恭介は、眠気覚ましに休憩室で缶コーヒーを飲んで束の間の休憩をしていた。


 そこにやって来たのが、清掃員のアルバイトをしている19歳の調理師専門学校に通う静香だった。恭介は普段は看護師さんとも仕事以外では滅多と会話をしない生粋の研究バカで、医学の事にしか興味のない男だったが、どういう訳か、その日だけは、何とも殺伐とした深夜で人恋しくなり、ついつい話しかけた。


「君こんな深夜若いのに危険じゃないのかい?」

「いえ……他にもスタッフがおりますので大丈夫です」


 その時何気なく目が合った。その専門学生は非常に美しい女だった。身分的には天と地の差かもしれないが、恭介はそんなことなどお構いなしで、その女に今まで感じた事のない感情が沸き起こり、一回こっきりの出会いにしたくない感情が沸き起こってしまった。


「君もっと他に仕事があるんじゃないか?こんな深夜じゃなくても……」

「私専門学校に通っているのです。お金が必要なのです。あっ仕事があるので失礼します」

「チョット君!僕は深夜大体いるからね。また……会えるといいね」


 こんな事があり、あれ以来深夜幾度となく休憩室で僅かな時間を過ごした。お互いに同じ地獄を見た過去を持つ2人は話さなくても嗅覚で感じ取った。


 実は…静香は両親を交通事故で亡くし、施設で育った決して恵まれた人生ではなかった。その為深夜手当がつく高時給の深夜に、病院の清掃員として働いていたのだ。


(自分のようなものが、こんな優秀な大学病院のお医者様と結婚など夢のまた夢)とも思ったが、それでも…同じ境遇を恭介に感じることが出来て、一歩また一歩2人は距離を縮めて行った。


 だが、優秀な恭介はやがて教授のお眼鏡に叶い、逆玉に乗りお嬢様と結婚した。


 🥼💉👩‍⚕️


 東都大学付属病院脳神経外科エリート神宮寺恭介は婿養子となり、現在は48歳で既に教授となっていた。実は…脳神経外科の権威で病院長のお嬢様だった妻美琴と結婚して17歳の1人娘江梨香との3人家族。


 恭介は病院長のたっての希望で婿養子に入った幸運の持ち主だった。そして…娘江梨香は東京都偏差値最高峰の、私立高校に通う超優秀な医師を夢見るお嬢様。


 正しく絵に描いたようなブルジョア階級に身を置くセレブたちである。それなのに江梨香には恐ろしい影が忍び寄る。


「お母様期末テストの成績学年でベスト3に入りました。ねえベスト3に入ったらお母様一緒にデパートで、プレゼント買って下さるお約束でしょう?自然由来成分90%のディオールのリップグロス買って欲しいの。お願い!💖」


「よく頑張ったわね。都内最高峰の進学校のベスト3は大したものね。分かったわお休みに松島屋に行きましょう」


「わー嬉しい。お母さま大好き!💖💖💖」


 こんな幸せな時間も束の間。誰もが憧れるセレブ中のセレブ一家だったが、思わぬ悲劇が待ち構えていた。


 ある日の事だ。母美琴が突如心筋症であっけなくこの世を去った。悲観に暮れる一家だったが、いつまでも悲しみに暮れている訳にはいかない。


 このような悲劇が起こる前段階は、実は…この家庭にはじわりじわり忍び寄っていたのだ。


 そうなのだ。一見幸せを絵に描いたような家族にしか見えないが、江梨香にも過去に想像だにしない不運な出来事が起こっていた。


 そこには隠された深い人間ドラマが隠されていた。


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