第4話 火事から助けた黒猫
「気に入らないなら外で決着をつけようか」
「望むところだクソガキ! 殺してやるからな!」
う~ん、そのセリフって実際に人殺したことないことが言うことが多いんだよねえ。
吾郎たちは「またか」って顔をしている。
いや、絡んで来たのはこいつらの方で俺は何も悪くないって。
俺たちが店の外に出ると相手は相手もついて来る。
「いいか! 今なら土下座して謝れば許してやるぞ!」
「それはこっちのセリフだよ。お・に・い・さ・ま」
俺がわざとらしい口調で言うと相手の怒りは頂点に達したようだ。
「ふざんけんな! やっちまえ!」
俺は相手の人数を正確に数える。
相手は7人。しかも何か武術を習っている感じの奴はいない。
楽勝だ。
「たく、しょうがねえなぁ」
拓也がそう言って構える。
美由紀はいつものごとく既にどこかに姿を隠してる。
俺はリーダーらしき男のパンチを軽く避けると指で両目を突いてやる。
「ぎゃああああ!!!」
男は顔を押さえて蹲る。
そこをすかさず頭を狙って蹴りを入れる。
男はその衝撃で地面に倒れた。
他の連中も拓也たちに向かっていったが返り討ちにされている。
時間にして約3分で勝負はついた。
「これじゃあ、時間潰しにもならないな」
吾郎がつまらなそうに呟く。
サツが来ても面倒なので俺たちは美由紀と合流してその場を離れた。
次の休日。俺と美由紀は一緒に外出していた。
街で買い物して夕方に自宅に向かって歩いていた。
「今日もいっぱい買い物しちゃった」
「いくらなんでも買い過ぎじゃね?」
「女の子には必要な物が多いのよ」
美由紀はそう言って軽やかな足取りで俺の前を歩く。
へいへい、そうですか。
父さんの言ってた「女の子は何かとお金がかかるから」と言っていた言葉を思い出す。
父さんからは十分な生活費を貰っているのでこれくらいの買い物では俺たちの生活が苦しくなることはない。
俺は美由紀の荷物を持ちながら美由紀の後を歩いていたが突然美由紀が立ち止まる。
「マサくん!あれ見て!」
「うん?」
俺は美由紀の指差した方を見るとそこにはゴミ捨て場があった。
そしてそのゴミの一部から炎が上がっている。
「やべえ! 火事か! 美由紀、消防車を呼べ!」
「分かった!」
美由紀がすぐに119番通報をする。
俺は荷物を放り出しゴミ捨て場の火事に近付く。
まだ火の手はそれほど強くない。
そして俺はその時に鳴き声を聞いた。
「ニャー」
猫の鳴き声だ。
俺が火の方を見るとゴミ袋とゴミ袋の間に黒い子猫がいるのが確認できた。
「やべえ! 助けないと!」
俺はゴミ捨て場の隅に置いてあった毛布を火にかぶせて火を揉み消す。
幸い火はそれほど威力がなかったおかげで消し止められた。
俺は黒い子猫を助け出す。
「おい、大丈夫か?」
「ニャー」
黒猫は俺に返事をした。
「大丈夫!? マサくん」
美由紀が俺に近付いてきた。
「ああ。それよりこの黒猫が危うく火事で死ぬところだったぜ」
「まあ、可愛い子猫じゃない」
美由紀は俺から黒猫を受け取ると笑顔を浮かべる。
「よしよし、もう怖くないからね」
「ニャー」
「ねえ、この子猫うちで飼ってもいい?」
「え?ああ、別に猫ぐらいかまわないさ」
「良かった。じゃあ、貴方の名前は『クロ』よ。子猫ちゃん」
いや、黒猫だから「クロ」って安直し過ぎないか?
俺はそう思ったがその後に消防車やら警察やらが来て現場は騒然となった。
俺と美由紀は第一発見者だからいろいろ事情を聞かれて自宅に帰れたのは夜遅くなってからだった。
警察の話では放火の可能性が高いとのこと。
最近近所で放火事件を起こしている犯人に違いない。
まったく放火なんてクズ野郎だぜ。
幸いクロは怪我もしておらずコンビニで買ったキャットフードをおいしそうに食べている。
もう少しでクロは死ぬところだった。
この落とし前はつけてもらおうじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。