第28話 再会2 真那side

 時計の針が静かに進んでいく音が、病室の空気に滲む。


 外は静まり返り、まるでこの部屋だけが時間から切り離されているみたいだ……


 聞こえるのは、2人の心臓が鼓動する音だけ。


 何も言葉を交わさないまま、ただそっと寄り添っていた。


 少し乱れたシーツの感触、肩に落ちた髪、ゆっくりと落ちてくる呼吸。体は確かにここにあるのに、心だけが浮いているような感覚だった。


 春馬は何も言わず私を見つめながら、腰を屈めた。


 そっと手を伸ばし、頬にふれた指先は、すでに熱を帯びていた。


 「……真那」


 かすれた声で名前を呼ばれた瞬間、心が甘く震える。


 瞳がゆっくりと近づいて、


 春馬の指が顎を軽く支え、唇を離さないように、引き寄せる。


 その動きに迷いはなくて、私は吸い込まれるように彼に唇を委ねた。


 舌先がわずかに触れ合い、2人の感情と熱が溶け合う。


 呼吸が、喉の奥で絡まって……息の仕方を忘れたみたいに呼吸が浅くなる。


「……真那」


 春馬は、そっと触れるように優しく首の後ろに手を回し、その指先が髪を梳く。


 その仕草ひとつで、体温が一気に上昇した。


 両手をベッドの端に置いたまま、ただ春馬に身を任せて瞳を閉じた。


 呼吸の合間を縫うように何度も重ねられるキスに、思わず吐息が漏れる。


 「……春…馬」


 春馬は何も答えずに濡れた瞳で私を見つめ、もう一度強く抱き寄せられた。


 ベッドの縁に腰を落とし、私の体を沈めるように抱き締め……そのまま、再び唇を塞がれた。


 肩、首筋、耳の後ろにも……唇がふれる前から期待しているように反応する。


 「目が覚めるの、ずっと待ってた」


 耳元で囁かれた声が、全身を甘く震わせる。


 「私も……春馬にずっと会いたかった。何度も夢に見たの。こうやって、抱きしめられる瞬間の夢。」


 その言葉が合図だったみたいに、

春馬が私を更に強く抱きしめた。


 応えるようにシャツをぎゅっと握れば、春馬は切ない表情のまま、入院着のボタンを外した。


__パサッ。


 肩からずれて床に布が落ちる音がしたのと同時だった。


 春馬は鎖骨にちゅっとリップ音を立てながらキスを落とした。


 「……ッ」


 焦らすように、愛しむようにゆっくり何度も与えられるキスに、甘く痺れて声が微かに溢れる。


 春馬の頬に掌をあてて見つめ合えば、2人の視線は溶けて混ざり合った。


 ずっと抱き合っていたいのに、春馬は私から体を離し、ふわっと笑顔を見せた。


「真那、手を出して……」


 そう言って、コートのポケットから取り出されたのは、小さなリングケース。


 手のひらに乗せられたそれを見た瞬間、涙が溢れた。


 「真那……今度は俺が守るから、そばに居て。」


 唇に残る熱が消える前に、その言葉が胸に飛び込んで、私は嬉しさと驚きで一筋涙を溢した。


 (……うん)


 額を寄せて頷く私を、春馬は静かにベッドに沈めた。

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