第24話 目覚め 真那side

 まぶたが重かった。


 真っ白な世界は居心地がいいのに、それでも――目を開けなきゃ、って思った。


 うっすらと光が差し込んで、ぼんやりと見えるのは白い天井……無音に近い静けさの中、遠くで電子機器のかすかな音がしている。


 消毒液の匂い。冷たい空気。


 あ……ここ、病院。どうしてだっけ……


 誰かが、私の手を握っている。

その手はとてもあたたかいのに、震えていた。


誰……?


 ゆっくりと視線を動かすと、そこにいたのは――母だった。


 「……真那? 真那……?! 目が覚めたの!?よかっ……良かったやっと……」


 その声に、心がかすかに揺れた。


 まばたきを返した。それだけだったのに、母の顔が一気にくしゃっと崩れた。


 「……うそ……ほんとに……っ」

 涙が、ぽたぽたと私の手の甲に落ちた。


 ずっと堪えていた想いがあふれたような声だった。


 喜びと安堵、それに痛み。……全部混ざっているみたいだった。


 「待ってて。すぐ先生を呼ぶからね……」

 母は涙を拭う暇もなく、震える手でナースコールのボタンを探した。

 何度か押し損ねたあと、「ピッ」と短い電子音が部屋に響く。


 静けさが戻る。

 私は、ゆっくりと首を動かし、テーブルの上にあるカレンダーを見た。


 ……十二月?


 私、社長に告白して……優香さんが盗聴……。


 記憶が、靄に包まれている。

 時間の感覚が、つかめない。


 頭がじんわりと痛む。混乱と現実が入り混じって、目を開けているのがつらくて、そっとまぶたを閉じた。


 暗闇が戻ってくる。

 けれど、今度は恐ろしくなかった。

 自分の意思で閉じた世界。その中に、ほんのひとときだけ身を預けた。


 遠くで足音が近づく気配がする。

 でも私はもう、何も考えたくなかった。

 ただ、静かに――もう一度、眠るように目を閉じた。

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