ラブソングを君に~『願いを叶える』という最強の│祝福《力》を持っている宗教巫女の私、世界を旅して無理やり信者を獲得していきます!~

きつねのなにか

第一章  ――セスティナ歴423年、秋の月――

1.大地賛美教の祝福は、ダーイチ様の祝福を受けた人の願いを叶えること。そう、最強の祝福。最高の祝福なのだ。

 ――セスティナ歴423年、秋の月――


「はーい、皆さんおはようございまーす! 大地賛美教の祝福がやって参りましたよー! 祝福を受けたい人はいませんか!?」

「いないかコャ、いないかコャ!」


 私、ソフィー・ホフマン。今日も元気に村の広場で祝福を授ける人を募集している。相棒のきーつね族の動物もふりんと共にね。

 人は来ないけど。



「また来たのかよ、ねーちゃんとデカブツ。今時宗教なんて古いんだから無理だって」


「来ましたね、ミスターすばしっこ少年。祝福はともかく、具合の悪い人でも良いのです。そんな人見かけたらその足の素早さで教えてくださいよ。私が訪れて一気に直してやりますから! ちょいのちょいのちょいです!」


「はいはいわかったわかった。見つけたらまずは村の治癒師さんの所へ運ぶわ」


「そげなぁ、せっしょうなぁ」

「そげなぁコャ」

 こんな半袖半ズボンで丸刈りのミスターすばしっこ少年も、私の数少ない喋り相手です。

 自分で言うのもなんですが、知らない宗教の人間に近寄る方が変ですよ、まったく。はぁ……頑張ろう。


 人は祝福できなくても、腹は減る。腹はお金がないと満たされない。

 家から持ってきた品物を売りに出しますか。

 形見の品で魔道具で出来た、いっぱい入る、赤く凄いショルダーバックから今日取れたての農産品を取り出して――


「それでは今から朝取れ野菜と卵とお肉とかを販売しまーす。いらっしゃいませ」


 と宣言した瞬間にどわーっと人が押しかけてきましてね。争うように我先とといって販売品が消えていきます。


「よーし卵ゲット! お嬢ちゃんところの卵はうんまいんだよなあ」


「野菜はシャキシャキしていて美味しいしねえ。手に入れた野菜でサラダにするわ」


「つ、ついでに祝福を受けていきません……か……?」


 そっぽを向く村人さんたち。そうですかそうですか……。

 まあ、皆さんのお腹を満たせればそれで十分でもあります。施しは重要な教え。

 あっという間に品物はなくなってしまいました。まいどありっ。


「お仕事も片付けたし、朝食でも取りますかねー」


 赤く凄いショルダーバックから取り出したるは、すごい美味しいサンドイッチです。むふふ。

 いただきまーす、あ~――


「お、俺の朝食か、ありがとな」


 ――ん。

 ガチン

 いでえ! サンドイッチを噛みちぎるはずが歯と歯を打ち鳴らしてしまいました。


 ミスターすばしっこ少年、私が食べる直前にその速さでサンドイッチを盗みましたね。


「それは私のサンドイッチですぞ!」


「むしゃむしゃ、いやっ、シュクフクされているだけあって旨いなこれ。明日もよろしく」


「明日は来ませんよぉ! 村へ来るのは二日に一度です!」


「次は鶏肉でも入れてきてくれよ。アレも旨いんだよ」


「あれ”も”? 食べたことあるってことはどこかで盗んでますね!? この泥棒猫!」


 私に行動をさせないうちにミスターすばしっこ少年は去って行きました。むきー!


 まあ、いいか。それじゃあ、最後におばあさんのところに行って祝福を授けていきましょうかね。

 おばあさんは市場を離れた貧民街の方にあります。

 やることもないし着いてきた意味もないしと暇しているもふりんに乗ってレッツラゴー!


「ドンドンドン、おばーちゃーん。いらっしゃいますかー」


 大きい声と共にノックすると、中から「やっときたかい」という声が返ってきました。入りましょう。


「お邪魔しまーす。寝室にいるかな」


 ちょっと汚れているので拭き掃除をしながら寝室まで向かいます。


「ネイおばあちゃん、調子はいかがですか?」


「来たかい、ソフィー。今日もありがとねぇ」


 ネイおばあちゃんはベッドから起き上がろうとします。エルフ族のおばあちゃんです。


「そのままでいいですよ。今日もお薬と祝福を授けていきますからね」


「ありがたいねぇ。私が子供のころはこの村でもいろんな宗教の巫女様がきて祝福を授けてくれたもんなんだけどね、今じゃソフィーくらいになっちまったね」


「宗教や祝福が廃れているんでしょう? しょうがないですよ。こちらがお薬です。では祝福を開始しますね」


 薬をサイドテーブルに置き、おばあちゃんの横で跪き、おばあちゃんの手を取り目をつぶる。


「ダーイチ様ダーイチ様、このお方に祝福を。ダーイチ様ダーイチ様、このお方に祝福を」


 何度も念仏すると、おばあちゃんの頭の上がピカッと光り、光球のようなものを形作る。


「ダーイチ様ダーイチ様、この者に祝福を」


 おばあちゃんの頭の上にある光球がどんどん大きくなり、ついには炸裂する。


 炸裂した光が消えてなくなったあとには私とおばあちゃんがそこに残っているだけだった。


「うん、今回も『動きが活発になる祝福』が出来ましたよ」


「ありがとうねぇ。一人暮らしだから動けないと死に直結しちゃってねぇ」


 そういってサッとベッドから降りるとスタスタと歩き回り箱をガサゴソと漁っている。よしっ。


「今回は一年くらい持ちそうです。ただ、期間が短くなってきているので……」


「そうねぇ、そろそろお迎えかもしれないわねぇ。でも最後まで自立できるのはソフィーとダーイチ様のおかげなのよ?」


 そういってお礼を差し出してくるおばあちゃん。最後まで立っていたいというのが彼女の願いなのだ。

 祝福は神の力の具現化。ダーイチ様の力はそのものの願いを叶えること。


「いくらダーイチ様の祝福とはいえ、寿命までは操作できませんからね……。最後までしっかり、ですよ」


「うん、やっと家族と連絡がついてねぇ、最後の時間をともにしてくれそうなのよぉ。次来てもらうときは安楽のお願いかしらねぇ」


 そう言ってフフっと笑うおばあちゃん。縁起でもないよっ。


「おばあちゃん、ちょっと気持ちがへこんでませんか? 寿命までまだまだですよっ。エルフなんだし!」


「そうだねぇ、そういうことにしておこうかねぇ。それじゃ、今日はこの辺でだねぇ。今日もありがとうねぇ」


 おばあちゃんへの祝福が終わった後は、さっさともふりんに乗って家路へとつく。

 もふりんは体高2メートル50センチメートルくらいある超大型のきーつねなのだ。でかいだろっ。

 そこら辺のクマなんざ一撃である。ゴアラグマは簡便な。


 大地賛美教の祝福は、ダーイチ様の祝福を受けた人の願いを叶えること。そう、最強の祝福。最高の祝福なのだ。


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