8.
「また弟が迷惑掛けるかもっていう兼ねてになるんだけど、俺は3年の
「あ、僕は1年の
「日向君、1年だったのか。だからアイツすぐに分かったのか」
どうしたものか、と呟く先輩だった明星兄に、「いえ、お気になさらずに」と返した。
また迷惑掛ける行動を弟の方がしてくる可能性があると示唆されて、心の中でうんざりだとため息を吐いた。
高校に入って早々にこんなことに巻き込まれるなんて。
あの時、親切心で友達の付き添いをするんじゃなかった。
そうしなければ今頃、命の危険に脅かされることなく、少なからず青春を謳歌できたはずなのに。
「そういえばなんですけど、今日もいますけど、先輩どこか具合悪いんですか?」
「まぁ、うっすら目眩がするっぽいから念のため保健室に来たってところ」
「えっ、大丈夫なんですか?」
「体調が悪いのはいつものことだから、今はまだ大丈夫な方だと思う。俺よりも問題なのは、弟の陽輝の方だな」
「え、弟さん⋯⋯?」
「あ、兄貴っ! 今日もダメだったのか!」
日向の声がかき消されんばかりに思いきり扉を開けた陽輝が、そのままの勢いで明星先輩に抱きついた。
「人がいる前で抱きつくな」「こら、明星君。扉は静かに開けなさい」と同時に怒られていたが、当の本人は反省する気がなさそうな適当な謝罪を口にしていた。
「てかお前、また来たのか」
「だって兄貴のことが心配だったんだもん」
「俺の心配よりも自分の出席日数と成績の心配をしろ。あと日向君に謝れ」
「は、日向って誰⋯⋯って、あ! お前、あの時の⋯⋯! ──⋯⋯いっ!」
指差してきた陽輝の頭を押さえつけた明星先輩は、そのまま頭を下げた。
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