巫女なのに聖剣抜いちゃいました~御幣より重い物を持ったことがないのに~
紫月音湖*コミカライズ・電子書籍配信中
第1章 勇者に選ばれました!?
第1話 聖剣に選ばれし者
六畳一間の質素な室内に、ろうそくの明かりが揺れている。板張りの床に置かれた二つの座布団に向かい合って座るのは怯えた表情の女性と、白い狐面を付けたポニーテールの巫女だ。巫女が手にした
「悪霊退散!」
凜と響く巫女の声に重なって、この場に存在しないはずの男の呻き声がした。わずかに胸を押さえた女性の背後、そこにいるであろう悪霊めがけて、巫女が再度
「往生際が悪いわね。さっさと消えなさい!」
より強い口調で命令し、
「これで大丈夫。あなたに取り憑いていた悪霊は祓いました」
「……本当。体が軽くなってる!」
消えたろうそくに火を灯し、再び女性の前に腰を下ろした巫女は薄紫色の御守りを床にそっと置いた。
「体質的に憑かれやすいようなので御守りも用意しました。私が
「ことだま?」
「言葉が持つ力のことです。発した言葉通りに導く力があるので、こうなったらいいなって思うことは積極的に口に出して言ってみるといいですよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
女性に手渡した御守りには、
巫女である彼女の実家、
それでもこの神社が存続できているのは、とある界隈ではそれなりに名の知れた神社だからである。
それが神社の跡取り娘、
「はぁー。やっと終わった」
今日のお祓いの予約は、先ほどの女性で終わりだ。腕を上げて大きく伸びをすると、凝り固まった筋肉がほどよく伸びるのを感じる。
ここ最近はやたらと悪霊に憑かれる者が多く、神社を訪れる依頼人もいつもの倍くらいはあるだろうか。神社にとっては貴重な収入源のひとつではあるものの、こうも頻繁にお祓いが必要になる現状には少しだけ不安を覚えてしまう。
そんな
「さっさと石の状態を確認してお風呂入ろっと」
お祓いの際には必ず付ける白い狐面を外して、
なぜ御神体が二つあるのか、その理由を
「くらえ! イザナギレーザー!」
ふと、神社の裏手から少年の声が聞こえた。その声に合わせて「イザナミリフレクション!」と続く別の声もする。聞き覚えのある少年たちの声に、
「あーなーたーたーちー!」
赤い剣が
「げっ! ミコ姉」
「げ、じゃない。ここで遊んじゃダメだって何度も言ったでしょう?」
「そんなこと言ったって、アマテラッシャーの秘密基地は神社の地下なんだからしょうがないじゃん。それに俺たち、いま悪の組織ヤマタノオロチの幹部を倒しに行く途中だから邪魔すんなよな」
「ミコ姉。ヤマタノオロチの女幹部やって! 紙をこう……ぱぁーって飛ばすヤツ」
「だーめ。護符は遊びの道具じゃないの」
「ハイハイ。いいかげん、遊ぶのをやめて家に帰りなさい。もういい時間でしょ」
「ちぇっ。ミコ姉はノリが悪いんだよな~」
「ノリとかそういう問題じゃないの。そもそもここは関係者以外立ち入り禁止って札に書いてるでしょ。わかる? この石だって本当はとーっても危険なものなんだから、もう二度と近付いちゃダメよ!」
「あんまり口うるさいとモテないぞー!」
「だからいつまで経っても彼氏がいないんだね?」
「そういうのを生き遅れと言うらしいです」
「うるさーい!」
小生意気な少年三人に向かって叫ぶと、彼らは蜘蛛の子を散らすように走り去っていく。
「逃げろー!」
「あ、こら! 待ちなさいっ。次それ言ったら本気で怒るからね!」
「ミコ姉が怒っても全然怖くないもんね」
「それじゃ、またね! ミコ姉。彼氏できたら紹介してね」
「最悪、僕がミコ姉をお嫁にもらってあげても……」
みんな言いたい放題なのに、帰る時はしっかり
「余計な時間食ったわね。さっさと石を見て帰ろっと」
ようやく本来の目的を果たせると石の方へ目を向けた
石の側面に金色の剣が突き刺さっている。いや、物理的に剣が石に刺さることはないので、刃の一部がしめ縄に引っかかっているのだろう。
「ちょっと、剣忘れてるわよー!」
大声で叫べば、まだ声は届くかもしれない。そう思いながら金色の柄を握りしめた瞬間。
――ぬるん。
まるで板こんにゃくを切るような感触と共に、石の中から七色の剣身と――そしてその剣に心臓を貫かれた
「……」
人間、本当に驚いた時には思考が一瞬止まるらしい。石から現れた青年の胸には剣の刃が深々と突き刺さっている。その剣の柄を自分が握っていることを理解するまでに、
「ぎ……ぎゃああああっ! なっ、なん……なな、なぁぁぁぁっ!?」
「ここは……」
「ひゃっ! まだ生きてる!?」
むしろ生きてる方がありがたいのだが、心臓に剣を突き刺されたまま平然とされても何だか怖い。咄嗟に剣から手を離そうとしたが、
「ちょっ……ヤダ、何!? 離して!」
「やっと見つけた」
グイッと顔を近付けてきた青年の恐ろしくとんでもない美貌に思わず胸がキュンと鳴ったが、それとこれとは別である。心臓に剣を突き立てられても生きている時点で人ではないし、何より銀髪に金色の目をした人間なんてファンタジーの世界でしか見たことがない。
「離してったら! イケメンだからってやっていいことと悪いことがあるわよ!」
「イケ、メ……? 何を言っている。そんなことよりお前、これを」
「悪霊退散! たいさーん!」
掴まれていない方の左手に
「何だ、これは……ぶふっ!」
「あれ、効かない? 悪霊じゃないのかしら……。悪霊退散だってば!」
霊力を込めて
「おま……いい加減に、ぶへっ! あぁ、くそっ」
容赦なく顔を打ち付ける
「邪魔だ!」
ブチィッと音を立てて、
「ヘイちゃんに何するのよ!」
ヘイちゃん――
それを無碍に扱われては、いくらイケメンとて許せるものではない。怒りのあまり、
その拍子に青年の胸から金色の剣がスポンと抜ける。パァァッと辺り一面がまぶしい光に包まれるなか、目を閉じた
「やはり勇者だったか」
「え……なに?」
「聖剣に選ばれし者。お前は唯一、聖剣エクスカリバーを扱える勇者だ」
「はぁぁ!?」
あまりの電波発言に、
向かい合う
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