よろず屋シキオン

シプリン

第1話 CCクリソベリル

 とある星に降り立つ、二つの影。

 彼らの目の前の景色は、一部が渦を巻くようにして歪んでいた。

 その中心から漂う陰鬱な空気が、手招きでもしているかのように映る。


「シーク、今日はここだよ」


 影の片方は、もう片方に声をかけた。

 つるつるの丸い頭部に寸胴な体。いわゆる埴輪の姿をしている。


「うへえ、いつにも増して禍々しい時空の歪みだな…。もっと綺麗な空間の任務が良いんだけど」


 シークと呼ばれたほうは、げんなりとした様子だ。

 なびく金髪に左右非対称の瞳の色。いわゆる人間の姿をしている。


「清らかな時空は基本的に、よそ様をさらってエネルギー奪ったりとかしないから」

「あるべき姿ってことね。じゃあ行くよ、クレイ」


 クレイと呼ばれた埴輪はシークに頷き、二人は躊躇いもなく歪む景色の渦へと飛び込んだ。

 すると風景はパッと変わり、暗く淀んだ雰囲気の大きな館が現れる。


「…絶対住みたくないわ、この家。ていうか今回は、特に意思のあるモノはいないのか」

「そうだね、残滓が漂ってるだけみたいだ。でもだいぶ力が強いから、早く救出して出よう」


 嫌そうな言葉とは裏腹に落ち着いている二人は、またしても平然と館に入っていく。

 そして進んだ先で、倒れている生命体を発見した。


「こんにちはー、よろず屋『シキオン』のCCクリソベリルです。今、回復しますね」


 どこからともなくエネルギーを吸収され消耗している生命体に、シークが持参していた札を二つ貼った。一つは回復、もう一つは防御の力が付与されている。製作者はシークの仲間たち。

 札はすぐに消えていき、同時に生命体が目を開けた。


「大丈夫ですか?」

「…は、はい。ありがとうございます。あの、ここは…」

「ここは、貴方の住む星からとっても遠い所です。でもすぐに帰れますから、安心して下さい」


 クレイが優しく応えているうちに、シークはまた一つ札を取り出す。


「神隠しされちゃって災難でしたね。ゆっくり休んで下さい。おやすみ」


 まだ不安そうな生命体に微笑んでシークが新たな札を貼ると、生命体はすうっと眠りについた。




「はー、清々しい…!! 真っ当な空間最高」


 不運にも時空の歪みに招かれてしまった生命体を本来の場所に送り届け、シークは伸びをする。


「お疲れ様、シーク。時空関連の任務は単独のストーンアテナだと危ないのに、君の異種能力は凄いよね」

「んふふ。『異なるモノ』に関することなら何でもござれ、時空間移動なんて楽勝よ。…まあ、程度にもよるけどさ」


 シークの明るかった言葉は、最後だけ小さく陰った。

 その理由は、シークと仲間のアレキサンドライトを知っていれば明白なもの。

 勿論、クレイも理解している。


「大丈夫だよ、自信持って。さ、早く戻って美味しい物でも食べよう!」


 クレイが大切な相棒の背中を押すと、シークは笑って頷いた。



 ―おわり―


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