魔術構文論入門

常陸 花折

授業シラバス・課題内容及び評価基準

【到達目標】

1. 呪文を文法的に解析できる。

2. 魔法陣・詠唱文の構造を構文木として表現できる。

3. 構文エラー(矛盾命令・無限詠唱・反射式)の検出原理を説明できる。

4. 「術式設計基礎」への理解の足場を築く。


【授業計画】(全15回)

第1回 導入:魔術構文とは何か

 呪文を「文」として見る視点の導入。

 自然言語・人工言語・詠唱言語の比較。

 魔法陣の構文木的構造を例に「言語=力の演算」という観点を提示。


第2回 詠唱の最小単位:トークンとマナ素

 詠唱語の単語分解と、マナ単位(mana-token)の概念。

 例:「ルクス(光)」=光属性のベースマナ。

 構文上のトークン境界を解析する演習。


第3回 呪文文法Ⅰ:命令句・条件句・詠唱句

 呪文構造を「命令(Do)」「条件(If)」「詠唱(Chant)」に分解し、構文ルールを学ぶ。

 例:「IF mind==clear THEN CAST light()」。


第4回 呪文文法Ⅱ:句構造と意味論

 複文・入れ子構造・参照文の扱い。

 例:「光よ、闇を拒め(LET light:repel darkness)」

 意味論(セマンティクス)と演算論の交差点を学ぶ。


第5回 魔法陣の構文解析Ⅰ:円環構造と節分割

 魔法陣の幾何構造=構文的構造であることを説明。

 各円・符号・角度を「文法記号」として読む。


第6回 魔法陣の構文解析Ⅱ:再帰構文と陣内呼び出し

 再帰式(自己参照)魔方陣の構造。

 “陣が陣を呼ぶ”場合の安定化条件。


第7回 中間演習:呪文構文のパース(構文木の提出課題)

 課題:与えられた詠唱文を構文木(syntax tree)として図示。

 中間レポート提出。


第8回 詠唱演算と時間軸

 詠唱速度・間・韻律と演算順序の関係。

 時間要素を含む演算(delayed casting)の理論。


第9回 構文エラーの発生原理Ⅰ:反復と矛盾

 暴走詠唱の解析。無限再帰構文の危険性。

 例:自己否定文型(「我、我を消去せよ」)。


第10回 構文エラーの発生原理Ⅱ:符号反転と干渉

 他者詠唱や多重陣との干渉。

 論理矛盾による「詠唱衝突」現象をケース分析。


第11回 構文最適化:詠唱簡略化とマナ効率

 詠唱式のリファクタリング。

 同一効果を持つより短い文への変換練習。

 例:「Lumen manifest」→「Lux()」。


第12回 詠唱言語と思考言語

 詠唱時に生じる「内語(Inner Speech)」の構文的意義。

 思考をコード化する際の注意点。


第13回 構文翻訳演習Ⅰ:他領域言語への変換

 惑星別魔術言語(例:マルス方言・ルナ古語)への翻訳。

 構文ルールの違いを比較。


第14回 構文翻訳演習Ⅱ:現世言語(プログラムコード)との比較

 JavaやPythonに類似した呪文の構文例を扱う。

 術式=関数、詠唱=宣言としての理解を深める。


第15回 総括:構文は力である

 魔術を「言語による世界記述」として総括。

 期末課題説明(構文翻訳レポート)。


【課題例】

第3回:詠唱文を句構造に分解し、意味対応を記述(400字)

第7回:構文木図の提出(PDF)

第13回:他領域言語への翻訳(詠唱3文)

第15回:期末レポート「詠唱構文の翻訳理論について」(2000字)


【参考文献】

シコラクス・マギサ『言語としての魔法:構文と詠唱の統合理論』(ユピテル書房)

フィロ・メルクリウス『通信と呪文:意志の伝達史』

A. Lunae “Formal Grammar of Arcane Language” (Stellaris Univ. Press)

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