1章
1.あなたの事を知りたい
丁寧に挨拶をしてお父様に続いて入ってきたアクアスティード様。ベッドの隣に椅子を二脚置いてそこに座った2人を私は黙って見ているしか出来なかった。
「メルリア様?体調はどうですか?」
「え、えぇ。先程目が覚めたばかりで……わざわざありがとうございます。アクアスティード様」
そう答えると、彼は良かったと微笑んだ。その笑顔に少し胸がきゅっとなった。なんでだろう。
「アクア、とお呼びください。僕もメルとお呼びしたいのですが……よろしいでしょうか?」
「え?えっと……構いませんわ……?」
「ありがとうございます。メル」
しかし、急にアクアと呼べと言われても………まだそんな勇気はない。ぼーっとしていると、すぐ目の前にアクアスティード様……いや、アクア様の顔が近づいていた。
「あ、アクア様……?近いですわ」
「すみません。顔色を伺っていたので。もう大丈夫そうですね」
そう言って椅子に座り直すアクア様。その顔は、心底安心したといった感じだ。そんなに私の事が心配だったのかな……。
しばらくの沈黙が続き、口を開いたのはアクア様だった。それは思ってもみなかった話で。私は再び沈黙してしまった。
「今度婚約者お披露目パーティがあるんです。もちろん、一緒に出席してもらえますよね?」
「………もちろんですわ。よろしくお願いいたしますね」
少し、彼の事を知る必要があるのかもしれない。
「あの、アクア様。お時間は大丈夫ですか?」
「そうですね……まだ大丈夫かと。どうかしましたか?」
「もう少し、お話しませんか?アクア様がよろしければですが」
そう言うとアクア様は暫しの沈黙の後、笑顔でいいですよ、と答えてくれた。これでもう少し彼の事知れるかも。
「実は………アクア様の事を知りたくて」
「僕の事を?……嬉しいです。興味を持ってくださって」
そういう訳じゃないんだけどな。まぁ、そういう事にしておこう。
「じゃあまず……お好きな食べ物は何ですか?」
「すごい単純だね……うーん……キッシュかな」
それから私はアクア様にいろんな質問をした。アクア様も嫌な顔せず答えてくれてありがたかった。
「そろそろ帰る時間ですね。また来ますね、メル」
「あっはい。お気をつけて」
そう言ってアクア様は帰って行った。
しかし、婚約者お披露目パーティか……。緊張するな。
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