ミ◯◯◯ジ様について、情報求む

広野鈴

1日目

【注意】この物語はフィクションであり、実在する人物、団体、場所(秩父山間部など)、歴史上の事実、および特定の宗教・信仰(ミシャグジ信仰など)とは一切関係ありません。作中に登場する地名や伝承は、すべて架空のものです。



調査1日目:2025年10月20日


掲示板スレッド:秩父山間部連続神隠し事案を追う(Part 1)


タイトル: ミ◯◯◯ジ様について、情報求む

投稿者:Kishimoto_Research 投稿日時: 2025年10月20日 00:01


カテゴリー: 奇譚・神隠し事案(秩父山間部)


⚠️ 緊急調査:秩父山間部 連続神隠し事案に関する情報提供のお願い


 現在、私設調査チームにて、埼玉県秩父山間部の特定地域で連続的な神隠し事案が発生している件について、調査を進めています。この現象は、この地域の土着信仰と古い時代の記録が複雑に絡み合い、何らかの仕掛けによって引き起こされていると推測されます。


 特に、現場周辺で頻繁に報告される、「ミ◯◯◯ジ」という音、およびそれにまつわる伝承について、広く情報提供を求めます。


1.現象の概要:神隠しと記録の交錯

失踪者は、山に入る際、「ミ◯◯◯ジ様が呼んでいる」や「結界の向こう」といった類いの言葉を口にするケースが多く確認されています。この現象は、この地に伝わる伝承による此世と隔離の境界の存在を示唆しています。


失踪者の特徴: 行方不明者は、山中で発見されることなく、物理的に存在が消失しています。


GPSの異常(資料A): 現場付近の古い峠道では、現代のGPSデータが一時的に八〇〇年近く前の測量データと一致するという異常な「記録の交錯」が観測されました。


神隠しのメカニズム: 未判明です。


2.探偵チームからのメッセージ

 皆様の情報が、この現象の真実を解明し、取り込まれた人々の痕跡を追う鍵となります。どんなに些細な情報でも構いません。ご協力をお願いいたします。


情報提供先: 本ウェブサイトのフォーム、または [メールアドレス] まで。



 ◇



コメント欄 (計 6件)


No. 1. ユーザー名: 名無しの山好き 投稿日時: 2025年10月20日 00:05

コメント本文: ミ◯◯◯ジって、どうせミシャグジ様でしょ。あの山は昔から「祟りの御作(みさく)」って呼ばれてるじゃん。生贄を捧げないと土地が荒れるって。それより、八〇〇年前の測量データって何? GPSがおかしくなったとして、時代がおかしいってどういうこと?


No. 2. ユーザー名: 地元のお年寄り 投稿日時: 2025年10月20日 00:18

コメント本文: ミシャグチ様って聞いたよ。うちのじいさまも、昔、山で「古い装束の光」を見たって言ってた。あれは平家の落武者の怨霊だって。祟り神じゃなくて、怨霊が人を連れ去ってるんだってさ。「特定の古い装飾品」を持って山に入ると危ないんだって。


No. 3. ユーザー名: Kishimoto_Research 投稿日時: 2025年10月20日 00:45

コメント本文: >>1, 2 情報提供ありがとうございます。「ミシャグジ」の伝承は承知していますが、GPSの異常が「武家・落人の痕跡」が残る八〇〇年前の時代と一致することが、私たちにとっても不可解な点です。装束の光についても、重要な情報として記録します。「特定の古い装飾品」に関する情報を提供頂けますと助かります。(岸本)


No. 4. ユーザー名: 秩父在住 投稿日時: 2025年10月20日 01:03

コメント本文: >>Kishimoto_Research 「特定の古い装飾品」って、失踪者が持ってた勾玉(まがたま)のネックレスのことですか?  失踪者の一人は俺の恋人です。確か、彼女の先祖から伝わる「悲恋の姫」の形見で、彼女がその姫の悲劇を解き明かそうとしていました。……警察はただの遺留品だって。もう警察は動かない。俺は勾玉を持ってます。これが鍵だったんですね。警察は頼れない。もう、俺一人でも彼女が消えた峠道を探すしかないと思っています。


No. 5. ユーザー名: 峠道の住人 投稿日時: 2025年10月20日 01:21

コメント本文: ミ◯◯◯ジじゃなくて、ミサカジ(御坂の神)じゃないか? 峠道の神様で、境界を司るって言われてた。あの山は『現世と異界の境』が薄いって話だ。神隠しは、境目がズレたせいで起きてるって聞いたことがある。怨霊の祟りとかじゃなくて、土地の力が原因だよ。


No. 6. ユーザー名: Kishimoto_Research 投稿日時: 2025年10月20日 01:40

コメント本文: >>4 秩父在住様 単独行動は思いとどまってください。あなたの情報は、我々が追っている八〇〇年前の記録と遺留品が結びつく、極めて重要な鍵です。我々はプロの調査チームです。あなたの安全を最優先した上で、情報交換を希望します。我々からメールアドレスへ連絡しますので、現場へは行かず、安全な場所で待機してください。(岸本)



 ◇



資料:郷土資料(ミシャグジ信仰について)

郷土史家提供(日付不明)


【ミシャグジ信仰の概略と御作(みさく)の習俗】


 ミシャグジ(御左口、御社宮司)は、日本中央部に広く分布する土着の神であり、特に諏訪信仰と結びついて語られることが多い。その特性は極めて多岐にわたるが、秩父山間部においては以下の点が強調される。


 一. 土地神としての側面: 土地の境界、すなわち「ここから先は神の領域」という区切りを定める性格を持つ。そのため、しばしば峠や街道の入り口に祠が設けられた。


 二. 祟り神、あるいは荒ぶる神としての側面: 豊かな実りをもたらす一方、生贄や供物を求める習俗が伴った。「御作(みさく)」とは、神に捧げる供物、またはその行事そのものを指し、時代が下ると「人身御供」の伝承へと変化していった。


 三. 異界との境界: ミシャグジが司る境界は、単なる物理的な区切りではなく、「常世(とこよ)」「隠り世(かくりよ)」といった異界との接点であるとも信じられた。神隠しは、この神の怒りによって、領域の境目から「向こう側」へ連れ去られる現象として恐れられてきた。


 四. 性的な側面と再生の神: ミシャグジ信仰には、蛇や石棒(男根)を象徴とする側面があり、生命力や繁殖力、そして大地や農作物の再生といった、性的な要素を含む豊穣信仰とも強く結びつく。神社の境内には、これら性器を模した石や木が置かれることも少なくない。


 五. 現代に残る「境界の更新」儀式: この信仰が色濃く残る諏訪地域では、巨大な木を山から切り出し、人力で社殿の四隅に建てる「御柱祭」が行われる。これは、神域の柱を新しく立て直すことで、神の領域の結界(境界)を更新し、荒ぶる神の力を鎮めるための重要な儀式と解釈される。かつてはこの祭に付随して、神への供物として鹿の頭を捧げる「御頭祭(おんとうさい)」が行われていた。

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