未経験の私が幼馴染の姉から告白された件

甘観あかり

プロローグ

「安心して! 今日から八ツ羽(やつは)を絶対に幸せにしてみせるから!」


 え、なに?


 一体何がおきてるの......?


 遠い昔からの幼馴染である、千鶴(ちづる)からの一言に、思わず固まる。


「......」

「あれれ? 聞こえなかった? 今日から八ツ羽を絶対に幸せにしてみせるから!」

「いや、聞こえてるから」

「ふむ、じゃあなんで固まってるの?」

「いや......」


 口に運ぼうとしていたケーキを一旦置いて、

私、京坂八ツ羽(きょうさかやつは)は何が起きてるのか、現状確認をするべく千鶴に質問する。何かの取り調べみたいに。


「それって友人として......だよね?」

「恋人として」

「今日ってエイプリルフール?」

「愛しきバレンタインデーだね(ニッコリ)」

「なんでここに呼び出したの?」

「告白のために決まってるじゃん」


 うわぁぁぁぁああああああっっ!!!!!


「あ、ちょっと、八ツ羽! どこいくの!?」


 私は疾風怒濤の勢いで、ピンキーな店内を飛び出した。


「なんだ!? 何が起きてるんだっ!?」


 放課後、いきなり幼馴染から呼び出されたと思ったら、まさかの告白−−−!?


 しかも本気〈マジ〉の顔してたし!?


 初めての告白が、同姓年上幼馴染からって......


 ウソウソウソウソウソッッッッッ!?!?


「そんなの嫌ぁぁぁああっっ!!!」


 確かに千鶴は一人っ子の私からすれば、姉のような存在で、年も一個上というだけで、好きか嫌いかと言えばもちろん好きだし、困ったときは頼りになるし......。

 で、でもさっきのあれは間違いなく、そう言う意味での好きとかじゃないよね!?

 間違いなく、ゆ、ゆゆゆ、百合ていうやつ......?

 漫画とかアニメで見たことある気がけど!


「う、嘘でしょ!?」


 歩道橋の上で立ち止まり、息を整える。

 さっきから汗が止まらない。

 走ったせいか、それとも−−−。


「いきなり逃げなくてもいいじゃない、八ツ羽」

「ひいぃぃっっ!!!」


 自分を落ち着かせる間も無く、すぐそこに千鶴がいた。


「まったく、食い逃げは良くないよ?」


 誰のせいで逃げ出したと思ってるんだ、誰のせいでっ−−−。


「...って、ちょ、千鶴!?ん"っ−−−!?」


 手すりに追い詰められ退路を塞がれる。

 下には私たちの雰囲気など意にも介さないように車両が行き来していた。


「確かに私は君より年上だし、時には冷静で時には頼れるお姉さんみたいな感じでいたい。でも、真剣な告白に無言で逃げられると、私だって傷つくんだぞ?」


「ちょ、や、やめてっ、千鶴!」


 目の前には同じ女子高生とは思えない、淡麗で整った顔が近づいてくる。


 お互いの息が触れ合い、ちょっと......いや、かなり気まづい。


 余裕をかいていられる状況も雰囲気も、どこにもなかった。

 抑えられて身動きもとれず、ゆっくり近づく柔らかそうな千鶴の唇に怯えるしかなかった。

 く、くそっ!

 ここで終わるのか、私の初めてが......千鶴に......。


「私の学園生活どうなるのよぉぉぉおおっっ!!!!」


 行き場の無い力は、全てそんなどうしようもない叫びとなり夜空に消えていった。


 だがこの時の私は知るゆえもなかった。

 千鶴の恋は、仮初と欺瞞に満ちていたことを。

 だってしょうがないじゃん!


 私にだって好きな男の子がいるんだからっ!!

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