俺は世界を救う

@suke_32

第1話 新しい世界の始まり

中学に入学してまだ三ヶ月。村上にゃんま、川上ゆうと、****本田アレックス**の三人の日常は、その日、一瞬でぶっ壊された。


いつも通り、放課後の誰もいない旧校舎裏。古びた倉庫の陰で、俺、村上にゃんま(パワータイプ)、川上ゆうと(創造タイプ)、本田アレックス(思考タイプ)の三人は、スマホゲームのイベント周回に勤しんでいた。


「くっそ、このボス硬すぎだろ! にゃんま、お前マジで頼むから回復使えって!」 川上ゆうとがスマホ画面を睨みつけながら叫ぶ。 「うるせーな、MPがねぇんだよ! そもそもユウトの作った武器がクソ弱いんだろ!」 にゃんまは苛立ちながら、スマホのバッテリー残量を示す赤い点滅に舌打ちをした。


その時、地面が、妙な音を立てて微かに震えた。


「地震か?」 本田アレックスが、いつも冷静な声で言った。彼はスマホから目を離さず、脳内で地震速報と震度をシミュレーションしている風だった。


「いや、違う」 ゆうとが立ち上がる。彼の視線は、倉庫の壁に空いた小さなひび割れに釘付けになっていた。ひび割れは、内側から圧力をかけられたように、パキッ、パキッと音を立てて縦に伸びていく。


次の瞬間、倉庫の壁が、人間一人分ほどの大きさで、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。中から飛び出してきたのは、光るワイヤーのようなものが絡みついた、奇妙な金属製の箱だ。それは、まるでSF映画の小道具のような、ありえない物体だった。


箱は不規則に回転しながら、俺たち三人の頭上を通り過ぎ、校舎の古い屋根に激突した。 キィン!という、耳をつんざくような甲高い金属音が響き渡ると同時に、箱から青白い光の粒が、まるでシャワーのように降り注いできた。


「うわっ!」 ゆうとが顔を庇う。俺(にゃんま)も反射的に腕で顔を覆った。粒子は、皮膚に触れた瞬間、凍るような冷たさと、次の瞬間に内側から燃え上がるような熱さを同時に感じさせた。


アレックスは目を見開いたまま、動かない。彼の瞳には、降り注ぐ光の粒一つ一つが、スローモーションのように映っているのが分かった。


そして、光が消えた後、静寂が訪れる。


「……何、今の?」 ゆうとが震える声で尋ねた。


誰も答えられなかった。ただ、体の奥底に、**今までなかった”何か”**が宿ったことだけは、三人全員が理解していた。


「な、なんか、体が……すげぇ軽い……」 にゃんまは立ち上がり、思わず思い切り拳を握りしめた。握る力は、まるで、野球部のやつが使う重いバットを、紙切れのように握りつぶせるんじゃないかと思うほどだ。


その時、ゆうとが震える指で、先ほど金属箱が当たった屋根を指差した。 「俺、今、何かが頭の中に浮かんだ……」 ゆうとの指先から、微かに緑色の光が放たれたかと思うと、屋根の穴の周りに、光でできた小さなドローンが形を成して、ふわりと浮かび上がった。


そして、アレックスが静かに口を開いた。 「……待って。今の光の成分解析。それに、この状況から考えられる最悪のパターン、そしてあの箱の正体。全部、一瞬で分かった」 彼の表情は一切変わらないが、その目には、普段の何十倍もの情報処理速度が宿っているのが見て取れた。


「え……嘘だろ?」


俺たちのゲームは、もう終わった。そして、新しい何かが、今、始まったのだ。

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