第40話
どこからどうやって入ったのか、セレスティーンにはまったくわからない。彼女は紫の髪を長く垂らしていて、古風なドレスを身に纏っている。
「お探し申し上げました」
「良かった、母上が来てくれた」
彼女の声に、男の子はほっとしてそう言った。
「
「いいえ、大丈夫です」
大仰な言い方と迫力に気後れしながらなんとか答える。
「俺、今日は帰るね」
「迎えが来てくれたのよね。良かったわ」
「じゃが、このままではちと不都合があってな。記憶を消させてもらうぞ」
「ダメだよ、母上!」
彼が止めるのも聞かず、女性は軽く腕を振る。
きらきらした霧が降ってきて、綺麗だ、と思ったとたんにセレスティーンは崩れるように眠りに落ちた。
翌朝起きたセレスティーンは、男の子のことを覚えておらず、屋敷の誰も彼もが男の子のことを忘れていた。
***
「思い出した……あの夜に、男の子を……だけど、年齢が」
セレスティーンは目の前の青年を見る。あのとき、男の子は五歳か六歳かその程度に見えた。今目の前にいる彼は二十代半ばのように見える。
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