第35話

「皇子殿下の婚約と和平に万歳を!」

 国王が叫ぶ。

「婚約万歳! 和平万歳!」

「アシュディウム万歳! サンレード万歳!」

 人々が声を上げ、会場にはまた音楽と人々の笑いさざめく声が満ちた。






 夜会は夜明け近くまで行われた。

 セレスティーンとアーロンはバルコニーに出て朝の気配を携えた夜空を眺める。


「疲れてない?」

 アーロンに尋ねられ、セレスティーンは頷く。


「少し疲れたかな」

「でももうすぐ終わりだから。夜が明ける頃には扉が閉まる。その前に俺は君を連れてあちらに帰る」


「急すぎるわ」

「前から言っておいたのに。結婚したいと言ったら、君も喜んでくれた」

「だって、夢だと思っていたんだもの」

 セレスティーンが首をすくめると、ふふ、とアーロンは笑った。


「つまり、夢の中の答えが君の本心だね?」

 セレスティーンは照れてうつむいた。

「だけど、どうして私なの?」

「覚えてない……よね」

 セレスティーンが頷くと、アーロンは苦笑して話し始めた。

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