第17話

「あんた、どこからそれを盗んだの!?」

「盗んでなんかいません!」


「あんたなんかがそんな上等なドレスを持ってるわけないじゃない!」

「これは……借りたんです」


「誰から借りたっていうのよ。あんたに貴族の知り合いなんていないでしょ!」

 ふたりから次々と責められ、セレスティーンは言葉に窮した。


 見送りにきたタリアーナはおろおろと立ち尽くす。女主人であるエマニーズ、お嬢様であるティアリスに反論するなど、彼女にはできない。


「こんなもの!」

 ティアリスがドレスの袖をひっぱる。


「やめてください!」

「あんたには不釣り合いよ!」

 袖がびりっと破れ、とれかかる。


「せっかく私がドレスを買ってやったというのに!」

 エマニーズが腰のリボンを引っ張ると、ほどけて床に落ちた。それを彼女は踏みにじる。


「この流行のレース! 私にこそふさわしいのに!」

 レースをひっぱられ、繊細なそれは悲鳴のように音を立てて裂けた。


「やめて……やめてください!」

 ドレスはもはやぼろきれと化し、セレスティーンの目には涙が浮かんだ。

 せっかく彼が用意してくれたのに。

 綺麗なドレスで彼に会えると思ったのに。

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