第6話

 朝食の準備ができたら食堂へ運ぶのだが、そこで給仕をするのはセレスティーンの仕事だった。指名したのはエマニーズで、いじめるためにそうしたのだ。


 ワゴンに人数分のパンを載せて運び、トングで父、エマニーズ、ティアリスの皿に載せる。


「遅いわよ、グズ」

「申し訳ございません」

 セレスティーンは素直にティアリスに謝る。難癖をつけていじめたいだけだから、何をどう対策しても意味がない。


「まったく、家に置いてやってるだけでも感謝してほしいものだわ」

「ありがとうございます」

 セレスティーンはエマニーズに頭を下げた。


 父は今日もなにも言わない。いじめないだけましだ、とセレスティーンはいつものように自分に言い聞かせる。


「明日の夜会にはセレスティーンを連れて来るようにと下命をたまわった」

 突然のマルセルムの言葉に、セレスティーンは息を呑んだ。


 今まで一度も夜会に参加させてもらったことはない。しつけのなってない娘は家の恥だとエマニーズに言われ、いつもセレスティーンは置いて行かれた。


「陛下主催の夜会に? なぜ?」

 エマニーズが不快そうに顔をしかめる。


「知らんよ、陛下の直々のお召しだ。行かせないわけにはいくまい」

 マルセルムは無表情に答える。

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