​第8章:絶対演算の法則 — ロジックソルバーの結論  第31話:絶対演算と非合理な結論

1. 絶対演算の法則の提示

​ 「高層の空(スカイ・ハイ)」の演算室。零と重藤は、灰月 凱が展開する絶対演算の法則に包まれていた。室内のホログラムは、零たちの行動によって生じた未来の予測シミュレーションを無数に映し出していた。

​灰月 凱は感情を排した冷徹さで言葉をならべる。

「金城零。貴様の非効率な愛着は、欲望の法則を破壊し、秩序の法則を停止させた。その結果、この街のシステム全体に、予測不能なノイズが拡散している。」

​灰月は、ホログラムで最悪の未来予測を投影した。それは、零たちの非合理なロジックが特異点として暴走し、新神楽シティが無秩序な崩壊に至る様だった。

2. 非合理な未来の脅威

​ 灰月 凱は、自身の絶対演算が導き出した**「最も効率的な未来」を提示する。その未来では、欲望も秩序**も安定し、ノイズは存在しない。

「私の演算によれば、貴様らの非合理な愛着は、最終的に崩壊しか生まない。システムにとって最も効率的なのは、貴様たちのノイズを排除し、初期ロジックに回帰することだ。」

​灰月は、零と重藤の存在価値を、自身の絶対演算の**結論**に従って断罪する。

3. 絶対結論:「望の排除」

​ そして、灰月は絶対演算が導き出した結論を、零に突きつけた。

​灰月 凱は断言する。

「貴様自身の換金システムのプロトコルに従えば、望の存在は演算を無限に消費する致命的なエラーだ。絶対演算の結論は一つ。システムの効率を保つため、ゼロ・レートという非合理な定数は、排除されなければならない。」

​ホログラムの未来予測が収束し、最終的に**「望の存在の消去」**という結論が、巨大な文字で浮かび上がった。

「貴様が愛着を定数とした時点で、貴様は支配のロジックに組み込まれた。支配からの解放を望むなら、その愛着を演算に捧げよ。」


​4. 零の「演算できないもの」の提示

​ 零は、望の排除という絶対演算の結論に対し、自らの換金システムの逆ロジックをもって対峙した。

​零の口調は力強く、感情を込めて言葉を発した。

「支配の法則が全てを演算しようとした。欲望も、秩序も、そして未来も。だが、貴様が演算できなかったものこそが、俺たちの真のロジックだ。」

​零は、自身の感情換金能力を演算外で起動。望への愛着を、「いかなるレートも付かないが、いかなる力も破壊できない定数」として、灰月の絶対演算に強制的に逆流させた。

(愛着とは、効率性から生まれたものではない。それは、演算の外部で、孤独に確立されたものだ。演算できないものを、演算の結論に組み込むことはできない!)

5. 重藤の物理的な対抗

​ 零の演算外ロジックが灰月の絶対演算のシステムにノイズを流し込む中、重藤が動いた。重藤は、灰月のロジックが持つ物理的な定数、すなわち演算室そのものを狙う。

​重藤の怒りはいつだって行動を伴うものだった。

「非効率な愛着は、支配を拒否する重さだ! お前の計算の外にある重みを思い知れ!」

​重藤は、猫の固定質量を最大限に増幅させ、演算室の構造体に徴収能力を発動。絶対演算が支配する物理的な場所そのものを、「非効率な重さ」で物理的に破壊しようと試みた。

6. 演算の危機

​ 零の演算外ロジックと、重藤の非効率な物理的攻撃という二重のノイズにより、灰月の絶対演算のシステムが激しく揺らぎ始めた。予測ホログラムが崩壊し、室内の警告音が鳴り響く。

​灰月 凱がここにきて初めて、動揺した姿をさらした。

「演算エラー...! 非効率性が、私の演算を上回るだと...!? 絶対的な結論が、ノイズによって否定される...!」

​灰月は、自身の絶対演算の法則の崩壊という、最も効率の悪い未来に直面していた。零と重藤は、支配からの真の解放まで、あと一歩だった。

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