​第8章:絶対演算の法則 — ロジックソルバーの結論  第29話:高層の空(スカイ・ハイ)への招待

1. 秩序の突破とトウゴの追跡の終焉

​ 零と重藤は、鳴瀬トウゴ(ファイアウォール)の部隊を振り切り、夜明け前の静かな区画に潜伏していた。トウゴの絶対排除のロジックは破られたが、特務課の残党は未だ警戒を解いていない。しかし、零の演算により、残党の追跡が規則的な円運動に変わっていることが判明した。

​零は重藤へこのことを伝える。

「トウゴのロジックはフリーズしたが、支配の法則は生きている。奴らの動きは、灰月 凱の絶対演算によって管理され始めた。」


​2. 灰月からの最終結論の招待

​ 零の端末に、極秘の暗号化通信が割り込んだ。発信元は、灰月 凱。画面に映し出されたのは、灰月の本拠地、**「高層の空(スカイ・ハイ)」**の映像だった。

​灰月 凱の通信は感情のない、とてもクリアな音声だった。

「反特異点(アンチ・アノマリー)、金城零。貴様たちの非効率なロジックは、マダムとトウゴの支配の法則を破った。これは、私の絶対演算にも無視できないノイズだ。」

​灰月は、最後の選択を迫る。

「貴様たちの非合理性が、この街の未来に最も効率的であるか、あるいは致命的なエラーであるか。この問いに対する**最終結論(結論)**を出す。直ちに、私の領域へ来い。」


​3. ゼロ・レートと絶対演算の真の目的

​零は、灰月の招待を拒否しても、絶対演算は彼らの存在を無視しないことを知っていた。彼は、灰月のロジックの真の目的に迫る演算を始めた。

(欲望も秩序も、俺たちの非効率な愛着を排除しようとした。だが、灰月は演算しようとしている。望のゼロ・レートは、灰月の絶対演算が唯一最後まで解けなかった方程式であり、彼のロジックの限界を示す**「非合理な定数」**だったのだ...!)

​零は、灰月との対決が、自身の換金システムと望の存在の起源を明らかにする最後の機会だと確信した。


​4. 最後のデポジットと望の保護

​ 二人は、灰月からの招待を受けることを決意した。しかし、望の安寧を確保することが最優先だった。

​重藤は意思表明をする。

「高層の空へ向かう。だが、俺の固定質量を最後のデポジットとして、望の安全を確保する。俺たちの非合理な愛着は、奴らの演算対象ではない。」

​重藤は、自身の徴収能力を使い、ハチワレ猫の固定質量を、望がいる隠されたシェルターの絶対的な防御壁として設定した。この非効率な重さは、いかなる支配者の法則からも演算外となるように、物理的に固定された。


​5. ロジックソルバーの待機と演算準備

​ 高層の空の演算室。灰月のチーム、ロジックソルバーのメンバーたちは、零と重藤の到着に向けて、すべての演算リソースを集中させていた。演算室のホログラムには、無数の予測シミュレーションが流れていたが、そのどの未来予測にも、零と重藤の存在は**「確率変動」**として、不確定要素を残していた。

​灰月 凱は冷静口調で指示をだす。

「予測不能なノイズを、最終結論としてシステムに組み込む。彼らが示す非合理なロジックを、私の絶対演算が完全に解析し尽くす。すべての演算リソースをホールドせよ。」


​6. 決戦の地、高層の空へ

​夜明けの光が差し込み始める中、零と重藤は灰月 凱が待ち受ける**「高層の空(スカイ・ハイ)」**へと向かった。そのビルは、新神楽シティの全てのロジックとデータが収束する、支配の極致だった。

​零はこれまでにない決意を口にする。

「欲望、秩序、そして演算。この支配の法則を完全に超える。愛着を新しい法則として確立する。それが、換金師としての最後の演算だ。」

​二人は、支配からの真の解放と、望との安寧を賭け、絶対演算の支配者が待つ、新神楽シティの頂点へと足を踏み入れた。

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