夢の世界へ

🌺ハイビストマト🍅

第1話 ゴミ箱

「聞いてよ華ー!も〜、今日の客ほんっとキモかったんだけど〜。もっといっぱいちゅ~してよ〜だって!!ほんっとあのタイプ無理だわー。」

「あー、それか。モモカの大嫌いなタイプね。はいっ除菌スプレー!いつもみたいにふっかけとき」

「おっ!ありがとー。除菌で除霊〜除菌で除霊〜」

「もーそれ、毎回笑える。」


私は俗にいう風俗嬢。かれこれこの仕事について10年になる。

この仕事を始めたきっかけは中2の夏休みの時にいつもみたいにふらふらしてたらゲームセンターで声をかけられた。


「こんにちは。華ちゃんだよね?」

古い化粧のやけに真っ赤なリップがういたババアに話しかけられた。

「はぁ?誰あんた。人違いです〜。」

「はいはい、残念だけど正解なのよ。とりあえず車乗ってもらうわね。話は移動中にするわ。」

抵抗しても意味なさそうだし、どうでも良かったから車に乗った。


父親にすごい借金がある事。

そしてどこかへ消えてしまった事。

母親は彼氏の家に暮らしてて、その彼との新しい未来に忙しいから、借金返済に娘に働いてもらう事に了承済みな事。

だから私が働かなきゃいけないこと。よく分からないちっちゃな字が沢山書いてある紙もみせられて、そんな説明をうけた。


「そっか、パパもママもそもそも帰ってなかったのか。」

普段からたいして顔も会わせないから親居なくなってた事さえ気づいてなかった。

普通、こんな展開って可哀想な女子って設定なのかもだけど、私はなんとも思わなかった。むしろちょっと有り難くさえ思った。

住むとこも食べ物も貰えるし、別にとっくに処女でもないし。


ま、そうはいってもピルに身体がなれるまではけっこう辛かったし、さすがにしばらくはキモいとか臭いとか思ったりはしてたかな。

でも、そのうち気がついたら何も思わなくなってた。

バカみたいな性欲も、クソみたいな精子も、今じゃただのその辺に転がるゴミみたいなものにしか感じない。


そのゴミ処理をしてる私って…“ゴミ箱”ってとこかな。

「ふふっ」笑える。

借金は数年前に払い終えてるから、別の何かをしたっていいんだろうけど、特にこの世界に夢とか憧れもないし、普通に生きてるし。

華なんて名前の似合わないこんな私の人生が大きく変わる事なんてないと思ってた。

あの時までは…。


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