第2話:魔法省の階級

やがてやってきたバスに切符を取りながら乗り込む。


ここ最近、僕はどこかをのんびりと放浪するのが趣味となっていた。


組織長の仕事は非常に多く、魔獣に甚大な被害を被っている日本政府への対応が一番大変である。


現状魔獣に対応できるのは魔法少女唯一である。


最近、奴らは魔法少女に代わる兵器を開発しているらしいが、あまりいい話は聞かない。


兎に角、組織長の仕事は大事である反面、凄くしょうもないこともある。


世間の評価がなんだとか、政府からこういう文句があったのだの。


よって基本僕は魔法省にいない。いたくない。


秘書であるフルフレイムはギリギリ黙認してくれている。

(が、別に許しているわけではない。)


もう一人秘書がいるのだが、そいつはかなり自由人である。


よくつるんで北海道に行ったりしていた。


悪運からか魔獣に襲われることは多々あったが、結果的には良いバカンスだった。


最近彼女もⅦ級に昇格したので忙しくてあまり会えていない。


今度会いに行こうと思っている。


バスの座席に座る。


今の僕は変身していても日常フォームであるが故に、魔法少女としての判別はできない。


座席にもたれかかりながら、先ほどの会話を思いだす。


例の場所――――――別称:世界の途切れ目。


かつて存在していた反魔法少女組織との決戦があった場所であり、同時に、史上初であるⅦ級魔獣の封印場所でもある。


あそこは怨嗟と悲嘆と絶望が織り交じる禁忌の土地だ。―――僕を含め。


魔法少女は強ければいいと言う訳じゃない。


少し話は変わるがここで少し階級について語ろう。


階級は魔法省(僕が主に)が制定したものだ。


前世で覚えていた階級を参考にしていたことは記憶に新しい。


Ⅰ~Ⅶ級までが魔法少女にも魔獣にも存在し、Ⅰ級が最も下の階級で、Ⅶ級が最も上である。


Ⅰ級からⅣ級までは魔法少女、魔獣の数共に大変多く、僕は把握しきれていない。

というかあまり興味がない。


そもそもで、Ⅳ級以下を組織長室に呼び出すことはない。


残りの階級は


Ⅴ級魔法少女は100人


Ⅵ級魔法少女は40人


Ⅶ級魔法少女はたったの10人である。こいつらは人ではない。


認定の基準は世間評価と実力(討伐数などによるもの)、そして魔法省の認定試験を突破した者だ。


Ⅵ、Ⅶ級の認定試験を僕が毎回考えなければならないのはどうかしているが、

僕以外が誰もやりたがらないので自然とまわってくる。

ま、誰もⅦ級なんていう化け物の相手をしたくないのだろう。


総合評価は全体順位で発表され、その順位に従って認定されている魔法少女が階級を振られる(Ⅳ級までは認定試験なし。順位のみの判断である)


僕は窓から夕闇に包まれていく世界を見る。


逆に魔獣の階級は強さによるものがほとんどだ。


Ⅰ級:雑魚。一般人でも勝てるだろう。

Ⅱ級:一軒家が破壊程度。Ⅰ級魔法少女が対応できる。

Ⅲ級:数棟が破壊。Ⅱ級魔法少女が対応できる。

Ⅳ級:小さな村などが危機に晒される。Ⅲ級魔法少女が対応できる。


ここまではよく湧く。が、より上の階級は知能もあるため侮れない。


Ⅴ級:一都市が危機に晒される。Ⅳ級魔法少女がチームで対応できる。

Ⅵ級:多くの都市が危機に晒される。Ⅵ級の魔法少女で対応できる。

Ⅶ級:世界そのものが危機に晒される。過去に一体のみ。Ⅶ級がチームで対応できる。

   僕としてもあまり相手したいものではない。


といった具合で制定されている。


また、魔法少女にはそれぞれ得意分野がある。


先ほどのフルフレイムは文字通り、炎の魔法が最も得意だ。


そして、得意分野を極めると”極限魔法”というものを手にする。


これは完全な固有魔法で、同じ得意魔法を持つ魔法少女でも極限魔法は異なる。


極限魔法は”世界を書き換える”力とも言え、世界の法則を捻じ曲げる。


この極地に至る者は一握りで、Ⅵ級上位とⅦ級を合わせて10人だ。


っと、僕が思考の沼にハマっている間にバスがあるバス停に停車した。


先ほどから続くビル群。遠くから車やバイクの喧騒が聞こえる。


ライトが夜闇を払い、僕の目を照らす。


だが、今停まっているここは何処か静かで何故か興味を引き付ける。


思い切って僕はICカードで金を払い、その土地へと降り立った。


魔法少女の直感は案外侮れない。


――――その直感が、面白いことが起きると騒いでいた。




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