2
約束があるというのは嘘だった。
ここ数日寺嶋たちは忙しくしており会うことすらできていない。
今日も用もないのに山に登って開けた場所の岩に腰を下ろす。
「なんだかなぁ。」
思わず口からこぼれ出した言葉に苦笑いする。
自分の今の感情どんぴしゃりだと笑った後に虚しくなる。
自分はこんなにも薄情だったのか。
正体が物怪だとしても何をされたわけでもないのに避け続けている。
友達だと思っているのに近づくことが怖くてできない。
豊虫は頭を抱え目から涙が溢れてくる。
「物怪って…なんなんだよぉ…。」
次から次へと溢れ出る涙を止めようと必死に目の下を押さえつける。
後ろからガサガサと音がして驚いて振り返る。
ひぐっさんかと期待したがその顔を見て固まる。
「豊虫…。」
そこには悲しげな顔をした三男雄が立っていた。
豊虫は泣いていたことを思い出して背を向けうずくまる。
「みのっち、何しにきたの?」
「何しにきたってお前…。ずっと避けられてるから…ちゃんと話したくて…。」
泣いてるのがバレたくなくて顔を隠したが声が震えていた。
三男雄の言葉は豊虫の心にグサリと刺さった。
「避けてない…。ほんと…忙しくて…ここ最近…。もう何が何だか…わからなくて。」
足音が近づいてくる。
その音を聞きながら豊虫の鼓動は早くなる。
怖いからじゃない。
物怪だからではない。
三男雄と友達でなくなってしまうことが怖いのかもしれないと思った。
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