35話

『お知らせ』

この度、タイトルを少し変更致しました。  

旧→没落公爵令息は復讐を誓う

新→神話の終焉〜没落公爵令息は復讐を誓う〜

となりました。

内容は全く変わりませんので、今後とも宜しくお願い致します。


↓本編ここからです





光が落ち着いたと思い、恐る恐る目を開ける。

そこに広がっていたのは

——灼けた大地と裂けた空だった。


多分、ここがあの魔法陣の中なんだろう。


「良かったわ、無事に転移できたみたい。」


リスティアが息をついた直後、

世界そのものを震わせるような轟音が響く。


砂埃の奥から、黒い霧をまとい、

漆黒の翼を広げた巨躯が現れた。


あれは——あの夢の中で見た存在…!


思わず隣のリスティアを見ると、

彼女も同じことを考えていたらしく、黙って頷いた。


そしてその正面に、光の奔流をまとったひとりの戦士が立っていた。


真っ白のマントが裂ける風を受け、輝く剣を真っ直ぐ構える姿は本当に絵になる。


しばらくその姿に見惚れていると、

その戦士が夢で見た「彼」へ語りかけた。


「何故、貴方はまだ戦うのですか?

こんな姿になってまで……。

こんなの、貴方自身も望んでいないのでしょう?」


それは怒りでも憎しみでもなく、

相手の心を揺さぶるような、必死な声。


「戦いを望んでいないのは貴様自身ではないか?貴様はどれだけの罪を犯した人にも良心はあると本気で信じ、魔物にさえ情をかけようとする。

それどころか、裏切られても相手にも相手なりの事情があった、自分にも非があったと考える。

違うか?」


戦士は少し沈黙し、

自分を見つめるような声音で答えた。


「……否定はできません。

今でも、貴方を“完全に悪”だとは思えていない自分がいます。

まだ、貴方の中に優しい心が残っていると……信じている自分が。」


「やっぱり、貴様は戦いには向いていない。

貴様は歴代最強にして、唯一余を倒せるだ。

そしてそれは余自身も認めている。

……実に皮肉な物だ。今まで、多くの者が余に本気で挑み、そして、余の餌食となった。

そして唯一、余に届く力を持つ貴様は——

その優しさゆえに、余を殺せない。」


戦士は剣を握り直しながら言った。


「それは……認めます。

ですが、貴方もかつては“大天使ルシエル”として正義感を持ち、腐敗した天界に逆らった。

あれは正義のため……違うのですか?

その心は、まだ——」


「まだ分からぬのか?」


彼は空そのものを震わせる声で言った。


「余が正義に従っていたのは昔の話。

今の余はであり、

もはや大天使ルシエルではない。」


——え。


大悪魔ルシフェルト?

僕たちを夢で呼んだ“あの存在”が……?

しかも、“もはや大天使ルシエルではない”

って——


その時、リスティアが何かに気づいたように声を上げる。


「見て、あの人の瞳……!

さっきまで黒かったのに、赤くなってる……!

瞳の色が変化するのって、私たち闇魔法の使い手と同じ……!」


確かに、彼の瞳ははっきりと赤く染まり、

それは僕たちよりも変化はずっと顕著だった。


親、先祖、そして——今見つかった共通点……。


その瞬間、真実に近づけた気がした。

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