シュールレアリズム短編集

瑞雲日景

第1話 人類最強、イオンモールに降臨す。

ある日、私は目覚めた。私が人類最強だと理解した。

なので、私は山を下り、人々にそれを伝えることにした。


「聞きなさい。私は人類最強なのだ。」

村人たちは最強の私を警戒し無数の竹槍で私を刺した。


「私は人類最強だ。よって、こんな武器は効かない。」

私の口から血がドバドバと出て、視界が黒くぼやける。


次に目を覚ますと、そこはTシャツ売り場だった。

イオンモールだ。私は意を決して言った。

「聞きなさい。私は、私は人類最強なのだ。」


イオンの人民たちは私を避けるように逃げた。

私は怒りを感じた。

「このようなTシャツよりも、私が人類最強であることの方が重要なのだ。」

そういって私はTシャツを老若男女のものとわず歯と爪で破き去った。


するとイオンの警備員がアルソックを呼んだ。

ゆるせない。ゆるせない。ゆるせない。

私が人類最強であることは、Tシャツ売り場が損壊されたことにも

劣る事象だというのか。私はワゴンセールのTシャツ以下か。


私は怒りで震えて涙が止まらなかった。

「聞きなさい。私は人類最強だ。聞きなさいったら。」

アルソックはテーザーガンを撃って来た。




「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」


私は人類最強なのでギリギリ耐えることが出来た。しかし、そこで私は

更なる悟りに到達した。



「私は、なぜ私が人類最強であることを認識され、知られたがっているのか?」



「私は、人類最強であるのなら、それを社会的欲求に組み込んで、

浅はかな承認欲求を満たそうとはしないはずだ。」




「しかし、それは私が人類最強であることと矛盾する。では、なぜ。」



私は、真理に到達した。

「なるほど、私は、私が人類最強であることが、

何かの説法、ないし救済になると考えているのだ。」





私はイオンモールのアルソックを叩きのめし、次なる舞台へと向かった。



フードコートの一番高い所に立って、私は演説をした。


「聞け!!聞け!!!男一匹が、命を懸けて君たちに訴えているんだぞ!!」


小学生や、運動部の高校生たちが、うるさい、早く食事をさせろと怒号を飛ばす。




私はやむなく、切腹をした。





私は間違いなく人類最強だった。





私は間違いなく人類最強だったのだ。



だから、誰にも迷惑が掛からないように、私の遺骸は

総て分子レベルで分解して空気にして、遠く空に飛ばしてしまおう…

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