第37話
リジェはたくさん話してくれた。
これからのこと。
私に与えられた選択肢。
そして、もう一人——少年・高梨勝利のことも。
情報が多すぎて、頭がパンクしそうだった。
それでもリジェは、ひとつひとつ、まるで教師のように丁寧に教えてくれた。
私の力は「治癒」。
欠損でも、病でも——どんな傷でも癒すことができる。
この世界では、神の御業に等しいとされる力。
死者を生き返らせること以外、癒せぬものはないという。
けれど、リジェは言った。
「他にも力が眠っている。でも——それは、まだ目覚めさせなくていい。」
どうやら、私はこの世界における“変わり目”になる存在らしい。
その意味を完全に理解できたわけではない。
けれど、リジェによれば——
私と高梨勝利、この二人がこの世界の均衡を決める鍵なのだという。
「貴方が流されぬように。
そして、力に飲まれぬように。
そのために私は来たの。」
リジェはそう言って、赤い羽をふわりと広げた。
守護の契約の証として、炎のような光が一瞬だけ私の胸に宿った。
彼女の他にも、いずれ“守る力”として幻獣たちが助けに来てくれるらしい。
その言葉に、少しだけ心が軽くなった。
選択肢は二つ——
この世界に残るか、元の世界へ帰るか。
帰還の時は、召喚される直前の瞬間に戻される。
だから家族や友人は、私がいなくなったことすら知らない。
——そんな都合のいい話、信じられない。
けれど、信じるしかない。
私はこの“変わり目”の使命を果たさなければならない。
誰も傷つけず、自分も傷つかぬように。
リジェが見守る中で、私は静かに目を閉じた。
夕暮れの光の中で、胸の奥に——
小さな祈りのような決意が生まれた。
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