第11話

その時だった。


トドメを刺そうと、仮面がゆらりと近づいてくる。

その瞬間、空を裂くような鳴き声が響いた。


――カァァァッ!


黒い影が降り立つ。

黄金の瞳を持ち、三本の足で大地を踏みしめる、不思議なカラスだった。


そのカラスは迷いなく仮面へと突っ込み、鋭い爪で顔を引き裂こうとする。

仮面はわずかにのけぞり、鬱陶しげに腕を振った。


「……生きろ!」


カラスの叫びとともに、強烈な衝撃が走る。

次の瞬間、カラスの身体は弾き飛ばされ、闇の中に消えた。


――クマノは空からその光景を見ていた。


人は、簡単に変わる。


変わり目から得た力は、いつも“死”の中でしか発現しない。

一度目は、あの世界からこの地への移動で得た力。

二度目は、ヒトガタとの戦闘で“ドッペル”の名を得た力。

そして今――三度目。

仮面との死闘の果てに、何を掴むのか。


クマノは知っている。

この世界で生きるためのことを。

食べられるもの。

簡単な道具の作り方。

そして、ドッペルの力の秘密を。


彼は“心”も支えていた。

家族の記憶を語り、笑わせ、導き、

狂気に呑まれずに生きられたのは、間違いなくクマノのおかげだった。

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