第二話 旧校舎でぼっち弁当
これは少し前───。
昼休みのチャイムが鳴り終わると、校長先生直々の校内放送が始まった。
『生徒の皆さん、こんにちは。今日は授業の予定を変更し、新校舎完成の落成式と、旧校舎から新校舎への机と持ち物の移動、お疲れ様でした。皆さんのご協力のおかげで午前中で引っ越し作業は無事完了しました。午後からは予定通り旧校舎の閉鎖を行いますので、これ以降、皆さんは新校舎で学校生活を謳歌し、学生の本分を全うしてください』
その校内放送を
「午後から旧校舎は閉鎖されちゃうけど、昼休みの間はまだ大丈夫だもんね」
そう独り言を呟くと、
「それでは旧校舎で食べる最後のお弁当をいただきます」
両手を合わせ、お弁当に対して「いただきます」をすると、
すると中からは海苔の巻かれた俵おにぎりが三つとダシ巻き卵、それに鮭の切り身とブロッコリー、そしてかぼちゃの煮つけとプチトマトが綺麗に詰まった見事なご馳走弁当が姿をあらわした。
「美味しそう。さすがお兄ちゃん。ますます料理の腕を上げたわね。毎日、
せっかくお弁当の蓋を持ち上げた
「───でもね、お兄ちゃん。せっかくお弁当を作っても、お箸が入ってないんじゃ食べられないじゃない……」
「もうこれで今月、何回目よ……。しっかりして、お兄ちゃん。そんなオッチョコチョイだからせっかくイケメンで優しいのに彼女ができないんだよ……。
……まあ、お弁当をもらう時、お箸を確認しなかった私も悪いんだけどさ……」
* * *
他の部活は廃部にならず、これからも存続するので新校舎に新たな部室が用意されていたが、
その為、
「まあ、部員が私一人じゃ仕方ないよね。顧問のニング・
* * *
といってもイジメを受けているなど、そういう理由で人との関わりを避けているのではなく、単に部室が静かで落ち着くからだった。
その為、新校舎が完成し、旧校舎が閉鎖される今日は、大好きな部室でお弁当を食べられる最後の日だった。
その為、よりによってそんな日にお弁当に箸が付いていなかったのは痛恨だった。
誰かに予備の割り箸などを借りるにしても、他の生徒は全員、新校舎に行ってしまっていて、助けを求められる学友は誰も旧校舎に残っていなかった。
新校舎に行って箸を借りて帰ってくるのも往復に時間がかかって面倒だし、かといって旧校舎の部室でお弁当を食べることを諦め、新校舎に移動するのも今日が部室でお弁当を食べられる最後の日だったので決心することができなかった。
どうしようか悩んでいる間にも刻一刻と時間は進み、みるみる休み時間が少なくなってしまっていた。
「あぅ~……。どうしよう。昼休みが終わっちゃうよ~……」
焦燥感に駆られた
その盆栽は園芸部の部長に代々受け継がれてきた年代物の盆栽で、鉢には「ボン太郎」と
「相変わらず見事な枝っぷりね、ボン太郎。
……───ボン太郎の枝って長さも丁度、
何かに取り憑かれたようにボン太郎にジリジリとにじり寄ると、
しかしその瞬間、來楓は
「わ、私は何を……? だ、だめよ。園芸部部長の私が私利私欲の為に盆栽を粗末にするなんて、そんなこと許されない」
慌てて剪定バサミを引っ込めた
「ごめんね、ボン太郎。私、どうかしてた。他でもないボン太郎を傷つけようなんて園芸部の部長失格だね」
ボン太郎は恐怖に
「ボン太郎、こんなに震えて……。本当にごめんね。もう二度とこんなことしないから安心して。本当にもう大丈夫だから
……───って、ん?
え? なんで?
尚もガタガタと震えるボン太郎を目の当たりにして、
なぜこれが地震の縦揺れだと気付いたのかというと、次の瞬間、
「きゃあぁぁぁーッ!」
地震の揺れは大きく、まるで校舎が一回転したかのようだった。
突然の大地震に
頭を伏せる瞬間、
だがその光がなんであるかを確かめる間もなく、次の瞬間、
恐怖で心臓が早鐘を打ち、
「やだやだッ! こわいこわいッ! 止まって止まってーッ!」
───その祈りが通じたのか、先ほどの衝撃を最後に地震は嘘のようにピタリと止んだ。
それはあまりにあっけなく、恐怖で身動きがとれなかった
「あ、あれ……? 地震が止んだ……? え? 本当に? ……そ、それじゃあ、今のうちに安全な場所に避難しなくちゃ……ッ!」
地震の恐怖で腰が抜けかけていたが、震える足を必死に鼓舞し、
旧校舎を出た先には新校舎があるはずだった。
耐震性にも優れた最新の新校舎なら、避難すれば安全かとも思ったが、防災訓練で地震の時は
そしてなくなっていたのは新校舎だけではなかった。
その時、キラキラと揺れ動く光に気付いた
すると旧校舎の上空に大きな魔法陣が浮かんでいて、雪のように光の粉を降らせていた。
光の粉に彩られ、旧校舎は幻想的な輝きに包まれていた。
「き、綺麗……。でもこれって一体……?」
來楓は魔法陣をよく観察しようと目を凝らしたが、しかし、すぐにその魔法陣は空に溶け込むように消えてしまった。
しばらくポカーンとその様子を眺めていた
「なるほどなるほど。これが
-----
【あとがき】
皆さま、お世話になっております。柳アトムです。
この度は私の小説を読んでいただきまして本当にありがとうございます。
( ᵕᴗᵕ )
第一話はいかがだったでしょうか?
(,,•﹏•,,)ドキドキ
異世界転移モノは初執筆だったので転移するシーンもちゃんと書いてみました。
スピード感重視で「気が付いたら転移していた」の方が読者様には喜ばれるかな?とも思ったのですが、色々な伏線を仕込む必要もあったので置かせていただきました。
伏線その壱
ニング・D・ガー先生
伏線その弐
ボン太郎は重要アイテム♪
伏線その参
來楓のお兄ちゃん
因みにお兄ちゃんの名前は
妹は
そんな兄妹です(笑
さて、学校ごと異世界に転移した來楓ですが、次話で早速ゴブリンに襲われます(笑
展開を早め、サクサクと物語を進行させますので、お付き合いいただけますと幸いです♪
皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります。
୧(˃◡˂)୨
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