第2話 魔法少女の定義

 M粒子まりょくが世界を変えた。


 人間の思考と接続し、それに応じた信号を自在に伝える性質を持つ、光放つ粒子。それは適正を持つ人間にしか反応しなかったが、世界を変えるには十分だった。


 思考するだけで敵をロックオンするミサイル。

 思考するだけで展開されるパワードスーツ。

 思考するだけで意思疎通できる通信機。

 思考するだけで引き金を引く銃。

 思考するだけで蠢くドローン。

 思考するだけで走るバイク。


 M粒子を用いて信号を管理し、自在に動かされるデバイス。

 人はそれを、『魔法』と呼んだ。

 それほどまでに、『魔法』は人智を越えていた。

 例えば一国の代表がM粒子の適正を持っていたとして。

 それが――思考するだけで、核弾頭で敵国の要人を撃ち抜けるとしたら?


 世界は一度、M粒子によって崩壊した。


 第三次世界大戦、第四次世界大戦、函館決戦。

 忌々しい文字が教科書に踊る時代。

 M粒子の使用は厳に禁止された。


 だが。


 テロリストは魔法を使う。

 対処する政府も、魔法を使わないわけにはいかなかった。


 そうして生まれたのが『魔法少女』。

 政府によるマインドコントロールが容易で、思考を自在に操られるよう訓練・調整を受けた、戸籍のない子供たちチルドレン

 『詠唱』によって思考ロックを解放しなければ、自由に夢を見ることすら許されない、薬漬けの少女たち。



 彼女たちの存在を。

 政府は、公式に認めてはいない。

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