-大正雷恋譚 -「二人とも、付き合います!」雷の双子公爵様に同時に告白されたので、"お試し"から始めることにしました❣
額田ハル
巫女覚醒編
第1話「選べないなんて言わない。だって、二人ともいただくから」
↓↓タイトルイラスト↓↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139839038224023
「……は?」
夕暮れの茶室に、畳の香りが静かに満ちる。 私は袴の裾を握りしめ、目の前に並ぶ二つの影を見上げた。
そっくりな黒髪。 双子の瞳が、真剣な光を宿して、まっすぐに私を射抜いている。
同じタイミングで、同じ真剣な顔で、同じ言葉を口にした。
『好きだ』
――いやいや、ちょっと待って。 なんで私、こんな少女漫画みたいな状況に立たされてるの?
(顔は同じ。性格も、もう、どちらがどうだなんて言えないくらい、二人とも知ってしまった。 命を懸けて私を守ってくれた人たち。私が命を懸けて守りたかった人たち。……選べるわけが、ない)
兄の
「君のいない世界は、もう考えられない。 私の唯一の光である君を、これからは私の傍らで、生涯を懸けて守りたい」
弟の
「俺の隣がお前の居場所だ! もう、誰にも渡さねえ! お前の笑顔も、涙も、全部俺が独り占めにしてやる!」
……うん、どっちも刺さる。困る。 いや、困らない。むしろ、美味しすぎて罪悪感すら湧かない。
兄の静かな稲妻のような視線。 弟の嵐のような熱気。 その二つが、肌をビリビリと撫でていく。
(こんなにも真っ直ぐな、命がけの想いを二つもいただけた。 たとえ『巫女』なんて大層な役目をいただいたとしても、私の根っこはただの女中なのに。 そんな私には、あまりに贅沢で、罰が当たりそうなほどの幸福……。
どちらか一つなんて、私には選べない。 いいや、違う。選んではいけないんだ。 この二つで一つの尊い想いを、私が分断するなんて、絶対にしてはいけない)
気づけば、私の口は勝手に動いていた。 私が選んだ、たった一つの誠実な答え。
「じゃあ──二人とも、付き合います」
沈黙が、茶室を包む。
兄の
「……えっ」 「……えっ」
兄は静かに息を吐き、低く問う。
「私たち二人と同時に……? そんな選択肢が、
弟は声を震わせ、叫ぶ。
「マジかよ!? そんなのアリなの!? お前、雷の双子を二人まとめて食う気か!?」
二人の声が重なった瞬間、私は心の中で頭を抱えた。
(ああもう、どうしてこうなったのか……説明しなきゃダメ? でも、このビリビリした空気、嫌いじゃないかも……)
──そう、すべてはあの日から始まった。
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