夜行の影にて 古文ver

何のために人は歌ふか

何のために人は励むか

落葉舞ふ路の端にて

我、影に隠れて見る

かぼちゃの灯火に笑ふ人の顔

手届かぬものを求むれば

傷ばかりを生むものを

この我が目は知れり


何のために人は笑ふか

何のために生くるか

仮面の影、百鬼夜行の行列

分かり合はざる人の業

苦しめるのみならば

いさ、言葉は不要なり


されど、冷たき風に

街灯揺れ、ひそやかなる声

降り来るものを聞けり


「君の音は優しき花束」

「君の言葉は温かき太陽」

人よ、我が知る限り

その小さき胸に光あり

両手に意味を授かりたり


されど、されど

人と人は異なるものなれば

分かり合はざることもあらむ

それゆえに嫌はるるかもと

人は悩み、最悪の影を思ふ

年を経るごとに心のずれ増し

大切なるものこそ

当たり前に失せゆくものなれば

ああ、どうか、どうか

人よ、君のみは


「君の音は優しき花束」

「君の言葉は温かき太陽」

「何度だつて伝へむ」


夜空に浮かぶ三日月

我、百鬼の影とともに舞ひ

人の心を見守りつつ

気づけばいつも君を思ひぬ

今も然り

人よ、如何なる言葉にて笑ひ誘はむか

きっと君も人を思ふものなれば

同じく大切なることを知れり

我より人へ――聞け、人よ


君の音は優しき花束

君の言葉は温かき太陽

人のすべてに光あり

両手に意味を授かりたり

ほら、我が手を取るがよし

落葉の道を

幽かなる灯火に導かれ

何処までも行かむ

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