第2話歪な編成

 馬車に揺られて4日間。ひたすらに考えていた。守護者で最強になるには、2通りあるんだ。それのどちらを目指せば良いのかを。守護者は守りに特化した職業だ。防御力が上がっていくことになる。それを活かしたタンクへのビルドにするか、防御力を活かしたアタッカーになるかの2択だ。……どちらにしても、守りの番人のスキルツリーを伸ばすのは同じなんだが、他2つのスキルツリーが大きく異なってくる。


 しかし、どちらが良いのかというのは、判断がつきにくい。どちらも最強である事には変わりがないからだ。片や最高クラスの防御力を誇り、片や最高クラスの火力を出せる。タンクはどちらでもいけるが、防御力を最高峰にした方が安定はする。だが、ソロでダンジョン、夢幻の世界を攻略しようと思えば、火力の有無は大きな差となる。多少のリスクはあるが、火力を出していく方がいいだろう。その方が最終的には強くなるはずだ。


 火力を求めていこう。夢幻の世界を攻略するには、どうしても火力が必要になってくる。その時に、火力不足で負けましたでは話にならない。火力を求めて死ぬのもあれだが、まだ前のめりになった方が求められる成果は大きくなるだろう。


 そんな訳で、俺は火力最大の守護者を目指していく。単純な火力は、並のアタッカーよりも高い。所謂ロマン枠だが、嵌ればどんな職業よりも強くなれる。立ち回り次第で、アタッカーにもなれるし、タンクも出来る。まあ、育ち切るまではタンクで過ごす事にはなるんだが。それはどちらの道を選んでも変わらない。まずはタンクとしてパーティーを組んで、色々と立ち回る方がいいだろう。冒険者の町なんだ。豊富なアタッカーが居るとは思うし、ヒーラーも居るだろう。パーティーは厳選したいが、何分初めての場所だ。色々と勝手が違うだろう。


 乗合馬車を降りて、冒険者ギルドへとやってきた。これから俺の冒険者生活が始まるんだ。未知なる領域へと足を踏み入れるんだ。ワクワクしない訳がない。これから何があろうとも、最強への道を進んでいくんだ。


「すみません。冒険者登録をお願いします」


「解りました。こちらが登録書になります。記入をお願いします」


 冒険者登録に際して、職業を明記しなければならない。それが冒険者ギルドでもルールだ。誰が何の職業なのかが解れば、パーティーも組みやすくなる。まあ、公開しても当然の情報でもあるし、ちゃんと記入はするんだけど。


「それでは少しお待ちくださいね」


 そして、ギルド証に刻んでいくことになるんだが、これがアーティファクトだったと思うんだよな。前文明の遺産とかなんとか設定資料集に書いてあったとは思う。何故か、何度か世界が滅びているんだよな。そのせいで創造神のガウロデンが封印されることになったんだが。一体何をしたのかって感じではある。


「冒険者登録が終わりました。こちらがギルド証になります。こちらが、魔法の袋と魔石の袋になります。無くさないように注意してくださいね?」


「ありがとうございます。それでなんですけど、パーティーを探したいんですが、何処かいいパーティーはありませんか?」


「そうですね……。申し訳ないですが、守護者が入れるパーティーとなりますと、かなり少なくなると思いますが、大丈夫ですか?」


「ん? 職業はそこまで悪くはないと思うんですが……」


「いえ、あの、そうですね。冒険者ギルドとしては、そこまで悪い訳では無いとは思いますが、今の流行では、ちょっと……」


「え? 流行で?」


「そうですね。今の編成だと、ちょっと難しいかなとは思うのですが……」


「……ちなみに、今の編成ってどうなっているんですか?」


「今の編成は、6人パーティーが基本になりまして、斥候1か2、アタッカー4か5になりますね」


「……歪過ぎませんか? アタッカー偏重って、どんな戦闘を?」


「詳しくはなんとも言えないのですが、夢幻の世界の攻略も滞っているのが現状ですね。高ランクの冒険者の方が少なくなってきているので」


 それは滞るだろ。普通に考えて、どう頑張ってもアタッカーだけでは夢幻の世界は攻略でき……ないこともないが、難しすぎる。綱渡りをしなければならない。というか、6人は多すぎる。俺的には4人パーティーで良いと思っている方だからな。というか、火力を出したければ4人パーティーを組みたい。それで何とかならないかね?


「何とかパーティーを組む方法は無いですか?」


「2階に募集している人たちの掲示物があります。良ければそちらで探す方がいいかとは思います。……斥候やアタッカーは殆どいませんが」


「そうなんですか。ちょっと探してみます」


 アタッカーが不在なのはちょっと問題があるが、何とかパーティーは組めるだろう。欲しいのは、アタッカー、バッファー、ヒーラーになる。それだけ揃えば、夢幻の世界の攻略も捗ることになる。まあ、問題がない訳では無いんだが。アタッカーが居ないとなると、ここをサポーターにしなければならなくなるんだが、何処まで有用なサポーターが居るのかどうかだからな。


 そういう訳で、2階にやってきた。色々と張り紙がしてある。これがパーティー募集の掲示板になるんだな。


「ステータスを書き込んでいるのか。むやみに人に見せる物でも無いとは思うんだがな……」


 ステータスは、何が出来て、何が出来ないのか。それを知らせる事になるからな。手の内はパーティーメンバーにしか通知しないと言うのが一般的なんだ。野良のパーティーでも教え合わない程度には、ステータスを秘匿する意味があるんだが……。


「まあ、俺にとっては有難いけどな。全部見て判断できるんだから」


 そんな訳で、物色。普通に有用な職業も残っている。まあ、こっちには必要ないかなって思う反面、ちゃんとパーティーを組めば、爆発力があるパーティーを組めるだろうとは思う訳だ。普通にここにある人たちでパーティーを組めば良いんじゃないか? ……まあ、それは考えてはいるんだろうが、アタッカーが居ないのが問題なんだろうな。


「ん!? ちょっと待て! この職業が余っていても良いのか!? こんなの勧誘待った無しなんだが」


 そこには、ヒーラーの最有力候補が載っていた。聖女。Sランク冒険者になれば、スキルポイントを100まで振れるようになる。その時にHPがぶっ壊れるので、ヒーラーなのに落ちないという事で有名な職業だ。しかもその強みを生かして、生贄聖女という、ぶっ壊れビルドが存在する。聖女が居るなら、俺がリスクを取ってアタッカーになるのも出来る。というか、ほぼノーリスクでアタッカーとして活躍することが出来る。


 これで1枠は確定だ。聖女ほどぶっ壊れな職業は少ない。それが何のパーティーにも組み込まれていないと言うのがおかしい。アタッカー偏重なパーティーが主体になっているせいで、有用な職業が残っている状態になっているんだな。……これって、下手をしなくても、お宝がまだ眠っているんじゃないか?


 探す必要があるな。全員見るつもりで探そう。もしかしたら、かなり有用な職業が眠っているのかもしれない。聖女が放置されている様な状況だ。これならサポーターもバッファーも見つかるんじゃないか? そんな期待が出来る。全部の職業を見るつもりでやらせてもらう。自由にパーティーが組めるなら、これほど嬉しい事は無い。

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