第2話 アイドルとサポーター

「本当にごめんなさい……」

「……いえいえ」

俺の頭に大きなタンコブができていた。痛すぎたので、冷やしているが……

「あははは!!あの白兎が女の子に殴られて気を失うって……くっくっくっ…!!面白すぎるでしょ!」

叔母さんがずっと笑っていた。

「………笑いすぎだと思うんだけれど」

「はぁーお腹痛いわー笑笑……ごめんなさいねー、この子が突然いたから驚いたのよね?みんな」

「そうよ!その男が悪いのよ!」

俺を殴った張本人が叫んできた。

(こいつ、ぶん殴ってやろうか)

心の中でイラつきながらも、話を聞くことにした。

「それで、この人は…?」

マネージャーさんが叔母さんに聞いていた。

「以前話していた、サポーターをやってくれる子よ、名前は、雨宮 白兎、高校一年生よ」

「…雨宮です。以後お見知り置きを」

不貞腐れたように挨拶してやった。

「それで、白兎、この子達があなたがサポートするアイドル達よ、ほら、挨拶してちょうだい」

叔母さんがみんなに促した。


「えっと、改めまして、濱中 佳奈(はまなか かな)です。高校1年生です。よろしくお願いします」

さっき、虫がいて怖すぎて俺に飛びついてきた女子だった。茶髪のボブで身長が小さめだった。目がくりっとしていて、可愛らしい人だった。

「えっと、他の子達は…」


「…長谷川 蘭(はせがわ らん)、あんたみたいなやつと仲良くなんてしないから」

凄く怒っているような雰囲気の女子。彼女は紫色の髪をポニーテールにしていた。キリッとした鋭い目つきで俺を睨んでいた。

(絶対、仲良くなれそうにない)


「初めまして!波崎 光莉(なみさき ひかり)です!よろしくお願いします!サポーター!」

「さ、サポーター?」

「え、サポーターでしょ?役目、だったら、名前もサポーターで良くない?」

凄くフレンドリーな女子だった。黄色の髪色で、ゆるふわボブっていう髪型?ぽかった。


「……どうも、黒影 南(くろかげ みなみ)………よろしく」

静かな雰囲気の女子だった。紺色の髪が長めで下ろしていて、ストレートになっていた。

無口な雰囲気があって、近づき難い感じだった。


「初めまして!僕は、小雀 林(シャオチュエ リン)って言います!よろしく!」

黒髪のベリーショートの女子?だった。エネルギッシュなスポーツっ子って感じだった。

ただ…

「しゃ、シャオチュエ?リン?って名前なのか?」

「あ、はい!僕、出身が中国で、育ったのが日本なんですよーだから、日本語が話せるんです!中国語も一応話せますよー、本場の中国人ほどではないですけれど……」

「すごいな、えっと、ちなみに僕って言うのは…」

「女の子よ、この子は」

叔母さんがそう教えてくれた。

「…そうっすか」

俺は男子だったらって期待したが、女の子と言われ少しがっかりした。

何せ、男が今いないのだ。同性がいないのは結構きつい。

(俺、やっていけるかな?)

めっちゃ不安になってしまった。


「ま、自己紹介はこのくらいにして、前に話していた通り、この子達のサポーターとして、働いてもらうわ、あと、この子が矢那咲 翠(やなさき みどり)ちゃん。一応、ここにいるアイドル達のマネージャーよ、お世話になると思うから、覚えておきなさい」

「あ、えっと、雨宮 白兎です。よろしくお願いします。」

「矢那咲 翠です。よろしくね?」

少し緊張しているのか、それとも、警戒されているからなのか、俺をじっと見てきた。

「な、何ですか?」

「いや、あなたどこかで……」

「き、気のせいだと思いますけれど……」

俺は少しヒヤヒヤしながら、彼女の目を見た。

「そうよね…気のせいかな?」

納得していない表情をしていたが、やがて諦めたかのように、元の表情に変わっていた。

(あっぶねぇー!バレたらめんどいことなるから、絶対話さないでおこーっと)

俺も知らん顔をしながら、おばさんの話を聞くことにした。


「よし、みんな揃ったね…それじゃあ、今後のこと話そうか…」

叔母さんが話し始めた。

「ま、アイドルのみんなは今までとそんなに変わらないんだけれど…普段はマネージャーと共に行動することがあったでしょ?たまに、サポーターである白兎と行動してもらうから、そこはしっかり覚えておいて。いいね?」

「私は構いませんよー」

「……お好きにどうぞ」

「うん!僕も大丈夫です!」

「わ、私も…だ、大丈夫です。」

4人は賛成してくれたみたいだ。けれど…

「なんで、こんなやつと一緒に行動しないといけないの?しかも、男なんて……」

長谷川さんは反対らしい。

「蘭ちゃん…」

「たとえマネージャーとゆっきーさん(おばさんの名前が雪乃だから、ゆっきーさんらしい)が決めたことだとしても、私は認めませんし、そんなの許すことができません!失礼します!」

長谷川さんが部屋を出て行った。

「あ、待ってよー蘭ー」

「…お話は終わりですかね?なら、帰らせていただきます」

「え!えっと、あのー…し、失礼します!」

「ま、待ってよー!」

長谷川さんの後を追って、他の4人も出て行った。


「ごめんねー、蘭ちゃんは男性が苦手でね」

「…なら、なぜ俺を?」

「ゆっきーさんが突然言いだしたので…」

矢那咲さんも分かっていなかったらしい。

「翠ちゃんにはまだ、何も伝えてなかったから、この場で伝えるわね?この子…前に蘭ちゃんと光莉ちゃんを助けた張本人なのよ」

「え!」

矢那咲さんがめっちゃ驚いていた。

「攫われたことがあったでしょ?この子、近くにいてね、彼女達を助けるために追って、救出したのよ、この子がそばにいれば、あの子達が危険な目に遭わなくなると思ってさ」

「そうだったんですか…あ!その、蘭と光莉を助けていただきありがとうございます!」

ぺこりとお辞儀した矢那咲さん。

「いえ、たまたまですので…」

(バラしやがったー…最悪…)

俺は内心、ズーンとなりながら、矢那咲さんの感謝を受け取った。


「助けたことってあの子達に伝えるんですか?」

「えっと、そのつもりだけれど、蘭達からも言わないといけないと思うから」

「あの、それ言わないってことにしてくれませんかね?」

「え?どうして?」

「その、俺、善意でやっただけですし、たまたまですし、それに、あまり目立ちたくないって言うか…俺の家系がやばいんで…その…余計に不安にさせたくないと言うか…なんというか」

俺の声がだんだん小さくなって行った。

矢那咲さんはそんな俺を見た後、おばさんの方を見た。

「この子は私と同じ家系よ?分かるわよね?」

「………そういうことですか。なるほど」

矢那咲さんはやっと分かったようで、納得してくれた。

「分かりました。あの子達には伝えません。ただ、感謝の言葉は私から受け取ってください。ありがとうございました。」

また、矢那咲さんが頭を下げた。

「だ、大丈夫ですよ!さっき頭を下げていただいたのですから。こちらこそ、これからよろしくお願いします。サポーターとして全力で頑張ります!」

「!!はい!よろしくお願いします」

「さて!2人が仲良くなったところで、仕事について話すわよ?白兎」

「はいよ…」

「では、一応、みんなのこれからのスケジュールを送っておきますね?」

そう言って、矢那咲さんが俺にスケジュールの写真を送ってくれた。

「こ、これが仕事の量?えっと…あの…」

「言いたいことは分かります…すごく…」

そこには…


ほとんど仕事が書いていなかった。白紙だった。


「仕事がないんです。オファーが来なくて…」

「ま、まじですか…」

「はい…まじです」

「よく、事務所続けられましたね?」

「今までは、前の社長が何とかしてくれていたので、続いてこれたのですが…」

「ん?その言い方だと、続けられないって感じなんですが……」

「……おっしゃる通りです。前社長が引退されて、新しい社長が就任されたため、私たちの活動が不必要だと断言されまして、結果を出せなければ、来年には辞めさせると申しておりまして……」

「……それ、やばくないですか?」

「はい…やばいです。」

「ま、そこで、あんたの出番!」

叔母さんがウッキウキで俺にそう言ってきた。

「は?俺の出番?」

「そ!あんたの出番!!」

「……嫌な予感するんだが…」

「ふっふっふっ…この芸能界を知っているあんたなら打開策あるでしょ?!」

「……なんでそう決めつけるのかな?この人は…」

「そう言わないのー、で、ある?打開策」

「はぁ……あのね……」

「うんうん!」


「ないわ!!そんなもん!」


「えええええ!!!」

この人はバカなんだろうか…

「何であるって思ってんのさ…しかも、俺の仕事、サポーターだよね?そんな仕事あるって言ってなかったよね?増やそうとしてるよね?」

「気のせいよー気のせい…てか、ないのかー」

「ないでしょ…彼女達が頑張る他やり方はありません!」

「ぶーーーー」

この人は本当に大人なんだろうか…大きな赤ちゃんがいるみたいなんだが……


「はぁ……どうするんだよ…てか、俺、やばいところに入ったか?はぁ…」


※あとがき

なんか、やばい事務所に入れられたかもしれない。俺、もうすでに辞めたい。サポーターの仕事……あと、叔母さん…バカだったらしい。


次回、初仕事…うまくいく気がしない

お楽しみに…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る