第21話 秘書課の中心としての新たな一歩
椎名理香の降格処分が正式に発表されてから数週間が経ち、秘書課はようやく穏やかな日常を取り戻していた。噂や疑念の影響を乗り越えた結衣は、これまで以上に蓮を支えることに力を注ぎ、自分の役割を全うしていた。
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「相沢さん、これお願いできますか?」
同僚の長谷川が頼りにするように声をかけてきた。
「もちろんです。すぐに対応しますね。」
結衣はにっこりと笑いながら、仕事を引き受けた。
以前の結衣なら、業務に追われて疲れを感じることも多かったが、今は違った。秘書課の中心人物として蓮を支えるという使命感が、彼女を大きく成長させていた。資料作成やスケジュール調整、会議の準備など、すべての業務において正確さと効率を追求する姿勢が評価され、秘書課内でも一目置かれる存在となっていた。
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ある日、蓮が社長室から出てきて秘書課のデスクに立ち寄った。
「相沢、例のプロジェクトの準備状況はどうなっている?」
蓮の声はいつも通り落ち着いていたが、その目は結衣に対する信頼を物語っていた。
「はい、進捗は順調です。こちらが最新のスケジュールです。」
結衣は手早く資料を差し出した。蓮がそれを目を通しながら頷くと、彼の口から自然と感謝の言葉が漏れた。
「完璧だ。いつもありがとう、相沢。」
その一言に、結衣は小さく微笑みながら答えた。
「社長の期待に応えられるよう、これからも全力を尽くします。」
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蓮と結衣の信頼関係は、社内でも特別なものとして知られるようになっていた。秘書課のメンバーや他部署の社員たちも、二人の連携のスムーズさや仕事の正確さを目の当たりにし、結衣を「秘書課の柱」として認めるようになっていた。
「相沢さんがいると安心だよね。」
長谷川が同僚に話す声が、結衣の耳にも届いた。
「本当に。社長も相沢さんがいるから、あんなに効率よく動けてるんじゃない?」
そんな言葉を聞くたびに、結衣は自分が秘書課で果たすべき役割の重要性を実感していた。
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ある日の昼下がり、結衣は蓮と共に重要な取引先との会議に出席した。会議室での蓮のプレゼンテーションはいつも通り完璧で、取引先からの評価も上々だった。結衣はその場で資料を配布し、質疑応答がスムーズに進むようサポートを続けた。
会議が終わり、取引先の担当者が結衣に話しかけてきた。
「相沢さん、あなたのサポートがなければ、これほどスムーズに進まなかったでしょう。西園寺社長は本当に素晴らしい秘書をお持ちですね。」
その言葉に、結衣は軽く頭を下げながら答えた。
「ありがとうございます。これからも社長を支えるために最善を尽くします。」
蓮はそのやり取りを静かに見守りながら、結衣に向かって一言だけ言った。
「よくやった。」
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夜、結衣は一人デスクに向かい、蓮のために翌日のスケジュールを最終確認していた。秘書課の誰もいない静かなオフィスで、結衣はふと立ち止まり、自分がここまで成長できた理由を思い返していた。
「社長が信じてくれたから……」
結衣は心の中でそう呟いた。蓮の信頼がなければ、自分はここまで頑張ることはできなかった。彼の言葉一つ一つが自分の支えとなり、秘書としてだけでなく、一人の人間としての成長を促してくれたのだ。
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数日後、秘書課の朝礼で課長が全員に向けて話をした。
「相沢さんには、これから秘書課の中心としてさらに活躍してもらいます。皆さんも、彼女の姿勢を見習ってほしい。」
その言葉に、結衣は驚きと嬉しさが入り混じった表情を浮かべた。課長から正式に認められることは、自分の努力が評価された証でもあった。
「これからもよろしくお願いします。」
結衣が皆に向かって頭を下げると、秘書課全員が拍手を送った。
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こうして、結衣は正式に秘書課の中心人物としての役割を果たし始めた。蓮を支えるために走り続ける日々の中で、結衣は自分の中に芽生えた蓮への想いを、さらに深く確信するようになっていくのだった――。
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