初デート

【side 藤原 直人】


美咲と付き合い始めてから1週間経った。


日課のように美咲と一緒に登校し、学校生活を過ごす。

付き合ってから変わった点といえば、放課後も一緒に帰るようになったことくらいだ。


デートに誘いたいが、小学生のころ以来二人きりで約束して遊ぶなどなかったため、言い出すのも気恥ずかしくなかなか言い出せていなかった。


そして今日もいつも通り美咲と一緒に登校している。


学校の最寄り駅から学校まで歩いている途中で美咲が何か思いついたように話題を出してくる。


「今週末予定なにもなかったらさどこか出かけない?」


「僕も誘おうと思ってたんだ

あ、でも今週は予備校の模試があるんだ」


「いつなら空いてる?」


「来週なら良いよ」


「じゃあ来週いこ」


「でもどこ行くんだ?」


「私は服とか見たいかな、最近暑くなってきたし

直人はどこか行きたいところある?」


「僕は服とかあんまり興味ないしな~

アニメショップかカードショップくらいかな」


「じゃあ、午前と午後で分けてお互いの行きたいところ回らない?」


「うん。それでいいよ」


「楽しみにしてるね

せっかくだしデートっぽくするためにも、どこかで待ち合わせとかしない?」


「家隣同士なんだし、家の前で良くない?」


「恋人になったんだし、新鮮な気持ちでデートって感じにするためにもさ、ダメかな?」


少し不安そうな表情でそんなお願いをされては断ることもできなかったので、めんどくさいが了承する。


「まあ、良いよ。でも、どこ待ち合わせにする?」


「駅でいいんじゃない?」


「OK 初デート楽しみだね」


「私もこういうの初めてだし楽しみにしてるね」


まさか美咲からデートを提案してくれて、こんなにもあっさり決まってしまうとは思わなかった。

美咲も恋愛として好きかわからないなんて言ってたけど、意外ともう意識しているじゃないか?という期待が膨らむ。


- 初デートの最後でキスくらいまではいきたいよな


初デートの最後にキスは定番だもんなと思い、恋人としての一歩進めるための決意を新たにするのだった。





・・・デート当日


スマホのアラームのスヌーズ機能をうっとうしく思いつつ目覚める。

昨夜は今日のデートでどこに行くか美咲と遅くまで電話していたため、少し寝不足だ。


そのままスマホで時間を確認すると、設定していた最後のアラームで起きたことに気づく。


- やばい、結構ぎりぎりだ


なんで僕は毎回1回目のアラームで起きることができないんだと苛立ちながら準備をして、家を飛び出す。


そして、昨夜行先と一緒に決めていた待ち合わせに着くと美咲が既に待っていた。


「美咲、おはよ」


「うん!おはよ」


少し遅れてしまったが、美咲は特に気にすることなく笑顔で挨拶してくれる。


「じゃあ、行こっか!」


今日は午前中は僕の希望でアニメショップとカードショップ巡りをし、午後は美咲の希望で服屋に行くことになっている。


ということで最初に来たのはアニメショップ。


- いつも女連れで来るやつに嫉妬していたが、まさか僕がそちら側になるとはね


彼女を連れてこの空間を歩くのはとても気分が良かった。


僕が悦に浸っていると、美咲に声をかけられる。


「今日はなにかお目当てのものがあるの?」


「うん 今日は僕の読んでる漫画の発売日でさ。ここの得点でアクリルスタンドがついてくるんだ」


「アクリルスタンド?」


「これ」


「この子可愛いね!ヒロイン?」


「そうそう!メインヒロインだね」


「私も読んでみようかな」


「すぐ読み終わるし全巻貸すよ」


「ありがと!

あれ?あっちに少女漫画とかもある!」


「僕は少女漫画は守備範囲外だから見てきていいよ

向こうの雑誌のとこ見てるから」


「え?うん了解、ちょっと見たらすぐ行くね」


二手に分かれて僕は声優の写真集を眺めている。

推しの声優の写真集を眺めていると美咲が少女漫画を数冊持ってやってきた。


「早かったね。美咲も何か買うの?」


「これ途中まで集めてたけど、連載止休止してそこから買ってなかったから」


「そういうのあるよね」


「直人はそれ買うの?」


少し複雑そうな表情で美咲が僕の手元を覗き込んでくる。


「さすがに高いから買わないかな」


「そっか!」


今度は一転して笑顔になる


「どうかした?」


「うーん、アニメキャラなら良いけど、声優さんの写真集をデート中に買われるのは彼女として思うところはある」


「嫉妬?」


「うん」


まさか美咲が嫉妬してくれるとは思わず、笑いがこぼれる。


「なに笑ってるの?」


「いや、可愛い嫉妬だなって」


「もう!」


そんなやり取りをしながら僕たちはレジへ向かい、会計を済ませて、第二の目的地カードショップへと向かった。


カードショップではさすがに美咲は買うものはなさそうだったが、僕の買い物を手伝ってくれた。

アニメショップよりも男女で来ている客が少ないカードショップでは、さらに可愛い彼女を連れている自分に優越感を感じることができてとても気分が良かった。



そして買い物を済ませると昼時を少し過ぎ13時になったので、昼食に行こうということになった。


「結構いい買い物が出来たな~」


「すごいいっぱい買ってたもんね」


「新しいデッキのためにね」


「お昼はどこか行きたいお店とかある?なければ私はチェーンじゃないカフェとかがいいかな」


「カフェで昼飯ってさすがにコスパ悪くない?」


「それはさっきお金使いすぎたからでしょ。

じゃあ、ファミレスとかにする?」


「サ〇ゼで」


「じゃあ行こっか」


正直食事にお金はなるべく使いたくなかったので助かった。





・・・昼食後


午後は美咲の希望で服屋などを見て回ることになっている。


女ものの売り場はなんだか恥ずかしいのでいたたまれない気分だ。

ちょくちょく美咲が僕に意見を求めてくるが、僕は女子の服の流行なんてわからないし曖昧な返ししかできない。


いくつか服を選び終わると、美咲が試着すると言い出したので、さすがにいたたまれなさが限界を迎え、店の外で待つことにした。


待つこと15分、美咲はいくつか服を買ったのか袋を手に店から出てくる。


「買い物終わった?」


「うん。でも直人に選んでもらいたかったな」


「でも僕、女子の流行とかわからないし」


「良いなって思う方を選んでくれればいいんだよ?」


「うん」


「じゃあ次のお店ではお願いしたいかな

メンズものもあるお店だから直人の服もみようよ」


「え、僕はいいよ、お金ないし」


「そっか~残念

じゃあまた今度だね」


「うん」



その後、美咲が行きたいという他の服屋とアクセサリーショップを回った。


「選んでくれてありがと!」


「どういたしまして

僕のセンス選んでよかったのか不安だけど」


「気にしすぎだって」


「うん」


「夕飯はどうする?さすがにお金使い過ぎちゃったし帰る?」


「そうしてくれると助かる」


「じゃあ、帰ろっか」



少し早いが、お互い結構買い物をしたため夕飯はお互い家で食べることにして、並んで歩く。


「こうやって丸一日二人で遊ぶのって久しぶりだね」


「確かに中学からこうやって遊ぶってなかったね」


「高校生になって勉強とかも忙しいけど、また時間作って遊びに行こっ」


「うん」


”恋愛として好きになれるか”という不安があったなんて言っていた美咲がこうして積極的にきてくれることに喜びを感じ、”初デートの最後にキス”というのを思い出す。


ーでも、どうやって言い出せばいいんだ?


悶々とどうやって切り出そうかと黙り込んでいると、美咲が心配そうに訊ねてくる。


「なにか考え事?」

「大丈夫なんでもないよ」


さすがに”キスしたい”なんていきなり言い出すわけにもいかず、ひよってしまう僕。


そして、今日それぞれが買った漫画の話などをしながら歩いていくと、お互いの家についてしまう。


「今日はありがとう」


「うん。楽しかった。あと漫画あとで持ってく」


「ありがと!じゃあまたね」


「うん。また」



こうして”初デートの最後にキス”という目標は果たせなかったが、美咲との念願の初デートは幕を閉じた。












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更新が1ヶ月程止まってしまい申し訳ございません。


家族が病気で入院しバタバタしており更新出来ていませんでした。

一旦落ち着いたので更新を再開していきますが、あまり病状が良くないため、また更新が止まるタイミングがあるかもしれません。


長い目で見守っていただければと思います。


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