番外編 3
【風岡脩二】
東龍会系風岡組の極道一家に産まれた。
幼稚園の頃から空手を習い、来栖の父親が亡くなると、5歳下の来栖と一緒に育った。
周囲は刺青を入れたヤクザと、商売女ばかりであった。
東龍会の現会長や幹部には、昔から可愛がられていた。
先々代の娘で風岡の母親は、美人で情熱的で恋多き女だった。
我儘で性格はキツイが、そんなところも彼女の魅力で。
婿養子になった父親の先代組長は、産まれた息子である脩二を可愛がった。
風岡は母親の愛情を知らずに育ったからか、年の離れた女ばかりと関係を持った。
同級生から見たら年増でなんで、母親と同い年くらいの女と寝るのか疑問だった。
風岡ならもっと若くて、綺麗な女とヤレるのにと。
頭が良くて、仕事が出来て、自立してる。
そんな相手が愛人になった。
本妻は東龍会の会長の姪に当たり、風岡より7歳年上で40代の姐さん女房だ。
風岡組の構成員からは、とても慕われていた。
本妻には離婚歴がある。
結婚して3年経ったが子供が出来ず、相手の家から離縁された。
石女の出戻りに居場所は無く、そんな姪を不憫に思った会長が、大学を卒業したばかりの風岡に結婚の話を持って行った。
その話を風岡は受け入れて、22歳の時に29歳の本妻と結婚した。
その直ぐ後に先代組長が義母と再婚して、翌年に異母妹の巴三が産まれた。
風岡と巴三は23歳差の兄妹なので、親子でもおかしくない年齢差で、風岡は本妻を慮り子供を作らないと公言して、先代組長が風岡の家を絶やさない為に作り産ませた。
【来栖蒼空】
来栖は父親も風岡組の構成員で、先代組長の護衛をしていた。
父親は先代組長を庇い抗争で亡くなり、先代組長に引き取られて、息子の風岡と一緒に育てられた。
来栖が五歳で、風岡が十歳の頃だった。
風岡は大学に進学して、実家を出てマンションで一人暮らしを始めたが、来栖はそのまま本宅でお世話になり中学に通っていた。
風岡が実家を出て一年後、高校を卒業したばかりの一色が先代組長に拾われ、部屋住みとして本宅にやって来た。
その時に来栖と一色は、仲良くなった。
一色は二年の部屋住みを経て、二十歳で風岡組の正式な構成員になった。
風岡と同じ大学に入学して、来栖は経営学を四年間学んだ。
昔から頭の良い風岡が勉強を見てあげていて、必死に勉強して大学に入った。
風岡の下で働ける人間になる為に。
高校と大学時代は、アルバイトを掛け持ちして生活費を稼いだ。
学費は出世払いで良いと、払ってもらった。
大学を卒業後、先代組長と盃を交わし風岡組の構成員となった。
本妻と結婚して当時は、風岡組の若手幹部であった風岡の護衛兼秘書として、来栖は任侠界に足を踏み入れた。
現在はエンコを詰めて、小指が二本無く。
清掃会社を経営する、社長になっていた。
保育園では週に一度、お弁当の日があってその日は、香澄のだけで無く、一色さんの分のお弁当も作った。
愛妻弁当って、やつ。
お弁当を作るのは、私が自主的に担当した。
私は遊馬さんがまかないを作ってくれるので、自分の分は作らなかった。
料理人だからか、遊馬さんは煙草を吸わなくて。
板前の陸くんも吸わないけど、陸くんは母親に煙草の火で肌を焼かれた、その所為で煙草が嫌いで吸わなかった。
遊馬さんと来栖さんは、今年三十歳になるそうだ。
硬派と軟派で正反対。
遊馬さんは無口で寡黙、来栖さんは女の子が大好きで、タイかベトナムかフィリピンか、どこの国籍かは忘れちゃったが、今はエンジェルちゃんがお気に入りで。
足繁く店に通い詰めてると。
惚れっぽいと言うか……、アイツは女の尻を追い掛けるのが趣味なんだ、と風岡さんは漏らしていた。
風岡さんにとって、来栖さんは手の掛る弟みたいな存在なんじゃないかな。
【風岡とアイ】
アフターに誘われ、ラブホテルにやって来た。
私が選ばせてもらった部屋はスイートで、休憩では無く宿泊にした。
その方がゆっくり過ごせるから。
『月』から程近いホテル街にある、高級なラブホテルだった。
人気のホテルだが、平日は比較的空いてるので泊まれた。
クリスマスやバレンタインには、直ぐに満室になった。
エレベーターに乗り込み、最上階のスイートルームに到着した。
ルームキーで開け中に入った。
「先に使えよ。お湯、溜めるか?」
バスルームの方を見て聞かれた。
「……いえ、シャワーだけで大丈夫です。」
私はお言葉に甘えて、先に使わせてもらった。
ジャグジー付きのお風呂で、アメニティは充実していて、上質なブランドの物が置かれていた。
シャワーを浴びて、バスローブを羽織り出た。
風岡さんは備え付けの冷蔵庫から、缶ビールを取り出して飲んでいた。
入れ違いでシャワーを浴びに行った。
ベッドに腰掛け、出て来るのを待った。
が、待ってる間にふかふかで寝心地の良いベッドの誘惑に負けて、横になったら寝てしまった。
髪を撫でられてる感覚で目が覚めた。
飛び起きて謝罪した時に、
「愛人にならないか?俺はお前を気に入ったよ。」
そう、言われた。
……変わった人。
怒るんじゃなくて、愛人として囲いたいと提案するなんて……。
私には断る理由が無くて、愛人になりますと受け入れた。
こうして風岡さんと私は、愛人契約を結んだ。
月に100万円で、帯封付きの新札でくれた。
足りなければその都度渡すと。
風岡さんは仕事が忙しいのと、本妻と愛人が何人もいたので、私の部屋に来るのは、月に4回くらいであった。
一方の上客の鳴宮さんは、総額を考えると恐ろしい程、高額な額を私に使ってくれた。
鳴宮さんとは『月』を辞める最後まで、客とホステスの関係だった。
“触っても良いですか……?”
風岡さんの刺青を初めて見て、そう不躾にお願いすると断られなくて、好きにしろと言ってくれた。
私は背中の龍に触れた。
風岡組が東龍会系のヤクザだから、龍を入れたと教えてくれて。
風岡さんの本妻が、東龍会の会長の親戚、と言う理由も含まれてると。
忠誠心を表していた。
肩から腕に掛けての満開の桜は、人生の儚さを象徴していて、若くして亡くなった母親への愛慕の情が伺えた。
風岡さんは大学を卒業して、結婚してから刺青を彫り完成させた。
“……綺麗。”
そう私が呟くと、風岡さんは小さく笑みを漏らした。
一色さんが私を初めて抱いた時、優しくなかった。
少し乱暴で、私はそれが嬉しかった。
本当の一色さんを、見られた気がしたから。
女に優しくて、色男と呼ばれる姿では無くて。
ただの一人の男としての顔を。
男と女。
一色さんの前では、ただの女で。
体を求め合った。
私はベッドに押し倒され、腰を掴まれて激しく打ちつけられた。
喘ぎ声が漏れ、卑猥な水音を立て。
ベッドが動きに合わせ軋んだ。
一色さんが当時住んでたのは、高層マンションの最上階で、寂しいくらい広い部屋だった。
母親と縁を切り、一人で暮らしていた。
「貴女に特別な感情はありません。お気持ちには応えられません……。」
一色はキスをして来た、渚にそう伝えた。
「……他に想っている相手がいますので。」
愛美が好きだから突き放した。
渚は目に涙を浮かべたが、一色は心を動かされる事は無く。
「すみません。」
ただ謝った。
女には優しいが、特別なのは愛美だけだった。
愛美は勉強熱心で、セックスのテクニックを学んで実践して覚えた。
口淫も愛撫も、上手になった。
風岡の愛人になると、風岡の手により敏感な体に開発された。
快楽を教え込まれ、クセのある抱かれ方になった。
愛美を抱く度に、風岡の気配を感じ取り嫉妬した。
風岡が子供を作らないと、公言してるのを知っていた。
周知の事実で、東龍会系の構成員なら誰でも。
東龍会の会長の姪、本妻を大切にしてるから公言した。
年上の二人の愛人とは、大学時代に知り合い十年以上の仲だった。
一色は自分と愛美の子供が欲しいと、一度も避妊しなかった。
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