側にいさせて【番外編のお題・募集中】
うみ
第1話
ヤクザの愛人になった。
何故か気に入られ、囲われる事になった。
愛人契約を結んだけど、そのままキャストとして働いてる。
他に何人も愛人がいて、その中では私が一番新しく若い女らしい。
私を囲うヤクザは親分で、東龍会系風岡組の組長。
一色さんは私を囲うヤクザの子分、風岡組の構成員でクラブのケツモチをしていた。
……好きになった人。
クソみたいな私の人生で、初めて恋をした相手だった。
私が一色さんを好きだと、もしも風岡組長にバレたら……。
この気持ちは隠さなければ。
一色さんに迷惑は掛けられない。
一色さんとは何も。
私が一方的に好きで、勝手に思ってるだけ。
ヤクザの世界について詳しくは知らないが、組長の愛人が構成員を好きなのは良くない状況だと、それは頭の悪い私でも理解出来た。
風岡組長がこちらに背中を向け、ベッドで眠っている。
龍が私を見てた。
睨みを利かせてる。
背中には龍がいて、腕には桜が満開で。
私の住むアパートの部屋に葬式終わり、そのまま来たみたいで喪服姿で顔を出した。
愛煙する煙草に混じり、線香の香りが微かにした。
肌に彫られた龍と桜。
背中全体と、肩から腕に掛けて。
鮮やかで見事。その分だけ彫るには痛みが伴う。
手を伸ばした。
龍を撫でて、顔を寄せた。
唇を当てキスをした。
私はこの龍が好き。
とっても、綺麗だから。
家賃は自分で払い、ワンルームのアパートに住んでる。
風岡組長はセキュリティのしっかりとした、マンションに引っ越さないかと、言ってくれたけど断った。
愛人契約して囲われてるが、生活するお金くらいは自分で稼ぐ。
捨てられた時、何も残らない。
それは悲惨だ。
若くて価値のある内に、稼いで貯めないと。
若さは永遠では無い。
美容には投資してる。
必要経費として。
源氏名はママが付けてくれアイと名乗ってた。
女の子の出入りは激しいけど、私は今のクラブで2年お世話になっていて、指名は取れてノルマはクリア出来て、ナンバーに入り中堅的な立ち位置。
ヘルプで呼んでもらえたり、新規のお客さんに着いたり。
比較的、上品な客層なので楽しく働けてるが、酔っ払いの相手は疲れた。
学歴も職歴も無い私がある程度稼ぐには、夜職しか無かった。
いつも昼過ぎに起き、髪をセットしに行って、ドレスに着替えて出勤する。
同伴が入ってたら一緒にお店に行く。
アフターはしない主義。
誘われても上手く躱せる、客のあしらい方はもう覚えた。
風岡組長はフラッと部屋に来る。
部屋の外には、護衛の来栖さんを待たせていた。
「風岡さん、起きて下さい。」
肩を軽く叩いて、声を掛けた。
朝方の4時に起こしてくれと頼まれた。
役職の高いヤクザは、意外と健康的な生活を送ってた。
風岡組長が寝返りを打ち、私に顔を向けた。
不機嫌そうに眉間に皺が寄ってる。
「起きて下さいね。お仕事、遅れちゃいますよ。」
リップ音を鳴らし、頬にキスをした。
「……煙草、取ってくれ。」
寝起きの掠れた声で言われた。
ベッドから降りて、ハンガーに掛けたジャケットの胸ポケットから煙草の箱とジッポのライターを取った。
ベッドから起き上がり、胡座をかき大きな欠伸をする風岡組長に渡した。
風岡組長は箱から出して一本咥えると、ジッポライターで火を点けて煙草を吸う。
ここは店では無いので、私は火を点けなかった。
紫煙を燻らせながら、風岡組長はベッドから降りた。
風岡組長が着替えるのを手伝って、玄関まで行き手を振り見送った。
私は二度寝しにベッドに戻った。
一色さんはケツモチなので、定期的に様子を見に顔を出した。
トラブルがあればママが連絡を入れて駆け付けた。
一色さんと会えるのは、そんな時だけ。
髪をセットしてもらいながら、メイクは自分でする。
丁寧に筆で口紅を引く。
唇を合わせ、馴染ませた。
大人っぽく見られたいので、タイトなロングドレス。
今日は赤にした。
背中の大きく開いたデザインは着られない。背中には熱湯を掛けられ出来た、火傷の跡があるから。
そんなものが見えたら興醒め。
「お疲れ様です。」
ママと話が終わって、バックヤードで煙草を吸う一色さんに声を掛けた。顔を上げた一色さんは“アイ、お疲れ。今日も綺麗だな”と言ってくれた。
一色さんはダーススーツを着ていて、長い脚を組みソファに座っていた。
「隣、いいですか?」
「あぁ。」
断りを入れてから、隣に腰掛けた。
「今週も売り上げ、順調だって?ママが褒めてたよ。」
営業のメールは手を抜かないし、新聞を定期購読して知識を頭に入れた。
客から聞いた話や、趣味、誕生日、はメモして忘れないようにした。
特に奥さんや子供、家族の話は。
結婚記念日なんか、プレゼントのアドバイスをした。
公認で上手く遊んでもらえるように、気を配った。
「頑張るのは結構だが、ちゃんと食ってるか?痩せたんじゃないか?」
「ご心配、ありがとうございます。ご飯はちゃんと食べてますから。」
……心配してくれて、嬉しい。
お世辞でも、綺麗だと言ってくれたり。
女を手玉に取って、やる気にさせるのも仕事。
キャストの機嫌を取り、利益を上げさせる。
好きだから一色さんになら、遊ばれて捨てられても良かった。
でも、そんな事にはならない。
風岡組長の愛人だから、私には手を出さなかった。
一色さんにとって、利がある人間でいる。
私がそうである限り、一色さんと繋がってられた。
私の月々の出費は、ドレスなどの衣装代と美容院でのセット代が多くを占めた。
同僚は体型維持の為にジムに通ってたりするけと、私は貧乏性でジム代はもったい無いと感じてしまうので、近所を走っていて、リフレッシュにちょうど良かった。
席に着く時に持つクラッチバッグには、名刺とライター、メイク直し用のファンデーション、口紅を入れていた。
バックルに手を掛け、ゆっくりとベルトを外した。
ファスナーの引き金具を、歯で咥えて下げて開けた。
下着の中から取り出して、舌を出して舐め上げた。
口の粘膜と喉の奥、手を使い懸命にご奉仕する。
ベッドのヘッドボードに背中を預ける風岡さんは、煙草を吸いながら脚の間に顔を埋める私を見ていた。
反応してるから、感じてくれてるんだろうけど。
乱暴に荒々しく抱かれる事は無かった。
……優しい、とは違う。
どこか冷めていて……。
風岡さんの腰に跨り、手を添えて挿入した。
愛液で十分に濡れ、奥まで咥え込む。
「はぁ。」
熱い吐息を漏らした。
「んっ、あッ。」
腰を上下に動かし喘いだ。
気持ち良いと、声を上げる。
ベッドのスプリングが軋む。卑猥な水音が部屋に響く。
肌がぶつかり合う音も。
「風岡、さんっ。」
髪を振り乱す。
「イクっ、イッちゃいます!」
下から腰を激しく突き上げられ、膣内が収縮して絶頂に達した。
体の力が抜けて、風岡さんの胸に倒れ込んだ。
「もう少し付き合え。俺はまだイッてない。」
「……はい。」
汗で張り付く髪を、風岡さんに耳に掛けられた。
初めて会った時、名刺を差し出すと言われた。
“一色の可愛がってるアイってのは、お前か。”
一色さんとは同じ児童養護施設出身。
一色さんが仕事を紹介してくれて、私は働くようになった。
一色さんの役職は、東龍会系風岡組若頭。
風岡さんは先代組長の実子で、跡目を継いだらしい。
一色さんは先代組長に拾われ、親子の盃を交わし任侠界に入った。
私の源氏名はアイで、本名は日高愛美。
本名の名前からママが付けてくれた。
「魘されてたぞ。」
ベッドに腰掛け、煙草を吸う風岡さんに言われた。
「……嫌な夢を、見てました。」
過去の。
ハッと目が覚めて、私はベッドから飛び起きた。
「今日は時間、大丈夫なんですか?」
背後から腰に腕を回して、風岡さんの肩に顎を置いた。
朝から会議とか、定例の集まりがあると早く出た。
準備とか色々忙しそう。
「今日は大丈夫だな。」
「朝ご飯、作りましょうか?ママから美味しい梅干しお裾分け頂いたので、おにぎりならすぐに食べられますよ。」
「食う。」
「少し待って下さいね。来栖さんの分も握りますから。」
ベッドから降りて、頭からTシャツを被った。
床に落ちてたショーツを拾い上げ履いた。
炊飯器からしゃもじでお米をラップの上に平に盛り、種を取った梅干しを真ん中に乗せた。
ラップを上手く使い、お米で梅干しを包み込み握った。
「来栖さんと食べて下さいね。」
風岡さんに二人分のおにぎりを持たせて、玄関で手を振り見送った。
護衛の来栖さんは駐車場に停めてある、黒塗りの高級車でいつも待っていた。
護衛と運転手も務める事があった。
今日は鳴宮さんとの同伴が入ってたので、一緒にご飯を食べてから出勤する。
鳴宮さんは貿易会社を経営する社長で、私の一番の太客で長い付き合い。
海外の出張から戻って来て、和食を一緒に食べようと誘って下さった。
鳴宮さんが予約してくれたのは、天ぷら屋さんで揚げたての天ぷらを堪能した。
出張のお土産に香水をプレゼントしてくれた。
鳴宮さんと会う時は、付けるようにしよう。
「ゴルフは最近、行かれてますか?」
グラスを持ちシャンパンを飲む、鳴宮さんに聞いた。
趣味がゴルフと旅行なので、定番の話題だった。
「仕事がひと段落したから、来週くらいにまた行く予定だよ。」
「楽しんで来て下さいね。」
「スコア縮まるように祈っててよ。」
「祈ってます。」
テーブルにグラスを置いた、鳴宮さんに手を握られたので、私はやんわりと外して手を握り返した。
鳴宮さんの薬指には指輪が嵌められていた。
奥さんの誕生日や、結婚記念日にはプレゼントの相談に乗った。
「アイさん、エリカさんの新規の指名でヘルプ、入ってもらえますか?」
鳴宮さんをタクシーに乗せ、店内に戻ると黒服の和住くんに声を掛けられた。
エリカさんはNo.2で、私はNo.3でナンバー上位の常連だ。
巨乳でスタイル抜群で、エリカさんは女の私から見ても肉欲的で唆られる。
「ご一緒してもよろしいですか?」
「座ってよ!可愛いね、名前なんて言うの?」
「アイです。」
名刺を差し出すと、受け取ってもらえた。
テーブルにポイって捨てる人とかいるから、そう言う人はあんまり。
「アイちゃんか、僕はこう言うものです。」
この客はIT会社を経営するCEOらしい。
「何飲む?遠慮しないで、好きなの頼んでよ。」
「同じものを頂けますか?」
エリカさんが場を盛り上げ、私はお酒を作りながら相槌を打った。
金払いが良さそうだけど、一気に金を落として消えてく客は珍しく無かった。
詐欺で逮捕されたり、やばいところから借金して、臓器取られちゃったり。
海外に逃亡したりも。
CEOはお高いシャンパンを下ろして、エリカさんをアフターに連れ出そうと、口説いていたがエリカさんは相手にしなかった。
エリカさんのタイプでは無いので、無理だろうなとは思ってた。
筋肉質なスポーツマンがタイプで、エリカさん自身ジムで鍛えていた。
お尻とか、女性らしいラインが出るように。
ジムではお気に入りのインストラクターを指名してるらしい。
一色さんが女性を連れてるところを、何度か見掛けた事があった。
……綺麗な人ばかりだった。
店のNo.1のスミレさんとも、親しいみたいで。
スミレさんはとっても綺麗で、私が勝てるような相手では無くて……。
スミレさんを指名する客は、社長や会社役員、弁護士、医者が多かった。
個室のVIPルームで接待に使うなど、売り上げは不動のNo.1でママからの信頼も厚かった。
腰を掴まれて動けないようにされて、弱いところばかり責められる。
私の体を風岡さんは、知り尽くしていた。
何度も抱かれて、私の体は風岡さんに作り変られた。
敏感になって、また絶頂に達した。
快楽に溺れる。
「あッ、風岡さ、ん。キスしたいっ。」
頬に手を伸ばすと、目を細められた。
顔を傾け、唇が重なる。
舌を絡め取られて、溢れそうになる唾液を飲み込む。
舌とキスの合間に漏れる吐息は、火傷しそうな程に熱かった。
……もっと綺麗になったら、少しは私を見てくれるかな。
ジャージに着替えて、近所をランニングした。
帰りにコンビニに寄り、ミネラルウォーターとカットフルーツを買った。
冷蔵庫にはゆで卵を常備していて、タンパク質補給をした。
シャワーを浴び出ると、パックをしながらストレッチする。
髪を乾かして着替えてから、美容院に行く流れになっていた。
たまにはエステに行った。
肌の調子が上がると嬉しかった。
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